須田剛一氏インタビュー。『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』は地◯のマ◯オで『ノーモア★ヒーローズ』は◯し屋ゼ◯ダ、須田剛一の変わるキャリアと変わらない『ゼルダ』愛

NetEase Gamesとグラスホッパー・マニファクチュアは10月31日、『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラリマスタード』を発売した。それにあわせて、本作のプロデューサーであるグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏に、近況を訊いた。

NetEase Gamesとグラスホッパー・マニファクチュアは10月31日、『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラリマスタード』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch。

『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』は、2011年にPS3/Xbox 360向けに発売された『シャドウ オブ ザ ダムド』のリマスター版。リマスターにあたっては、最大4K解像度に対応し、オリジナル版より滑らかな60fpsでプレイ可能に(4KはPS5/Xbox Series X/Steam版のみ対応、Nintendo Switch版は30fps)。鮮明に描かれた細かい骨や、血しぶきまで堪能できる。今回は、『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラリマスタード』発売をフックに、本作のプロデューサーであるグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏に、近況を訊いた。

「地◯のマ◯オ」ふたたびな『ダムドリマスタード』

──自己紹介をお願いします。

須田剛一(以下、須田)氏:
グラスホッパー・マニファクチュア代表の須田です。今回の『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』(以下、『ダムドリマスタード』)では、プロデューサーという形で参加しております。

──『ダムドリマスタード』はどのような体験ができるゲームでしょうか?

須田氏:
オリジナル版では、「地獄のロードムービー」というのがキャッチフレーズでした。簡単に言うと、お姫様が悪いやつにさらわれて、それを助けに行く主人公という……本当に王道のストーリーベースになってます。マ◯オとピー◯姫とク◯パの三角関係とほぼ同じ構図で作っています。「地◯のマ◯オ」、といったイメージを持ってもらえればと思います。


──尖ったストーリーやバイオレンス表現のある須田さんの作品の中で、『ダムド』の個性となっている部分について教えて下さい。

須田氏:
王道ストーリーと、自分にとっては初めてラブストーリーを描いたつもりなんです。ガルシアとポーラのラブストーリー、恋愛関係をどうやって描こうかなと考えながら。もともとはもっと多くの2人のエピソードを描いていて全部カットになってしまったんですが。それを含めてあの2人の物語を書こうと思った、大きな挑戦ではありましたね。

──そもそもなぜラブストーリーを描こうと思ったのでしょうか

須田氏:
お姫様を助ける男というのがどういう男で、彼は何でそこまで女性に対して地獄の奥底まで行こうとするのかを描くにあたって、この2人の関係性も描く必要があると考えたからです。

──『ダムド』をリマスター化する話はしばらく前から出ていました。NetEase傘下に入ってから進んだのでしょうか

須田氏:
プロジェクト自体は傘下入り後に立ち上げました。元々そういう動きは何回かあったんですけども、実現できないまま時間が経っていました。

──ということは、その方向性自体はNetEase Gamesさんからも後押しがあったと。

須田氏:
そうですね。問題なく進んでいきました。グラスホッパーは創業約27年やってきた会社です。いくつかのIPも持ってこれたので、そのIPを活かしていくことはグループ入りする時にお願いしてましたので、それをまず1個実現してもらったというかたちですかね。


──ちなみにNetEase Gamesさんの下についたことで、バイオレンス表現が難しくなったことはないでしょうか。本国で売るとすればそうした部分は引っかかるといった側面はありますし。

須田氏:
まったくないです。自分はそうしたことを気にするように言われたことはないです。

──安心しました。NetEase Games傘下入りしたことで、開発体制にどのような変化がありましたか?

須田氏:
求人もしたことで、今定員ほぼマックス状態になっておりまして、もう1人2人入れるか入れないかっていうぐらいの座席数になってますので、かなり狭き門になっております。そういった意味ではすごく充実した人材確保はできていると思います。

──現時点でラインは何本ぐらい走っているのでしょうか。

須田氏:
基本大きいラインが1本あります。小さいタイトルも始めようかなと思っているので、大体1本+0.2本ぐらいですね。

──ということは『ダムドリマスタード』とは別で1本大きめのプロジェクトが進んでいて、小さなタイトルも進んでいるのでしょうか?

須田氏:
はい、そもそも『ダムドリマスタード』は基本外部の会社さんが担当してくれたので。

──『ダムドリマスタード』開発会社について教えて下さい。

須田氏:
オランダのEngine Softwareさんですね。うちで言うと『killer7』『ノーモア★ヒーローズ』の移植を担当してくれていました。『ダムドリマスタード』で3本目なのでこれまでずっと組んできた、安心できるパートナーさんです。元々『ダムド』の移植でEngine Softwareさんに相談したきっかけでもあるので、ようやく『ダムドリマスタード』が実現した感じですね。かなり心強かったです。自分もそれらを監修しました。


──リマスター化によって改善できた点について教えて下さい。

須田氏:
一番はニューゲーム+ですね。要は最強の状態で1からゲームを進められる。前作はできなかったんですね。描画の問題もありましたし、武器の入手できるタイミングが決まっているゲームなので、そもそも初期段階の敵に対して後半入手できる武器が対応できていなかった。そこの対応を全部再設定しました。


──ニューゲーム+が技術的に不可能だったというのは面白いですね。オリジナル版は、終盤の武器を序盤に使う仕様に対応できなかったと。

須田氏:
想定して作っていなかったというのもありますし、あとはエフェクトの量が半端ないので、そもそも描画自体が落ちてしまう問題がありました。メモリの制約もありましたね。

──当時はかなり切り詰めた状態で発売していたんですね。

須田氏:
当時はやや歪な分業制で作ってたんですよ。外国人スタッフが20人超えるぐらいいてですね、外国人派閥と日本人派閥もあるような状態で。いわゆるチャプター単位で切り分けの作業もしていたので、ここの連携があまり取れないような、不思議な分断の中でゲームを作っていた感じでしたね。英語と日本語でコミュニケーションが完全に分かれていましたし。そういうのが影響して、当時はニューゲーム+が実現できなかったっていうのはありますね。

──そういう意味では、リマスターになって当時やりたいことをより引き出せるようになったと。

須田氏:
そうですね。

──オリジナルの『ダムド』ではゲームクリエイターの三上真司(以下、三上)さんと共同で開発を行っていましたよね。『ダムドリマスタード』でもインタビューなどに一緒に出られていると思うのですが、『ダムドリマスタード』でも三上さんは関わっているのでしょうか?

須田氏:
プロモーション協力して頂きました。当時、ご参加していただいたので、スペシャルな応援団というかたちで参加して頂いています。

──お、応援団?

須田氏:
ドイツまでお連れしたので(ドイツ・ケルンで開催されたgamescom 2024に三上氏とともに参加)。もうあの手この手を使って、無理言ってドイツに同行していただいて。「須田さんこれ以上はしんどいっすよ」というところまで協力して頂きました。

──当然のようにお2人でメディアに露出しているので、『ダムドリマスタード』にも関わっているのかな?と思っていましたが……。

須田氏:
スーパーエグゼクティブ応援団です、めちゃめちゃ火力の高い応援団。


──(笑)

ところで、オリジナル版『ダムド』をリリースした当時の2011年は、須田さんが大量に作品を出していた時期だと思うのですが、当時から今を通して見て須田さん自身が変化したところはありますか?

須田氏:
当時は社長業が大変でした。ガンホーさんへ入ってグループ会社になったのが2013年。そこからはどちらかというと独立系のデベロッパーではなくてグループ会社のひとつになりました。2011年と今を比べると、経営周りであったりとか資金繰りだったりとかそういった部分に関しての負担は減っていて、今はディレクション業務……つまり開発に専念できています。

──あれから13年近く経ちますが、年をとられるにあたって創作欲求への情熱、表現欲などはマイルドになったのでしょうか?

須田氏:
血の量はより増えてますかね。

──逆にですか!?

須田氏:
むしろ、まだまだ足らないんじゃないかと。描画ギリギリまでやっていきたいです。 

──現場に戻ってきているからでしょうか?

須田氏:
そうですね。10年前よりはバリバリ現場に戻れましたね。2011年頃はとにかく携わるタイトルが多くて。総監督として見ていた作品は多かったのですが、腰を据えて開発に入ることは難しかったです。

──今の方が、より1本に対して自分の色を出せるような?

須田氏:
はい。でも当時は耳鳴りとか、脳に空気が行かないような感覚はずっとありました。考えることが多すぎて。ちゃんと寝てはいましたが。

時代は変わっても、『ゼルダの伝説』がとにかく好き

──ちなみに須田さんからは、今のゲーム業界がどのように見えているのでしょうか。

須田氏:
どの時代もトレンドがあるじゃないですか。それを意識し過ぎず追いかけすぎないようにしています。素晴らしいゲームがたくさんありますし、インディーでも凄いゲームがたくさんあって。完成度の高いゲームがすごく増えたのは間違いなくて、10年20年前と比べたら圧倒的な数で面白いゲームがたくさん世に出てるんですけども、なるべくそれを意識しないいようにはしたいなと。

──インプットそのものを断っているのでしょうか。

須田氏:
あんまり意識もしないですね。インプットを断とうと思ってもないですし、強烈にインプットしたいとか、アウトプットに専念したいとかっていうことでもなく、なるべく自然体で、多くの世界中のゲーマーと同じぐらいの感覚は持っていたいかなと。たとえば、「アトラスさんの新作すげーな」とかそういう感覚も普通に持っていたいなと。 


──そんな須田さんが強く影響を受ける作品はありますか。

須田氏:
それはもう、間違いなく『ゼルダの伝説』(以下、ゼルダ)なんですよね。僕は『ゼルダ』がずっとナンバーワンゲームで。今回の『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』(以下、知恵のかりもの)ももう全クリしました。ちなみに『ブレス オブ ザ ワイルド』でも『ティアーズ オブ ザ キングダム』でも、コログはコンプリートしてます。

──それはすごい。本当にお好きなんですね。『ゼルダ』シリーズとの出会いは初代からでしょうか?

須田氏:
初代ですね、僕はもう最初からですね。

──でも須田さんの作品は、全然『ゼルダ』には影響されていないような……(笑)

須田氏:
いやいや、『ノーモア★ヒーローズ』は『ゼルダ』そのものですよ。『ゼルダ』と『エル・トポ』と『ジャッカス』がグチャと混ざったのが、『ノーモア★ヒーローズ』なのです。メインフィールドがあって、それぞれダンジョンがあるじゃないですか。『ノーモア★ヒーローズ』も各殺し屋のダンジョンみたいなのがありますし、構造自体はもう『ゼルダ』ですよね。『ノーモア★ヒーローズ』は本当に殺し屋世界の『ゼルダ』を作りたいと思って仕上げました。

──『ゼルダ』シリーズは時代に合わせてどんどんスタイルチェンジしてきていると思いますが、スタイルが変わっても好きですか?

須田氏:
もう大好きです!すべての『ゼルダ』がすごいなって。今回の『知恵のかりもの』も面白いですよ〜、いやよくできてるなと思って。

──初代からずっと影響を受けていると。

須田氏:
そうですね、ビデオゲームの自分の中の体験で言うと、『ゼルダ』が一番大きな影響受けていると思いますね。

──ちなみに、『ゼルダ』シリーズの中ではどの作品が好きですか?

須田氏:
僕は『リンクの冒険』が一番好きですね。当時、発売日前日だったと思うんですけど、24時間営業していた近所のお店の店頭に並んだ瞬間に買って、そこから寝ずにクリアした思い出とかが大きいかもしれません。謎を解いた時の閃いた感覚も好きで、それはずっとシリーズを通じて好き。この歳になっても楽しめるし、『ゼルダ』はすごいですよ。

もし自分が任天堂さんのタイトルなにかできるんだったら『リンクの冒険』を…、いやいや怒られますよね。

──ちなみに、オープンワールドやオープンエアーのゲームを作りたいという気持ちはありますか?

須田氏:
作りたいですけどね、簡単に手を出せる分野ではないですよね。『ブレス オブ ザ ワイルド』や『ティアーズオブ ザ キングダム』であれだけのことをやってると。同業者の目線で見ると血の気が引いて青ざめてきます。胃が痛くなるというか。見えてるところにほぼすべて行けるじゃないですか。いろんな移動手段を使えますし、さらにクラフトまであそこまでアップデートして、地下までやって……でもDLCがほしくなるくらいで、コンテンツが大量なのに遊んでいるとまだ足りない。ムムム…、凄すぎですよ。

ノーギャラだったDevolver Direct出演

──須田さんと言えば、いわゆるE3期間(6月ごろ)のDevolver Digitalの映像番組に出演されることもあります、どういった経緯でコラボをするのでしょうか。利害関係が見えないというか、ビジネス臭が全然しないのが面白いです。

須田氏:
ギャラもらってないので、ビジネス臭がしない、というのは正しい感想かもですね(笑)全部ノーギャラですよ。他のタレントさんにはギャラ払ってるらしいですけどね。僕ノーギャラですから。あ、その代わりにDevolver Digitalのゲームコードは貰ってます(笑)


──報酬の規模小さくないですか(笑)
 
須田氏:
全Steamのゲームが遊べるコード貰ってます!本当は、協業したいという話をいつもしてるんですよ。元々僕が『Hotline Miami』のファンで、開発元のDennaton Gamesの2人もうちのゲームのことが好きでそこから仲良くなって、そこからDevolver Digitalとつながって。

彼らとは波長が合うんで、海外で会うとメシ食ったりとか、パーティー呼んでもらったりとか。彼らの食事会になぜか僕らも一緒にいたりとか。そういう楽しい関係なので、どっちかって言うと友達感覚でいる感じですね。で、いつか仕事しようねと。

──須田さんの、明確な報酬を求めないところが、良い感じに縁になっていると。

須田氏:
そうですね、でもギャラ欲しいですけどね!

一同:
(笑)

──ギャラはある意味リスペクトのかたちですもんね。

須田氏:
そうそう(笑)

「みんなメタスコア気にしすぎ」発言は、反響も気にしない

── GamesIndustry.bizさんの取材でコメントされた「みんなメタスコア(※)気にしすぎじゃない?」というインタビュー記事(関連記事)について、反響は見られましたか?

須田氏:
炎上……というか、盛り上がったんですよね?僕知らなかったんですよ。それこそNetEase Gamesとの定例で、「なんかすごいことになってますよ」「え、何がですか?」みたいなやりとりがあって。日本でも話題になったみたいなので、なんか悪いことしちゃったのかなと思いました。そのぐらいなので、特に何も気にしていないし、怒られてもいません。

※メタスコア……レビュー集積サイトMetacriticにおいて、各種ゲームメディアのレビュー/点数から算出される100点満点のスコア

──発言したことに後悔もなく、逆にもっと言っておけばよかったというようなこともなく?

須田氏:
正しいニュアンスを理解している人が多いといいなと。何が言いたかったのかというと、結局うちのゲームって、作っても0点付けたりとか20点付けたりとかっていう人がいるんですよ。(公平に評価すれば)さすがに0点ってことはないだろうと思うんですけど、うちみたいな、スタンダードな表現とか仕組みっていうものを度外視して作ったりするスタジオは評論での隙を見つけやすんでしょうね。

なので、そうなるとメディアが付けるメタスコアを気にしてもしょうがないし、やっぱりユーザーレビューが大事なんですよ。やっぱり買ってくれたゲーマーの人たち、ファンの人たちが今回の作品をどれだけ楽しんでくれたか、いいと思ってくれたかが大事なので。それが次につながるじゃないですか。だから0点付けた人に次100点出してもらおうと思ってもしょうがないし。なので、それがあの発言だったので、今も気にしてないですかね。 

──ちょっと発言が1人歩きしてしまった部分があると。

須田氏:
そうなんですかね。

──ちなみに最近のゲーム業界は、メタスコアを気にしてか、どんどん作品の尖りを丸くしていく傾向があります。須田さん自身はどのように感じていますか?

須田氏:
ちょっとは気にはしますよ。明らかに減点になるものはちょっとやめておこうかなとか。それも良くないんですけどね。セーブの仕組みをチェックポイントも無し、セーブポイントだけの硬派なスタイルにしたいという話をスタッフにすると、「それはやめた方がいい」となるんです。「今の時代、なるべくオートセーブを大事にした方がいいんじゃないかな」とか、そのへんは結構折れてますよ。


──なるほど。死んだら進行度がだいぶ戻される方が、喪失感もあいまってギミックとして面白いんじゃないかとか。

須田氏:
そうです。そういうちょっとえげつない仕組みとかもやってみたいじゃないですか。昔のあの感覚みたいなものって、今は通じなかったりすると思うので。

──ユーザーにストレスを与えるような仕組みを減らしているというのが、須田さんなりのアップデートなんですね。

須田氏:
ちょっとあるかもしれませんね。『ゼルダ』も丁寧にやるのかと思うと、参考にしなきゃいけないかなと。

──判断基準の中心が『ゼルダ』なんですね(笑)

須田氏:
間違いないです(笑)

『シルバー事件』みたいなゲームは今後作らないかもしれないけれど

──ちなみに、今後『シルバー事件』や『花と太陽と雨と』といったアドベンチャーゲームを作るような計画はありますか?

須田氏:
うーん、アドベンチャーゲームには戻らないと思います。あれだけの文章量を書ける時間が今、ないかもしれないので。

──今はテキストを書くことはないのでしょうか?

須田氏:
テキストは今も書いてます。出張中もずっと書いてたりとかするので、書くには書くんですけども、どちらかというとアクションゲームの中の、どう構成するかというところを考えていて。単純にテキストを大量に書けばいいってわけではなくて、テキスト量イコール尺になってきて、イコール予算になってくるので、そこを配分しながら書いています。前後のつながりの演出がインゲームでどこに入ってくるのかというのも構成立てて作るシナリオになっているので、そのシナリオのスタイルに今はなってますかね。

そういう意味で、アドベンチャーゲームならテキストは書きやすいかもしれません。どれだけ書いてもいいじゃないですか。文章量の多さがイコールゲームの物量そのものにもなってくるので、そこでテキスト以外のコストはかかってこないじゃないですか。もちろん翻訳のコストはかかるんですけども。そことの違いがありますかね。


──須田さんの作品のイメージとしては、須田さんが書いたテキストにゲーム側の仕様を合わせていく、というかたちかなと思っていました。今はどのように作っていますか?

須田氏:
確かに自分の作り方はほぼ前者なんですけど、今は後者ですかね。

──作家性の強さは大規模開発と相性の悪く、大規模開発にあわせてご自身のスタイルを合わせていると。

須田氏:
自分のスタイルが開発に合わせられているかどうか……(笑)でも、作家色の強い作り方は大規模開発には向いてないですよね。だから、ボリュームコントロールだったりとかダメージコントロールだったりを途中でしなきゃいけないんですよね。

──で、「クリエイター須田剛一」じゃない、「社長須田剛一」が出てくると。

須田氏:
結局、予算とスケジュールという魔物がいるじゃないですか、そういう魔物とにらめっこしなきゃいけないので。その時に僕が立場的に一番コントロールできる。なのでそれを考えながらやらなきゃいけない。ただ、最初に1回全部決めてしまうと出来なくなることも多くて。そこの難しさはあります。どれだけ緩めた状態で走らせるのかと、固めた状態で走らせるのかという、バランスみたいなものを探ってます。やっぱり毎作違いますよね。

──今はどっちに寄っていますか?

須田氏:
今回はゆるゆるな感じです。

一同:
(笑)

──そういう意味ではより個性が出ているというか、らしさは削らないということでしょうか?

須田氏:
そうですね。うーん、いろいろバランス見ながらやってます。

──新作はちょっと時間がかかりそうですね。

須田氏:
何かしら来年ぐらいには何かお伝えできるんじゃないかと。最初はゆとりがあって、でもスケジュールも迫ってきて、今はラストスパートに向かって走っている。そんな状態です。

──最後に、『ダムドリマスタード』について、まだ伝えたいことがあればぜひ。

須田氏:
描きおろしの追加コスチュームが4つ入っています。1つが普通に上半身裸の、タトゥーがしっかり見えてるガルシア(プラカ・ガルシア)。あとはデモニオ・ガルシアといって、元々ガルシアがデーモン化する仕様が当時あったんです。闇の状態でずっといるとストレス値がたまって、死ぬ手前に1回ビースト化して最強になるんですよ。それが実装できなかったので。新コスチュームのではビーストモードのガルシアが実装されています、これめちゃくちゃ強いです。初期値の段階で、攻撃力2倍の仕様です。

あとは神風スタイル(カミカゼ・ガルシア)というのがありまして、昔僕が漫画家の竹谷州史さんと「コミックビーム」で連載していた「暗闇ダンス」という漫画がありまして、その主人公の「神風航」のコスチュームが実装されています。あとはエイトハート(オチョ・コラソネス)ですね。これは『Travis Strikes Again: No More Heroes』に登場した7つのゲームがあるんですけど、同作に『シャドウ・オブ・ザ・ダムド2』が実装されていまして、その主人公が実はエイトハートなんですね。ドクロが人体化した存在がエイトハートで、このエイトハートでプレイできるという。その4つが実装されています。ぜひ遊んでみてください。

──ありがとうございました。

シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』は、PC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch向けに10月31日より発売中である。

[執筆・編集:Daijiro Akiyama]
[聞き手・編集・写真:Ayuo Kawase]

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