Activisionが、『Destiny』シリーズのBungieと決裂した理由を説明

 

Activision Blizzardは、2018年度第4四半期決算の公開にあわせて開催された投資家向けの収支報告(カンファレンスコール)にて、管理コスト削減のための大規模なレイオフ実施や今後の展望を語ったほか、今年1月にBungieとのパートナーシップを解消した理由について投資家向けに説明した(Seeking Alpha)。

ActivisionとBungieは『Destiny』フランチャイズに関して8年間にわたり提携関係を結んでいたが、今年1月にパートナー契約を解消。『Destiny』フランチャイズは今後Bungieが自社販売していくこととなった(関連記事)。Activisionは2018年度第3四半期決算の時点で、『Destiny 2』の大型拡張コンテンツ「孤独と影」が同社の期待に沿うセールス結果を残せなかったと公表していた(第3四半期には「孤独と影」の不振が影響し、コンソールゲーム/サービスの収入が前年比34%減)。そして今回の収支報告にて、あらためて『Destiny 2』のセールス不振が契約解消のひとつの理由になっていたことを明らかにした。

Activision BlizzardのCOO Coddy Johnson氏は、契約解消は両社にとって正しい選択であったと改めて回答しており、BungieはBungieが望んでいたように自社IPの成長に集中でき、Activisionはより大きな収益を生み出すプロジェクトに目を向けることができると、利害が一致した上での決断であったと説明している。

『Destiny』のIPはBungieが保有していることから、Activision Blizzardの他の主要フランチャイズのように、新しいユーザーエンゲージメントモデルを用いた収益拡大を図ることが難しかったことにも触れられている。またActivisionは『Destiny』シリーズの開発・運営のサポートをしており、自社の開発リソースを割いていた点にも言及している。Activision Blizzardは先述したように、収支報告にて開発チーム以外のスタッフを中心に700人以上の大規模レイオフを決行すると発表。かわりに2019年のうちに開発リソースを20%増やし、自社の主力IPに開発力を集中させるという全社的な事業再編を進めていくと伝えていた。そしてBungieとのパートナー契約解消により、『Destiny 2』に割かれていた開発リソースを自社IPに向けることが可能となる。

ただ、さまざまな理由はあれど、詰まるところは『Destiny』フランチャイズはActivisionが期待するような収益を出せていなかったことが、Activision側の決断を固める最大の要因となったようだ。Johnson氏は『Destiny』フランチャイズについて、「高く評価された、高クオリティのコンテンツ」であると評しているものの、Activision にとって十分な数字は残せなかったのだ。2019年の収支予想をたてる上でも、『Destiny』フランチャイズの貢献度は低いと見積もられたという。先述したように『Destiny』のパブリッシング権を獲得することはBungie側が望んでいたことであり、現状を踏まえると両社にとって最適な選択であることから、契約解消に至った。

なおActivision Blizzardは先日大規模レイオフを発表したのち、2016年に買収したKing社のサンフランシスコスタジオと、シアトルにある子会社Z2Liveを閉鎖している(VentureBeat)。こうした人員削減の動きを受けて、労働者の権利保護のために活動しているGame Worker UniteはSNS上でActivision BlizzardのCEO Bobby Kotick氏の解雇を求める「#FireBobbyKotick」キャンペーンを開始。ほかにもActivision Blizzardの判断を憂う声は多く、Xboxの生みの親として知られるSeamus Blackley氏は、Bobby Kotick氏の経営者としての手腕を認めつつも、開発者の労働権について長年にわたり対立してきたとし、残念ながら今回のレイオフもKotick氏にとっては平常運転だとTwitter上で投稿している。レイオフは事業再編の一環として進められているほか、同社の2018年の業績自体は好調であったこともあり、Activision Blizzardの株価は決算発表後崩れてはいない。ただ投資家向けの説明としては許容されても、労働者保護の観点からはやはり大規模なレイオフについて厳しいまなざしが送られているようだ。