開発中止となった幻の『パイロットウイングス』続編が2作品存在したことが明らかに。冷戦を舞台にした軍事ものなど

 

『パイロットウイングス』の続編がゲームキューブ/Wii向けに開発されていたことが明らかになっている。2作品ともに、最終的には開発中止となっている。開発会社Factor 5の元スタッフが、開発中止になったゲームを保管するメディアUnseen 64およびYouTubeチャンネルDidYouKnowGaming?に情報提供したことにより、その詳細が判明している。

『パイロットウイングス』シリーズは、任天堂が発売するフライト・スポーツゲームだ。第一作目は1990年に発売され、1996年にはNINTENDO 64向けローンチタイトルとして『パイロットウイングス64』がリリースされた。また、2011年にはニンテンドー3DS向けに『パイロットウイングス リゾート』が発売されている。シリーズごとに特色が異なるが、空を自由に飛び回るというテーマが作品の根底には存在する。同社おなじみのシリーズ『マリオ』や『カービィ』のように爆発的人気を誇るというわけではないが、ファンから根強い支持を得ているシリーズであると言えるだろう。Factor 5によると、開発中止になったものの、同シリーズには幻の続編が2作品存在していたことが明らかになっている。

*DidYouKnowGaming?による解説動画

中止となった作品の一作目は、ニンテンドーゲームキューブ(以下、ゲームキューブ)向けに開発されていたという。当時Factor 5と任天堂は親密であり、独占契約を結んでいたとのこと。舞台となるのは冷戦中の現実世界で、「ライトスタッフ」といった軍事映画の作品の影響を色濃く受けるシリアスな作品として開発されていたという。Factor 5と任天堂はこの作品の開発に熱心に取り組んでいたものの、Factor 5が同時に開発を進めていた『スター・ウォーズ ローグ スコードロン』シリーズの売り上げがゲームキューブの販売不振に巻き込まれたことから、Factor 5は任天堂と独占契約を解消し、ユーザーベースの大きいXboxへと移行。こちらの『パイロットウイングス』のアイディアはXbox向け『スター・ウォーズ』タイトルに注ぎ込まれていたというが、こちらも開発中止となった。

Factor 5はのちにソニーともパートナーシップを結んだ後に、ふたたび任天堂と親密になる。いくつかのIPの新作を作るべくプロトタイプを開発していた。そしてまたしても『パイロットウイングス』の新作の開発に着手することになる。同作は、当初は冷戦が舞台の構想として進められていたが、最終的にWiiのユーザーに合わせたライトなものになり、E3 2006にて公開された『Wii Sports : Airplane』のアートスタイルに近いものであったという。デザインはライトである一方で、広大なエリアが舞台としており、膨大なコンテンツが用意されていた野心的なタイトルとして制作が進められていたとのこと。具体的には、現実の街を舞台とし、世界の観光名所を確認しながら空を飛び回れる作品として開発されていたようだ。この作品とあわせてFactor 5は、Wiiリモコンと併用して使えるヘッドーマントアクセサリーを開発し、任天堂に販売を提案していたという。頭を動かせばコクピットから周囲を見渡せる機能を持ちつつ、Wiiリモコンにはない「右スティック」の機能を補完する野心的なものになっていたようだ。

第一作目はスーパーファミコンで3D表現を導入した意欲的な作品だ。

しかし、2008年に任天堂は『Wii Sports Resort』に『パイロットウイングス』に似たミニゲームが収録されたことからこのプロジェクトは立ち消えに。諦めきれないFactor 5はこの作品を「WiiFly」と名付けて開発を続行。『パイロットウイングス』に似たゲームデザインでありながら、魔法のカーペットで実在の街の上を飛び回るといったファンタジーな要素を導入しており、さらには「Wii お天気チャンネル」と連携して、ゲーム内の状況が現実の街の天候や時間と同期するといったアイディアが詰め込まれていた。2K Gamesやナムコと話し合いが進められたものの、「WeFly」という名前でアメリカの新興パブリッシャーGreenScreenから発売されることが決まっていた。しかしながら、最終的にFactor 5とGreenScreenはともに経営不振に陥り、「WeFly」は世に出ることはなかったようだ。詳しい経緯やハードウェアに関する詳細などは該当のチャンネルを視聴してほしい。

任天堂はゲームキューブ・Wii時代にはFactor 5やSilicon Knightsといった海外デベロッパーと親密であることが報じられてきた。新作の噂が幾度も浮上したが、最終的には任天堂からゲームキューブ向けのFactor 5の作品が発売されることはなく、任天堂とSilicon Knightsのタッグも『エターナルダークネス 〜招かれた13人〜』が最初で最後であった。今回のように、本格的に開発されていたものの、表には出ずにさまざまな事情で消えていった作品は、山ほどあるのだろう。

時間制限など制約は存在するものの、丁寧に作られている『パイロットウイングス リゾート』

2011年に発売された『パイロットウイングス リゾート』はMonster Gamesが開発した、「ウーフーアイランド」の上空を飛び回る作品となっている。美しいリゾート島をながめる楽しさや、空を飛ぶ爽快感には定評があり、特に3D表現との相性は特筆すべきものがある。『パイロットウイングス』シリーズの名に恥じぬ完成度を誇るものの、Factor 5が開発していた極太の『パイロットウイングス』を遊んでみたいと思うユーザーも少なくないだろう。シリーズは2011年の作品が最新作であり、6年近く音沙汰もない。派手さはないがファンから愛されるフランチャイズであるだけに、ニンテンドースイッチでの続編の発表に期待したいところだ。


国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)