新陳代謝まで管理するハードコアサバイバル『SCUM』、発売前にしてTwitch人気が『フォートナイト』超え。実況者巻き込み注目度高める

 

今月8月29日よりSteamにて早期アクセス配信される『SCUM』が、Twitchにて人気を博している。8月27日にTwitchに突如現れた彗星は、みるみる数字を伸ばしていき、一時は視聴者数20万人を超えて『フォートナイト』をも上回ったことが注目を集めている。

『SCUM』は、新陳代謝から排泄行為まで管理する超ハードコア・サバイバルゲームだ。プレイヤーは、死刑囚同士を戦わせる架空のリアリティショー「SCUMシーズン2」の参加者64人のうちのひとりとして、144キロ平方メートルのフランス領ギアナ・カイエンヌを舞台に、生き残りをかけて戦う。他プレイヤーだけでなく、凶暴化した動物やゾンビ。重装備の視聴者や特殊部隊など、さまざまな存在がプレイヤーの生命を脅かす。物資を集めて武器をクラフトし有用なアイテムを生み出し、あらゆる敵を退けてより長く生きることを目指す。また本作では、顔から年齢、体型までもいじる、緻密なキャラクター・カスタマイズも可能である。自分だけの死刑囚を作り出して、島を生き抜くのだ。

前述したように、本作の発売日は8月29日だ。しかし、どうやら本作のパブリッシャーであるDevolver Digitalは、8月27日より一部のユーザー向けにSteamキーを配り始めたようだ。ShroudやDrDisRespectといった有名な配信者が本作のゲーム実況を始め、配信者の数はみるみる増えていき、それにあわせて視聴者もまた増加の一途を辿り、20万人にまで膨らんだ。8月28日16時時点ではTwitchの視聴者数ランキングは5位にまで落ちているが、それでも発売前にしては異例の人気といえる。『SCUM』は、カロリー消費量から雨を吸い込んだ服装の重量増など、サバイバル要素を細かいところまで突き詰めていった意欲的な作品である。それだけでも話題性はあるが、昨今では同ジャンルのゲームが大量にリリースされていることを考えると、人気の理由はそれだけではなさそうだ。『SCUM』のとあるシステムもまた、注目を集めている。

本作の特徴のひとつであるメタボリック(新陳代謝)システムによって、本作のプレイヤーの身体機能は現実と同様にシミュレートされる。プレイヤーには、BCUというインプランが頭に組み込まれており、体内の状態が正確にトラッキングされているわけだ。BCUには心電図から血圧、呼吸数や酸素飽和度までさまざまなステータスが表示されている。これらのステータスは、プレイヤーの運動や食事といった行動で変化し続ける。そしてそれらが変化することで、「力」「体力」「器用さ」といった戦闘にも関係するパラメータが変動することになる。

たとえば、血圧の状態は、体力やスタミナなどに影響を及ぼす。激しく運動すれば、呼吸が荒れて体温が上昇し、力などが変化していくといったシステムだ。行動単位だけではなく、プレイヤーの設定した体重や年齢といったプロフィール、時間や気候といった周囲の環境もステータスの変化に関連してくる。空腹が続くと力と体力が減少していくように、何もしないことにより不利になることもある。身体情報は常にゲーム画面左下に表示されている。地味ながら、行動ひとつひとつに意味がもたらされる、意欲的なシステムだといえる。

そうしたシステムの一環で、プレイヤーは時に排泄行為をおこなうことも可能。あくまで生存するためのシステムのはずなのだが、手洗い場にて排泄行為をするというシュールなシーンがShroudの配信にて盛り上がりを見せた(閲覧注意)。人気ジャンルとリアリティのある複雑なシステム、そしてオバカな要素を併せ持っており、ゲーム実況において人気を見せていると考えられるだろう。

もしくは、Devolver Digitalのマーケティングが単純にうまかったと考えられるかもしれない。発売前に人気配信者に対しキーを配り、その配信者がTwitchにてゲームを実況すれば、当然注目度は高まりやすい。『SCUM』のゲームシステムを考えれば、相乗効果も生まれるだろう。一般ユーザーはまだ遊べないタイトルなので、本作が気になっているゲームがTwitchに配信されているのを見かけた際には、つい視聴してしまう方もいるのではないか。謎に満ちたゲーム性と、ゲーム実況を優遇する手法が、うまく注目を集めている印象だ。

ただし、Twitchにおいて重要なのは、一時的な勢いではなく遊ばれ続けられることだろう。普通のユーザーがゲームを手に入れられるようになれば、情報の希少価値が下がることにより注目度が現在よりも落ちることも考えられる。メタボリックシステムはユニークなシステムであるが、ゲームプレイを盛り上げる要素であるかどうかはまた別の話でもある。ただでさえマルチプレイゲームは、ユーザーの争奪戦が熾烈。細かいパラメーター管理が不評につながっていく可能性もあるだろう。

Steamの『SCUM』のフォーラムは、発売を待ちわびる“Hype”の声で埋め尽くされている。期待の声が、そのままSteamレビューに反映されるかどうかは未知数。むしろ期待の声は、批判を呼び込みやすい一面もある。開発元であるGamepiresのテクニカル・ディレクターであるAndrej Levenski氏はSteamフォーラムにて「君たちをがっかりさせないよ」と投稿するなど自信を見せており、気負った様子は見せていない。定価19.99ドルで、Steamにて早期アクセス販売される『SCUM』は、マルチプレイゲーム戦国時代における新たな勝者になれるのだろうか。