レビュー盗作疑惑により解雇された海外IGNの元編集者が弁解動画を投稿。的を射ない主張がさらなる批判を呼ぶ

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ゲームのレビュー記事およびレビュー動画の盗作疑惑により、海外大手ゲームメディアIGNを解雇された元編集者Filip Miucin氏が811日に謝罪動画を公開。盗作行為は「意図して行ったものではない」とし、さらに盗作騒動を取り上げた他社メディアを「クリック稼ぎが目的」と攻撃したことから、関係者および動画視聴者より批判を浴びている。Miucin氏のYouTubeチャンネルにアップロードされた謝罪動画は現在削除されており、のちにStreamableにて下の動画が公開された。本稿ではMiucin氏の謝罪内容を確認し、どこが批判の的となったのかを確認していく。

 

騒動の振り返り

当時IGNの編集者であったFilip Miucin氏は86日、自身が担当した『Dead Cells』のレビューを公開。その内容が、YouTubeにてゲームレビューを投稿しているBoomstick Gamingの『Dead Cells』レビューと酷似しているとの指摘を受け、翌日87日にIGNよりレビューが取り下げられた(直接指摘されたのは動画レビューであるが、文面レビューでも同様の文面が確認されていた)。そしてIGNが調査を行った結果、両者のレビューは言い逃れできないほど似ていることからレビューの削除と別担当者による再レビューという判断が下され、Miucin氏はIGNから解雇された。実際、Miucin氏のレビュー内容はBoomstick Gamingのレビューをコピーして、一部の単語を類義語で置き換えたような、あまりに似通った代物であった(前回記事)。

Boomstick Gamingによる盗作指摘動画

 

「いろんな事情があったけれど」最終的には自分の責任

騒動があってからコメントを控えていたMiucin氏が満を持して公開した謝罪動画であったが、その内容は疑問点が解消されるどころか、謎が増えるばかりの曖昧模糊としたものであった。まず今回の騒動について彼は、「いろんな事情があったけれど最終的には編集担当者であった自分の責任だ」と述べている。また責任を取ると述べているのは、盗作疑惑の騒動を起こしたことについてであって、盗作したとは直接的に認めてはいない。

まずレビュー執筆者・編集者であるMiucin氏がなぜ「いろんな事情があったけれど」と前置きしているのか、疑問が残る。文章を作成したのは他の人物だが、編集担当者なので自分が責任を取ったという言い分なのだろうか。問題の発生源を曖昧にした、微妙な表現となっている。

続いてMiucin氏は、自身のレビュープロセスはゲームメディア業界で出会った他のレビュアーと大差ないと述べたうえで、どんなレビューであろうと可能な限り情報を集めてから執筆を開始すると説明している。わざわざ事前に情報を集めていた旨を説明したのは、『Dead Cells』のレビューにおいても、少なくともBoomstick Gamingのレビュー動画を見たことについては認めようとしているからだろうか。

この動画を受け、かつてMiucin氏から盗作被害を受けたと主張しているChris Scullion氏は、多くのゲームレビュアーにとって事前に他者のレビューを読むというのはNG事項であるとコメントしている。他者のレビューを読むと自身のレビューにも影響が出てしまう可能性があるからだ。Miucin氏の元同僚であるIGNLily Zaldivar氏も、レビュアーの多くが執筆前に他者のレビューを確認していると示唆したMiucin氏に対して「でたらめ言うな(Bullshit)」と怒りをあらわにしている。

 

「意図してやったわけではない」

レビュー前に可能な限り情報を収集するという説明を踏まえ、Miucin氏は『Dead Cells』の騒動について「意図してやったことではない(What happened to Dead Cells review was not at all intentional)」と述べている。意図せず盗作してしまうことは、果たしてありうるのだろうか。事前に収集した情報から強く影響を受け、気づかないうちに同じ文面になっていたということだろうか。

だがBoomstick GamingMiucin氏のレビュー内容は、直接参照していなければ説明がつかないほど、構成から単語の並び順まで似通っており、意図せず似たような文章になってしまったというには無理がある。それはIGNMiucin氏のレビューを削除処分にしたことからもうかがえる。またIGN編集者のTom Marks氏は、「盗作は過ちではなく選択だ」と短くコメントしている。意図せずにここまで酷似するとは考えづらいのだ。

 

被害者には謝罪なし

ひと通り説明し終えたMiucin氏は、IGNと『Dead Cells』の開発スタジオMotion Twinへの謝罪に移る。「IGNの同僚を失望させるような真似はしたくなかった」と詫び、Motion Twinには一連の騒動に巻き込んでしまったことを謝罪。『Dead Cells』が正しい理由で注目を浴びることを願っていると述べた。

だが盗作の被害者となったBoomstick Gamingに対しては、謝罪せずに終わった。Miucin氏は、自身もYouTuberとして始めた身だからこそ、小さなYouTuberとして名を広めていこうとするBoomstick Gamingの気持ちはよくわかると述べ、「彼の成功が長く続くことを願っている」「今の活動を継続するんだ」と、謝罪ではなく激励を送っている。

 

Kotaku記者を攻撃

ここでMiucin氏のトーンは一変し、彼の盗作疑惑について報じたKotakuJason Schreier氏を名指しで攻撃し始める。Schreier氏は、『Dead Cells』だけでなく『FIFA 18』『メトロイド サムスリターンズ』などMiucin氏が過去に手がけた他のレビューにも盗作の疑いがあることを報道(Kotaku)。Miucin氏はそんなSchreier氏に向けて「調べてみなよ、それで本当に盗作を見つけたのなら是非とも教えてくれ」とやや冷笑気味に語った。

過去の盗作疑惑は全くもって事実ではないと否定。「似たような見解のレビューであれば盗作であると言いたかったのか、私の名前を使ってクリック数を稼ぎたいのか、あるいは、悪い状況に陥った人間を蹴り倒すことが好きなのかもね。」とフラストレーションをあらわにし、視聴者には自分の目で見て判断してくれと語りかけている。この挑発気味な発言を受け、Schreier氏はMiucin氏の盗作疑惑事例を自身の記事に追加する形で反応している。

※追記 2018/08/15 11:00
KotakuのJason Schreier氏のもとには、Filip Miucin氏が他者の動画、記事、フォーラム投稿、さらにはWikipediaからコピーした疑いのある事例について、読者から多数の連絡が寄せられているという。

『FIFA 18』

海外大手ゲームメディアのIGNに盗作疑惑がかかったことは、同業者にとっても、ゲームレビューを参考にしている読者にとっても、白黒はっきりしておきたい事件だろう。Schreier氏も、私はただ自分の仕事をしているだけで、読者の方々なら分かってくれるはずだとコメントしている。

Miucin氏は過去に、『FIFA 18』のレビューをNintendo Lifeから、『メトロイド サムスリターンズ』のレビューをEngadgetから盗用したとKotakuに指摘されている。前者のNintendo Lifeレビューを担当したChris Scullion氏は、Miucin氏の動画を受け、「まさか盗作していないと示唆するだなんて、信じられないよ」「あなたは自分が何をしでかしたのか、認めることも、理解することもできていない」と辛らつな言葉を残している(該当ツイート)。その後Scullion氏は自身の『FIFA 18』レビューをMiucin氏のそれと比較する動画を公開。レビュー項目とその分析内容、言葉やフレーズのチョイス・順序などが一致していると指摘している。

Miucin氏の謝罪動画は元同僚からも不評であり、IGNのエグゼクティブ・エディターDan Stapleton氏は、「こんなに反応が悪い謝罪はケヴィン・スペイシーの謝罪以来だ」と述べ、先述したIGNLiz Zaldivar氏は「ジャーナリズムの世界において盗作は簡単に許されることではない」とコメントしている。またZaldivar氏は、Miucin氏が盗作を認めなかったどころか、Kotakuの記事を「クリック稼ぎ」と批判しながら、自身の謝罪動画はしっかりとマネタイズ化していることを指摘。自分で自分の墓穴を掘るのはやめなさいと呼びかけていた(謝罪動画の削除に伴い、Zaldivar氏も該当ツイートを削除している)。

さらには、ため息からはじまり大げさな退場劇で終わる謝罪動画の構成すら、他のYouTuberの謝罪を真似したのではないかと揶揄されている(YouTuberBobby Burns氏が過去に投稿した、「YouTuberが視聴者の感情を操作する方法」にて、今回Miucin氏が取り入れたと思わしきテクニックが紹介されている。該当動画リンク)。動画の最後でMiucin氏は、みんなの信頼を取り戻し、今後もコンテンツを作り続けていきたいと語っている。だが今回の謝罪動画は不信感を払拭するどころか、不信感を募らせるばかりだ。ゲームレビュアーとして再スタートを切るには、まず盗作をしたのか、しなかったのか、という肝心の部分に正直に答えるところから始める必要があるだろう。

なお、本家IGNは別編集者による『Dead Cells』の再レビューを掲載済み。動画レビューもバージョン2と銘打たれたものが公開されている。

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