『デイヴ・ザ・ダイバー』はインディーゲームではありません。でも、いろいろ大変でした。開発者に訊いた、成功から話題の的に、ジャングルDLCに至るまで

本編発売後から現在に至るまでの開発秘話や、インディー定義に対する思いなどを訊いた。

MINTROCKETは6月18日、『デイヴ・ザ・ダイバー イン・ザ・ジャングル』をリリースした。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS4/PS5/Nintendo Switch/Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S。

『デイヴ・ザ・ダイバー イン・ザ・ジャングル』は、世界累計販売本数800万本を突破した海洋探索&寿司屋経営ゲーム『デイヴ・ザ・ダイバー』の大型新規DLCだ。本作では、デイヴたちが湖の調査のためジャングルの地へ向かうといった、新たなストーリーが展開される。「ウタラ」と呼ばれる村を新たな拠点とし、未知の水域に臨むこととなる。デイヴがダイビングする水域は淡水湖となり、これまで登場しなかった水生生物が登場。壮大な冒険が描かれる。同DLCは、1200円で発売予定だ。

このたび弊誌は、MINTROCKETの社長および『デイヴ・ザ・ダイバー』プロジェクトのディレクターを務めるファン・ジェホ氏にインタビューを実施した。本インタビューでは非常に興味深い話を訊くことができたため、2本にわけて掲載する。本稿では『デイヴ・ザ・ダイバー』本編の発売後から現在に至るまでの開発秘話や、ファン・ジェホ氏(以下ジェホ氏)のインディー定義に対する思いなどにスポットを当ててお送りする。DLCへのインタビューは別記事で掲載中である。

自分たちはインディーではない、インディー定義の難しさ

──ジェホさん、ご無沙汰しています。以前のインタビューから『デイヴ・ザ・ダイバー』が売れに売れましたね。以前と比べて生活は変わりましたか?たとえば、お寿司をいっぱい食べることが多くなったとか。

ジェホ氏:
本当に全然変わってないですよ。MINTROCKETが会社になり社長になりましたが、生活的には変わりません。まだスクーターで出勤してますし、マクドナルドも食べてます。……でもお寿司を食べる頻度はちょっと上がったかもしれないですね。韓国ではいいとこに行ったんですけど、まだ日本でいいとこには行けてないんですよ。昔、京都の看板のない本当にいい店を見つけて、絶対成功したらここ行きたいなって思ったんですけど、まだ行けてなくて。もうちょっと成功したら行ってみたいですね。

──やはり忙しくなりましたか?

ジェホ氏:
そうですね。現時点でプロジェクトも3つ走っていますしね。会社を運営するのにも時間がかかります。『デイヴ・ザ・ダイバー』を作る時は何も知らなくて時間が結構かかったんです。『デイヴ・ザ・ダイバー』はうまくいきましたが……今は今でプレッシャーがあるんですよ。ユーザーを失望はさせたくないので。で、そこに使う時間も作っています。シナリオなどもまだ僕が書いています。

──ひとつお聞きしたかったことがあります。『デイヴ・ザ・ダイバー』がヒットした時に、いろんなゲームアワードでインディーゲームとしてノミネートされました。一方でMINTROCKETは当時ネクソンコリアの中にあるサブブランドであり、実際にはインディーゲームと呼べるか怪しくて。

それによって、『デイヴ・ザ・ダイバー』がゲームアワードでインディーゲームと呼ぶに相応しいかどうかという議論がかなり白熱しました(関連記事)。今だからこそ聞きたいんですが、あの件について、ジェホさんは当事者としてどのように見ていましたか。

ジェホ氏:
議論がここまで白熱するのを見て、驚きました。というのも、本当に予想してなかったんですよ。もともと自分たちをインディーと全然思ってなかったので。インディーという言葉は、自分たちで会社を立てて、一から始めた方がインディペンデントな形で作った会社で使う用語だと思ってました。

僕らとしては、ネクソンコリアの中にありつつ、小規模でウェルメイドなゲームを作るスタジオのようなポジショニングにしたいなと思ってて。だから内部でもインディーという意識は全然なかったんですよ。で、『デイヴ・ザ・ダイバー』が出てから、特に欧米ではネクソンがあまり有名じゃなかったからか、ネクソンから出た新作というよりは、『デイヴ・ザ・ダイバー』というひとつのゲームとして見られて。ドット絵だし、小さめのゲームなので、インディーだと。後でネクソンという大企業が関わっていることを知って、そこでがっかりした方もいたんですよね。

そこから「このゲームはインディーなのか」という議論があり、かなり賛否両論がありました。この件については僕らが積極的に説明するのも変で立ち位置が難しくて。幸い韓国メディアやAUTOMATONの記事で、彼らは自分たちがインディーと思ったことないよという話を出してくれて、それが守ってくれたところもありました。いろんな批判があってバッシングもされましたが……話題を集めた点については誇りに思っています。

──ということは、今もMINTROCKETはインディースタジオではないと思っていますか?

ジェホ氏:
もちろん、思ってませんよ!僕たちは大企業傘下にあってサポートをしてもらってゲームを作ってたので、今もインディーとは全然思ってません。

……とはいえ、年商4000億円を超える会社で、(相対的に)あまりお金にならない小さいゲームを作るというのも難しいんですよ。プロジェクトがキャンセルになる可能性もありますし。ほかにも上を説得するのも大変。(小さなプロジェクトだと)どうしても優先順位が低くなるじゃないですか。そこでの難しさもあって。だから社内チームから傘下会社の社長になったというところもあります。

とはいえ、僕らはインディーに比べたら作る環境もずっと恵まれてますし、資金的な問題はなかったので、開発のハードルは低かったと思います。個人的に僕はインディーにすごく尊敬心を持っています。

──たとえば今、「お、ジェホ!君は素晴らしいインディー開発者だよね」といわれたらどうしますか?

ジェホ氏:
僕は「インディーじゃないよ」とはっきり言います。今でははっきり否定している記事も結構あるので、聞かれることもないですが。

ただ今は、あそこのスタジオはインディーであるとか、そうではないとか、いろんな会社に対して議論もあるので、誰かがなんらかの定義をしてくれたらな、と思います。いまはAAAかインディーか、どっちかに分類されるところが多くて。自分はどちらにも入らないので。

僕は、自分たちはトリプルAではなくシングルAであるとか、トリプルアイ(iii=トリプルインディー)ぐらいのポジションだと思ってます。このへんのカテゴリーは、規模と目指す方向性とかの定義があるべきだと思います。

──シングルAやトリプルi。面白いですね。自分たちと同じぐらいだろうと感じているスタジオはありますか。

ジェホ氏:
僕は実際に会ったことはないんですけど、『Cult of the Lamb』のMassive Monsterなんかは似た規模かなと。本当に個性があって、鋭い面白さがあって。そういうゲームを呼ぶ何かは、事業規模とか資金源で決めるのではない、新しい用語があったらいいなと思いますね。先輩ともいえるレベルの『HADES』とか『Hollow Knight』とかも、前作や新作などにおいても資金的にはしっかりしてるじゃないですか。これもインディーなのかと言われるじゃないですか。なので、サイズと方向性で決める定義があったらいいなと思いますね。

──ちょっと心配なのは、ジェホさんがMINTROCKETの社長をやることで、ビジネスマンとしての仕事が多くなってくるのかなとは思っていて。ゲームディレクターとしての活動と両立できるんでしょうか。

ジェホ氏:
いい質問ですね(笑)難しいところです。会社を立ち上げてから序盤はネクソン本社と話すケースが多かったです。法務であるとか財務的なところでどこまでやっていいかすごく時間は取られたんですけど、今は基本的にビジネスチームで担当してくれて、いろいろ見てくださっているので、今は7割ぐらいはディレクターとしてやってますし。

一方であとの3割を社長としてやってるのは、辛いしちょっと面倒くさいのも多いですけど……。ただ会社を同じ方向に向かせるのも大事で、カルチャーが重要なので。社長とゲーム開発者の両方をやることによる長所もあるので、頑張っている最中です。

『プラグマタ』で学んだクリエイティブさ、ペース調整への課題

──とても面白いです。ところでジェホさんは『龍が如く』ファンだったりゲーマーだなというエピソードを多く感じるんですが、ジェホさんが最近プレイされたり、ちょっと注目してるゲームというか、よく遊んでるゲームとかあれば教えてください。

ジェホ氏:
今年はいろいろ忙しかったので、あまりゲームをやる時間がなかったんですよ。惜しいと思っています。やはりゲームもトレンドビジネスなので、ここまでゲームをプレイするための時間がないのは問題あるなと思うぐらいに捻出できなかったんですよ。でも、ちょこちょこはやってるんで。最近『プラグマタ』をやって、これが本当に面白くて。クリアまでプレイしました。

──『プラグマタ』はたしかに忙しいジェホさんでもクリアできそうです。

ジェホ氏:
いや~~~本当に面白かったですね。最近AAA作品って、よくあまりクリエイティブじゃないって言われるじゃないですか。ほとんどシリーズものだったり、何々ライクだったり、そういう傾向があると言われたり。

でも『プラグマタ』をやるときは、この規模でもこのサイズでも、こんなに新しいメカニックとクリエイティブが出せるのかと驚きましたね。ほかには『REANIMAL』というホラーゲームもやりましたし、『Dispatch』も面白かったです。

ゲームって5時間から、長くて20時間ぐらいそのまま遊ぶじゃないですか。新しいメカニックを作るというのはある程度誰でも可能だと思うんです。ただ5時間以上、誰かを楽しくさせるのは本当に難しいと思うんですよ。『デイヴ・ザ・ダイバー』も後半はちょっと惜しかったという意見もありましたので、やはりこういうのは難しい中、前述したような作品はずっと面白くしていてすごい。『プラグマタ』みたいに、新しいメカニックと、新しい世界観で、ゲーム全体を緊張させて興奮させる手法からは、学ぶべきものがあると思っています。

──前回も『デイヴ・ザ・ダイバー』を遊んでインタビューした時に、後半のテンポやペースが課題だったとお話されていました。後半部分のサイクルとかはアップデートだったり、追加コンテンツでうまくフォローできたと感じますか?

ジェホ氏:
そうですね。いまだに批判があるのが、魚人族の村についた時にペースが崩れるという指摘です。このゲームって、魚捕って寿司を運営してのサイクルになっちゃうじゃないですか。正直言うと、ずっと魚捕りと寿司をやってたら、そのうち飽きちゃうと思うんですよ。途中で方向を変えるのは必要だったと思っています。一方でもっとうまくできただろうと思うところもあって、後半のペースは反省点でした。

『デイヴ・ザ・ダイバー』って、プレイヤーが序盤を思った以上に楽しんでくれたんですよ。僕、絶対に中盤にいくと飽きると思ったので、そこからストーリーのテイストに変えようと思ったんですが、それはそれで違うと言われたのもあって。その後に中盤から終盤にかけていろいろ入れたんですけど、たとえば『Balatro』のコラボコンテンツとかも入れて、もうちょっと面白さをアップはしたんですが……批判の声もあり。(自分を指して)未熟なゲームデザイナーの結果でした。次はもうちょっと最初からエンディングまで充実したゲームを作りたいなと思ってます。

──自分も本作を早期アクセスから楽しんでますが、『デイヴ・ザ・ダイバー』はいろいろ改善されていてよくなったと感じています。ところで発売後から結構な回数で大型無料アップデートされていますが、無料アップデートすることでビジネス的に問題ないんでしょうか?お金をとるわけじゃないですし。

ジェホ氏:
本当にありがたいことに『デイヴ・ザ・ダイバー』はロングセラーになっていて、黒字で。つまりビジネス的には大丈夫なんです。感謝の意味で無料アップデートをしている側面もあります。『デイヴ・ザ・ダイバー』は個人的に結構未完成なゲームだと思っていましたので、いろいろなデイヴの世界の拡張を楽しんでほしいという意味もありました。

──アップデートすることで本編の売上も伸びると。

ジェホ氏:
そうですね。この開発チームはこのゲームにすごく愛情をもっていて、長くコンテンツを出してくれるゲームやチームだとユーザーが思ってくれたら、それも僕らとしてはすごく嬉しい部分ですし、実際にビジネス的にもプラスがありますので。チームのリソースを投入するのは問題ありません。

──今は、買い切りのゲームでもアップデートがないとアバンドン(見捨てられた)ゲームとか言われたりしますもんね。

ジェホ氏:
そうなんです。もしかして新しいゲームを作って出したら、もうちょっと儲かったかもしれません(笑)でもいいんです。チームの中にはこれまで成功を経験してこなかったスタッフもいますし、欧米で注目もされました。手紙をくれる人もいれば、タトゥーを入れてくれる人もいる。となると、頑張っちゃいますよね。

ジェホ氏が関わっているのはMINTROCKETホームページにあるゲームだけ

──チームも拡張しているんでしょうか?あるいは、チームメンバーはどれくらい入れ替わっていますか?

ジェホ氏:
MINTROCKETを会社にする時、ほとんどのコアメンバーが残ったんですよ。今回のDLCのクレジットを見ると、お分かりだと思うんですけど、前いたメンバーはほぼいます。それ以外にも発表された他のゲームがありますので。そうですね、会社自体は結構拡張しましたね。

──ほかのゲームという点で、お聞きしたいことがあります。MINTROCKETは「Project TB」や『NAKWON:LAST PARADISE』といったタイトルもSteamで準備されていました。SteamでMINTROCKET明記だったので、『デイヴ・ザ・ダイバー』開発元の新作といった見られ方もしました。あれらにはジェホさんはどう関わっていたんですか。

ジェホ氏:
これには理由がありまして……実は当時ネクソンのMINTROCKETは、基本的にいろんなゲームを作るサブブランドだったんですよ。いろんなゲームがあり、『デイヴ・ザ・ダイバー』はその中のひとつでした。限られたリソースで自由に作るというサブブランドですね。そこでは僕はリーダーですらなくて。つまり、自分は「Project TB」や『NAKWON:LAST PARADISE』には関わってないです。

それらもいいゲームなんですけどね。自分が関わっているのは、今MINTROCKETのホームページで出しているものだけ。ほかのタイトルはネクソンでやっています。今MINTROCKETの名前でやっているのは、名前を変えたりするとストアなどでややこしくなって、このためにファーストパーティーの人に協力してもらうのも手間を掛けるので。なのでこの場を借りて言います!会社化する前にMINTROCKET開発とされていた、『デイヴ・ザ・ダイバー』以外のゲームは、自分は関わっていません。いいゲームですが!

──長年の謎が解けてすっきりしました。ありがとうございました。

デイヴ・ザ・ダイバー イン・ザ・ジャングル』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS4/PS5/Nintendo Switch/Nintendo Switch 2/Xbox Series X|Sで6月18日より発売中。DLCへのインタビューは別記事で掲載中である。

[聞き手・執筆・編集:Misako Murayama]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]

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