ゲームメーカーとして苦しむAmazon、不振の背景に自社エンジンLumberyardがあるとの報道

米Amazonは6月14日、ビデオゲーム開発/販売部門Amazon Game Studiosの従業員を一部レイオフしたと発表した。KotakuのJason Schreier氏がこのレイオフをスッパ抜き、その後Amazonが各メディアに対して公表した形。Amazonの広報担当者は、このレイオフを認めながらも、詳細については明かさず、「Amazon Game Studiosは現在一部のチームを再編しており、『New World』や『Crucible』、そして今後の発表予定の新しい未発表のプロジェクトの開発を優先しています」と語るに留まった(CNET)。なおKotakuの報道によると、レイオフされた従業員の数は数十にわたるといい、対象のスタッフらは60日以内に新たな職を見つけるためのサポートを受け、うまくいかなかった従業員は解雇手当を受け取るのだという。

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2014年より本格始動したゲーム部門

インターネット通販サイトで知られるAmazonは、2014年8月にTwitchを買収。Twitchのサービスを充実させるだけでなく、Twitchを絡めたゲームを開発する自社レーベルAmazon Game Studiosを立ち上げた。ストリーミング配信とゲームプレイ、この2つの融合と連携を特徴としたゲーム開発・パブリッシングを掲げて開発を推進。さらに2016年2月には後述するゲームエンジンLumberyardを正式発表し、ゲーム開発/販売への従事をアピールした。

そして2016年には、3つの新作を発表。球体を相手チームの陣地に運ぶ4v4のアリーナ型対戦ゲーム『Breakaway』、植民地時代のアメリカを舞台としたMMOサンドボックス『New World』、バトルロイアル」形式のSFサバイバル『Crucible』の3つは、いずれもTwitchなどの連携を特色としたネットワークゲーム。しかしながら、どの作品も2019年6月時点でリリースには至ってないほか、『Breakaway』は開発陣が思い描くゲームには至らなかったとして、昨年3月に開発中止。また数々の実績あるスタッフを招き入れていたが、『ファークライ2』のディレクターを務めたClint Hocking氏はUbisoftへ里帰り。『Portal』ディレクターのKim Swift氏はEA Motive Studiosに移籍。そして今回のレイオフの発表へと至っている。つまり、Amazon Game Studiosはまだ結果が出せていない。もがき苦しむインターネット販売の雄の苦戦の背景には、自社ゲームエンジンLumberyardへの手こずりがあったようだ。

Lumberyard は、Crytek社からライセンスを受け同社のCryEngineをベースとしたゲームエンジン。(AWSの利用料金を除き)無料という料金体系を特色とする一方で、AWS および Twitch との緊密な連携機能を備える。フルソースで提供される、クロスプラットフォーム対応ゲームエンジン。CryEngine譲りのリッチなビジュアル構築に加えて、クラウドコネクテッド機能 (動的コンテンツ、デイリーニュース、リーダーボード、サーバーサイドでの戦闘の勝敗の決定など)をサポート。独自機能も開発されており、既存のリッチなエンジンに、Amazonの誇るインフラを統合させた、次世代無料ゲームエンジンとして期待させた。

 

Lumberyardの影響

しかしながら、同エンジンを採用するゲームスタジオはめっきり出てこず、同エンジン採用タイトルの中で数少ない、リリースに至っているAmazon Game Studios開発のレースゲーム『The Grand Tour Game』はトレイラーが出た時から、ビジュアルについての評価は芳しく無く、ゲームとしてもあまり評価を得られていない(Metacritic)。採用タイトルである『Star Citizen』は、クラウドファンディングにて2億2800ドル(228億円)を集め開発されている宇宙オープンワールドゲームであるが、開発の遅延によって出資者からクレームが殺到しており、連邦取引委員会から調査を受けている。詐欺をしようとしているわけではないが、マネジメントの悪さが開発の停滞を生んでいるとのForbesの報道も。リッチな無料エンジンとして発表時は話題を集めた一方で、発表時の注目に見合う実績を作れてないのが実情だ。

※ もっとも評価を集めているコメントは「Androidのゲームみたいだ」

そして今回、Wall Street Journalの報道により、Amazon Game Studiosの開発スタッフがLumberyardに苦しんでいるという情報が出てきている。同ゲームエンジンは、Amazonの望むようなマルチプレイゲームを作るのに適しておらず、再構築することすらも難しいと過去・現従業員が話しているという。開発中止に至った『Breakaway』の開発は、まだ線路が敷かれている最中のレールに電車を走らせるような作業だったという。証言したスタッフによると、同スタッフの別のチームも未だLumberyardという問題に対処しているフェイズであるそうだ。またAmazon Game Studiosでは『Breakaway』以外にも、発表されてないタイトルが開発中止という憂き目に遭ったという情報も。

Lumberyardの開発は現在も続けられており、定期的にアップデートされている。昨年末には採用インディータイトルとして『Coffence』がリリースされ、今年1月には前出の『The Grand Tour Game』が発売。また『Deadhaus Sonata』といった新たな採用タイトルも出てきている。Amazonも『New World』や『Crucible』への開発注力を掲げており、まだその真価を発揮する機会が残されている。しかしながら、Amazonという巨大資本がバックにあるとはいえ、同社の抱える事業は幅広く、ゲームはひとつの部門。投資が別部門に振り分けられる可能性もあり、時間は無限ではない。Lumberyardとそれに紐づく形でもがくAmazon Game Studiosは、プレッシャーが高まる中、近い未来になんらかの結果を出すことができるのだろうか。

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