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Steamで急増する生成AI使用ゲーム、今や「新作の3本に1本」。ただし売上は“作品数増えたわりに伸びてない”との調査レポート
ゲーム業界のベテランがSteamにおいて「AI生成コンテンツの開示」のある新作ゲームの増加や売上シェアなどを分析したレポートを公開し、注目を集めている。

ゲーム業界のベテランがSteamにおいて「AI生成コンテンツの開示」のある新作ゲームの増加や売上シェアなどを分析したレポートを公開。GamesRadar+などが報じており、注目を集めている。
Sulka Haro氏は、サンドボックスMMO『Pax Dei』を手がけるMainframe Industriesの共同創設者であり、今年5月よりCEOを務めている人物だ。ゲームデザイナーなどとして開発にも関わってきた業界のベテランであり、Substackにて知見を共有してきた。
今回Sulka氏が投稿したのは、Steamにて2023年7月から2026年7月までにリリースされた5万3597本のゲームすべてを対象とするデータ調査だ。Steamにて2024年1月から導入された「AI生成コンテンツの開示」(以下、AI開示)をおこなっている作品に関する調査であり、該当する新作は急速に増加を見せているという。なお今回のデータでは、2023年発売の作品においても、後からAI開示が追加された作品が集計されているとのこと。

急速に増えるAI開示ありのゲーム
Steamでは毎年新作ゲームのリリース本数が増加を続けており、2023年は新作の合計が約1万4000本であったところから、2024年は1万8000本、2025年は2万1000本と大幅に新作数が増えている(SteamDB)。ただSulka氏によると、AI開示のない新作ゲームは2023年時点で月間約1030本であったところから、月間約1320本へと緩やかに増加しているにすぎないという。
対してAI開示が後から追加された2023年発売の作品は月間約13本であったが、今や月間約530本にまで増えているとのこと。期間にもよるものの、月間でリリースされる新作数の増加分の60~90%を、AI開示のあるゲームが占めているような状況だそうだ。現時点では新作のおよそ3本に1本がAI開示のあるゲームだという。Sulka氏は、現在の傾向が続けば2027年~2028年のどこかで新作の過半数をAI開示のあるゲームが占める可能性もあると伝えている。

一方、Sulka氏はAI開示のあるゲームの売上傾向についても分析している。なおデータ調査における収益はあくまで推定であり、レビュー数×30で販売本数を推計し、販売本数×価格で収益を推計しているとのこと。同氏はまず、AI開示の有無にかかわらず、Steamは売上がヒット作に極端に偏ったプラットフォームであるとの考えを説明。実際、今回集計された作品の推定総収益の約94%を、上位1%の作品が占めているという。また推定総収益の約62%を、上位10作品が占めていたそうだ。
こうした傾向はAI開示のあるゲームにおいても同様であり、集計期間の各四半期においては、それぞれわずか2作品がAI開示のあるゲーム全体の総収益の45~79%を占めていたという。そのためAI開示のあるゲームがどれだけ増えようが、ヒット作が増えなければSteamの市場全体にはほとんど影響はないとの見解が示された。
数は多くなる一方、売上は
なおSulka氏はSteamにおける、AI開示のある新作ゲームの売上本数の変化も調査。(正式リリースなどで)発売日が変更された作品を除きつつ上述した方式で推計をおこなったところ、AI開示のあるゲームの2024年の売上本数は全体の推定総売上本数の約3~6%にとどまっていたそうだ。一方で2025年後半から2026年にかけては約10~27%へと成長。ただSulka氏は、先述した新作のおよそ3本に1本がAI開示のあるゲームという状況を踏まえて、この成長は大幅に低い水準だとしている。同氏によれば、AI開示のあるゲームが、レビュー100件以上で推定販売本数3000本に達する割合は、AI開示のないゲームの約55%にとどまっているとのこと。この比率は2年間改善していないそうだ。つまり、AI開示のある新作ゲーム自体は急増しているものの、“売れる割合”は一向に変化がないわけだろう。とはいえ同氏は生成AIモデルの性能向上によってこうした比率が今後変化するかもしれないとしつつ、近年展開された最新の生成AIモデルやAIツールを使用しているゲームはまだ開発中であることも留意しておいた方がよいとの考えを述べている。
なおSulka氏はそうした調査の結果、同氏が商業的な成果を上げられなかったと見なすAI開示のあるゲームが全体の87%におよぶと伝えている。同氏はストアページ上のAI開示の“文章”に着目し、商業的に成功したとみられるレビューが1000件以上の138作品と、無作為に選んだ「発売後9か月以上レビューが50件未満」の400作品を比較。AI開示自体にどのような違いがあるのかの考察を記している。

Sulka氏によれば、レビューの少ない400作品のうち72%が生成AIによるアート・画像・テクスチャーを使用していると言及しているのに対し、成功作品では57%にとどまっていたとのこと。一方で生成AIを音声に使用しているという作品はレビューの少ない400作品において8%だったのに対し、成功作品では24%。ローカライズについてもレビューの少ない400作品では6%だったのに比べ、成功作品では18%に及んでいたそうだ。同氏は成功作品はより複数の形式を組み合わせ、市場を意識した生成AIの使い方をしていると推察。対してレビューの少ない400作品のうち中央値にあたる作品では、生成AIをアート素材を使っているだけで、そのほかの部分にほとんど利用していなかったとのこと。
またSulka氏は、レビューの少ない400作品ではAI開示の文章が簡素で短い傾向にあったとも説明している。対して成功作品では、生成AIがあくまで補助などの用途で用いられたことを説明している傾向が見受けられたという。また成功作品では、生成AIによるコンテンツを人が確認し、手作業で調整したことを明示している割合も多かったそうだ。
AI開示ありのゲームの傾向あれこれ
なおSulka氏はPart 2とする記事も公開し、データ調査からさらにさまざまな推察をおこなっている。たとえば、スコアが表示されるのに十分な数のレビューがついた約2万6000本の好評率を見ると、AI開示のないゲームは平均好評率が81%だったのに対し、AI開示のあるゲームは77%。またAI開示のないゲームでは、好評率70%以上を獲得する「やや好評」ステータス以上の作品が80%を占めていたのに対し、AI開示のあるゲームでは71%であったという。壊滅的な低評価ばかりではないとみられるが、AI開示のあるゲームはやや評価が低めになる傾向も垣間見える。
一方でSteamに新規参入した開発者数を見ると、AI開示のないゲームを発売した新規開発者は過去2年間で月間約950組で横ばい、あるいはわずかに減少がみられたそうだ。対してAI開示のあるゲームを発売した開発者は、2024年後半に約140組だったところ2026年前半には約440組に増加していたとのこと。AI開示のあるゲームの開発者は2作品目をリリースしている割合も多いそうで、作品開発のハードルを下げていることもうかがえる。とはいえSulka氏によれば、生成AIでゲームを乱造している開発者ばかりというわけでもないという。

生成AIをゲーム開発に用いることについては、学習データの権利上の懸念などを巡って、業界やユーザー間で風当たりの強さもみられる。一方Steamでは2024年1月より暫定的な方針として、ゲームに権利を侵害するコンテンツが含まれないことを前提として、ゲームを提出する際にゲームの開発(事前生成)および実行(ライブ生成)において、どのようにAIが使用されているかを説明させ、その開示情報をもとに審査をおこないリリース可能にする方式を導入(関連記事)。今回分析されたストアページ上での「AI生成コンテンツの開示」もその一環だ。導入から2年以上が経過し、AI開示が売上やレビューにどのように影響するのかも業界で注目のトピックとなってきた(関連記事1、関連記事2)。
なおSteamでは、今年1月からは開発作業の効率向上のために使用されるAIツールに関しては、情報開示や審査におけるアンケートでの報告が不要であることが明示された(関連記事)。Unreal EngineやUnityといったゲームエンジンには生成AIを活用した開発支援ツールも導入されており、SteamにてAI開示の必要のないゲームでも、アートなどとは異なる側面で開発における生成AIの活用が進んでいる可能性はあるだろう。
今回の調査では、AI開示のあるゲームが急速に作品数を増やしている一方、その割合に比べて売上シェアの成長が鈍く、レビュー好評率も非AI作品を下回る傾向が示された。また、商業的に成功した作品と伸び悩んだ作品では、生成AIの用途や開示文の傾向にも違いがみられるという。生成AIモデルやAIツールが発展を遂げるなかで、AI開示のあるゲームが今後、作品の品質や商業的な存在感をどのように高めていくのかも注目される。
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