Atariは10月8日、新型ゲーム機「Atari VCS」の開発状況を報告した。Atari VCSは、2017年のE3に合わせて正式発表されたゲーム機で、もともと「Ataribox」と呼ばれていたもの。Atariのクラシックゲームを内蔵し、配信される新作ゲームも楽しめ、さらにウェブブラウザやストリーミングサービスの利用などPCライクにも使用できるデバイスであるとされている。
Atariは、クラウドファンディングサイトIndiegogoを通じて開発資金を調達。ただ、当初は2017年秋に出資者向けに提供し、2018年春には一般販売するとしていたものの何度も延期を繰り返し、現時点では2020年春のローンチを目指しているという。そうしたなか、プロジェクトの重要人物の離脱が報じられている。
今回Atariは、Atari VCSのプロトタイプのハードウェアの開発状況を報告している。まず公開されたのはマザーボード。AMDのRyzen APUが搭載されており、ストレージにはSATA接続のM.2 SSD、メモリはSODIMM DDR4 4GB RAMを2つ使用する。いずれも当初の計画よりアップグレードされており、ストレージとメモリはユーザー側でのアップグレードが可能。中央のスペースにはAPUの冷却機構を配置するとのこと。
また、1977年に発売されたAtari 2600を彷彿させるデザインの、Atari VCSの外装パーツについても触れられている。射出成形用の型はほぼ完成しているとのことで、現在は組み込みのしやすさなどを突き詰めるため細かな調整を重ねているという。Atariはこうした進捗を、中国にあると思われる製造現場の写真を添えて報告している。
このAtariの情報公開の前日10月8日に、Atari VCSのシステム設計を担当していたRob Wyatt氏が、その職を辞したと海外メディアThe Registerが報じている。Wyatt氏は、マイクロソフトにてDirectXや初代Xboxなどの開発に携わった人物で、現在は独立してTin Giantを設立。PS3のグラフィックシステムや、MRデバイスMagic Leapの開発にも参加したことで知られる。2018年6月にWyatt氏がAtari VCSの開発に参加するにあたってはAtariからプレスリリースが発行されており、プロジェクトにおけるキーマンとして期待されていたことがうかがえる。
しかしWyatt氏は、今年10月4日をもってAtari VCSの設計者を辞任したと同メディアに明かしている。その主な理由としては、Wyatt氏がTin Giantを通じて請求していた報酬について、Atariは過去6か月以上にわたって支払ってこなかったためだとしている。Wyatt氏は、プロジェクトに最後まで携わることを望んでいたものの、辞任する以外の選択肢は無かったとし、長期間の不払いにも関わらず小さな会社であるTin Giantが持ちこたえられたのはラッキーだったと述べる。
The Registerでは、Atari VCSにまつわるそのほかの金銭問題や、プロジェクトについて直接の情報を持つという匿名の人物からの証言をもとに、Atari VCSの機能面の不足や、オリジナルゲームの欠如、さらにAtari VCSのローンチ自体を疑問視。また、Wyatt氏に代わってSurfaceInkという企業が参加したとも報じている。一方で、Wyatt氏の辞任以外についての情報の真偽は不明。Atariは同メディアに対して、不正確あるいは古い情報だとコメントしている。
今回Atariが、同記事の公開に合わせてAtari VCSの開発状況を報告したのは、Atari VCSの行先が不安視されることを警戒して、プロジェクトは順調だとアピールする狙いがあったのかもしれない。Atari VCSの今後については、今秋にも特定のメディアを招いての試遊イベントをおこなうとのこと。発売時期は冒頭で触れたとおり、2020年春に予定されている。