シリーズぜんぶ高評価シム『ツーポイント』の、「本格シムなのに失敗を許す」開発哲学。『ヴァンサバ』コラボなど自由すぎる新作『ツーポイントミュージアム』の裏側も訊いた

スタジオディレクターのGary Carr氏と、テクニカルディレクターのBen Hymers氏にインタビューを実施。スタジオの思い出話から今後の計画まで、いろいろと興味深い話を訊くことができた。

セガは『ツーポイントミュージアム』を配信中だ。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/Nintendo Switch 2/PS5/Xbox Series X|Sで、日本語表示および日本語音声に対応している。高評価シリーズ『ツーポイント』の最新作であり、開発元のTwo Point Studiosは今年で設立10周年を迎える。今回弊誌は開発元へのメディア合同インタビューに参加してきたので、その模様をお届けしていく。

『ツーポイントミュージアム』は博物館を経営するシミュレーションゲームだ。プレイヤーは駆け出しの学芸員となり、展示品の収集から部屋のデザイン、経営やスタッフの管理までおこない、博物館を運営していく。“ヘンテコ博物館経営ゲーム”と謳われており、氷漬けのイエティなど、ユニークな展示品が多数登場するユーモアあふれる作風が特徴。奇妙な展示品を集めて来館者を満足させ、5つ星の博物館を目指すのだ。

同作を手がけるTwo Point Studiosは、イギリス・サリー州ファーナムに拠点を置くゲームスタジオだ。同スタジオは『Fable』や『Black & White』などに携わった業界のベテランらが集まって、2016年に設立。2018年にリリースした病院経営シム『ツーポイントホスピタル』を始め、ジョーク満載の経営シミュレーションゲーム『ツーポイント』シリーズを手がけている。

そんなTwo Point Studiosは今年で設立10周年となる。節目の年に、弊誌は同スタジオにインタビューする機会にめぐまれた。スタジオディレクターのGary Carr氏と、テクニカルディレクターのBen Hymers氏にインタビューすることができた。スタジオの思い出話から今後の展開の予定まで、いろいろと興味深い話を訊くことができたので、本稿でお伝えする。

Gary Carr氏
Ben Hymers氏

失敗を許すゲーム

    ――Two Point Studios設立10周年、おめでとうございます。今の気持ちを聞かせてください。

    Ben Hymers氏(以下、Ben氏):
    ここまでやってこられたことをとても誇りに思っています。何事も10年続けるのは大変なことだと思いますが、この浮き沈みの激しいゲーム業界で10年間続けてこられて、今もこうしてゲーム制作を続けられているのは、本当に誇らしいことだと感じています。

    ――Two Point Studiosはこれまで3作品リリースされていて、どれも高い評価を受けています。安定感があるスタジオというイメージですが、ゲーム制作にあたってプレッシャーを感じることはありますか。

    Ben氏:
    プレッシャーについてはいつも感じています。ゲームを作るうえでは、「誰も気に入ってくれなかったらどうしよう」とか、「まったく売れなかったらどうしよう」といった悩みはつきものです。長いあいだ開発を続けるなかで、常に自問自答している問題でもあります。

    Gary Carr氏(以下、Gary氏):
    『ツーポイントミュージアム』についていうと、博物館というテーマがひとつの不安要素でした。博物館を経営するというテーマが本当に世界的に受けるテーマなのか、不安も抱えながら開発していました。自分たちが手がけるものがすべてうまくいく、とは決して思っていません。我々自身が我々の最大の批評家であり、自分たちに常にプレッシャーをかけている状況です。我々自体は50人規模の比較的小さなスタジオですので、常に失敗ありきで、プレッシャーを感じながら真剣にゲーム制作に打ち込んでいます。

    ――経営シミュレーションは始めたてだととっつきにくいこともありますが、ツーポイントのゲームは最初から遊びやすいと思っています。初心者を意識して開発されているのでしょうか?

    Ben氏:
    チュートリアルには注力していて、一度にいろんな要素を見せすぎないようにしています。もうひとつ意識しているのは失敗についてです。『ツーポイント』のゲームでは、仮に失敗しても立ち上がれないほどの大ダメージは受けないようにしています。私自身はディープな経営シミュレーションゲームが好きなのですが、そういった作品では一度の失敗で立ち直れないほどの大ダメージを受けることがあります。しかし我々のゲームではそうならないように、リカバリーが効くように意識しています。そのため初心者でもアプローチしやすく、かつシミュレーションゲーム好きもずっと長く楽しめる作りになっているのではないかと思っています。

    Gary氏:
    初心者を意識して作っているというより、アプローチがしやすいようにと意識して作っています。親しみやすいようにするにはコメディ要素も重要で、システム自体は他の経営シミュレーションゲームと引けを取らない複雑なシステムになっていますが、その中でユーモアは人を惹きつける要素になると思っています。ゲーム自体があまりシリアスなトーンではないので、その分非常に親しみやすいところもあるんじゃないかなと。入りやすく、ハードコアな経営シミュレーションゲーム好きの人も十分楽しめるように作っています。

    透明性のあるコミュニケーション

    『 ツーポイントホスピタル』

      ――今回『ツーポイントホスピタル:フルヘルスコレクション』が発売決定しました。各種DLCが同梱されたいわゆる完全版という位置づけだと思いますが、なぜこのタイミングで発売することになったのでしょうか。

      Ben氏:
      『ツーポイントホスピタル』は PC版ではDLCをたくさん出しているのですが、いくつかのDLCをコンソール版ではリリースできませんでした。できなかったのは技術的な制約があったからです。『ツーポイントホスピタル』は我々の第一作目で、当時は小さなチームで特貫工事で開発を進めた部分がありました。その中でコンソール版に必要な、メモリの最適化などが及ばなかったところがあります。

      2018年8月の『ツーポイントホスピタル』のPC版リリース後、コンソール版への移植を進めると同時にPC版のDLC開発も進め、二つのプロジェクトが別々に進んでいくような状態になっていました。それでPC版とコンソール版で内容に差ができてしまっていたのですが、これがずっと心残りでした。差を埋めたいと思っていた中で、今回10周年という機会がやってきました。現在は当時よりコンソールの性能も上がりましたので、技術的には当時移植できなかったDLCも可能になっています。それで10周年にあわせてコンプリート版を出すのもよいかなと思い、今回頑張って出すことにしました。

      Gary氏:
      我々は小さな独立系のスタジオとして始まったので、当時はすべてを同時に進めることはできませんでした。今では各プラットフォームに向けて、コンテンツを同時に届けることができています。この10周年という機会で完全版をリリースすることで、当時できなかったことを正しい方向に進め、すべてのユーザーが満足できるかたちにできたのではないかと思っています。

      ―― ユーザーコミュニティと関わる際に、意識していることや気をつけていることはありますか?

      Gary氏
      透明性を持ったコミュニケーションというのはスタジオの設立初期から意識していることです。『ツーポイントホスピタル』はコミュニティがない状態からスタートしましたが、その時にいろんなフィードバックがありまして。たとえば「なぜ部屋のコピー&ペースト機能がないのか」のような指摘ですとか。確かにそうだなと思い、そこから意識的にフィードバックを受け入れるようになりました。

      いただいたフィードバックはリスト化して、重要度で並び替えて開発のTo-Doリストに追加していくようなやり方をやっています。閉じた環境でやるのではなく、声に耳を傾けながらやっていくというスタンスです。無料アップデートを配信していくのはコミュニティへの感謝の印でもあります。

      Ben氏:
      SteamやReddit、DiscordなどのSNSでのコメントを読んだりと、フィードバックに目を通す時間をたくさん取っています。またファンのなかには数千時間遊んでいるような方たちもおりまして、そうしたファンにはアーリービルドを渡してフィードバックをもらったりもしています。寄せられた意見に対して直接返答することもあり、そういった距離の近いやり取りができるのも小さなスタジオならではかなと思っています。

      コラボ実現は熱意のおかげ

        ――最新作の『ツーポイントミュージアム』では『Vampire Survivors』や『アングリーバード』、
        『デイヴ・ザ・ダイバー』など人気IPとのコラボが次々と開催されてきていますが、これはどうやって実現しているのでしょうか?

        Ben氏:
        我々のCOOにJoさん(Jo Koehler)という人がいるのですが、その人がメインで働きかけたものですね。JoさんがたとえばLinkedInですとか、ウェブサイトのお問い合わせページなどからひたすら各スタジオに問い合わせを続けてくれて、そこからコラボ企画が実現していったかたちです。

        Gary氏:
        ビジネスの戦略というより、純粋にJoさんの熱意が成し遂げてきたことですね。とにかくJoさんの熱意がすごくて、我々の熱意をぶつけていったら向こうがそれに応えてくれたのだと思います。ゲーム業界全体を活気づけるような施策でもありますし、ほかの開発スタジオと一緒に働けるのは非常に楽しいことでもあるので、素晴らしい体験になっています。

        また『ツーポイントミュージアム』には「デジバース」という次元の亀裂のような存在の設定があるのですが、その異次元を通っていろんなゲームがやってくるというアイデアが非常に良くて、自然に他社とのコラボが行えるかたちになっていました。博物館である以上いろんなものを展示するので、そういうゲームの仕組みもコラボがやりやすい状況を作っていますね。

        ―― 『ツーポイントミュージアム』では日本語音声も導入され、力の入ったローカライズがおこなわれています。ローカライズについてはどのようなことを意識していますか?

        Ben氏:
        我々はイギリスに拠点を置いていますが、各言語で違和感のない、あたかもその言語の会社が作ったようなローカライズをするということを目標にしています。セガとの協力を通してそれが実現できていると思います。

        Gary氏:
        10年前の独立したてのころはローカライズまで手が回りませんでした。今セガと一緒にそれができるようになって、非常に嬉しく思っています。新たな対応言語を追加するというのは予算も手間もかかる大変なもので、特に本作はいわゆる“オヤジギャグ”も含めてジョークが非常にたくさんあるので、翻訳するのが難しい作風です。そこを各ローカライズ担当者に頑張ってもらえまして、すべての言語で高評価をいただいております。

        またセガは日本の会社ですので、もちろん日本語には力が入っています。日本語の吹き替え音声も好評で、日本でもかなり訴求力があったのではないかと思っております。

        今後も『ツーポイント』らしい新たな体験を届ける

          ――『ツーポイント』シリーズの今後の展開について、お話しできる範囲で教えてください。

          Gary氏:
          まずは最新作の『ツーポイントミュージアム』の開発をまだまだ続いていきます。これまでリリースしてきたDLCは単に新ステージを追加するのではなく、新しい体験をプレイヤーに提供できるような、ゲームプレイ自体が新しくなるようなDLCとなっており、ユーザーからも好評をいただいています。

          博物館という形式がさまざまなテーマを扱える懐の広いジャンルだと感じていて、たとえば宇宙だとかコンピューターゲームだとか、いろんな要素を自然に出すことができています。いろんな方向に展開できたのが非常によかったと思っています。今後もエキサイティングなDLCの開発を続けていきたいと思っています。

          もちろん新作のアイデアもスタジオ内には上がっています。経営シミュレーションではないかもしれませんが、シミュレーションゲームではあります。あまり詳しくは言えませんが、新しいアイデアは常に模索中です。しかし今はとにかく、『ツーポイントミュージアム』がとても楽しみな状態にあると感じています。

          Ben氏:
          これまで「ツーポイント州」というユーモアあふれる世界を舞台にゲームを作ってきており、今後もそうした路線を貫いていきたいと思っています。一本の糸が通った、ツーポイント的なゲームを今後もしばらくは作っていきたいなと。やりたいことや開発したいことのリストが社内にはあり、それがどんどん長くなっているような状況ですが、FPSなどこれまでとはまったく違う方向に進むことは考えていないですね。ツーポイントらしい路線を続けることを目指しています。

          ――この10年を振り返って、一番印象的な出来事は何でしたか?

          Ben氏:
          本当にいろんな思い出がありすぎて難しいですが、Garyとの思い出で記憶に焼き付いていることがひとつありますね(笑)あの『ツーポイントホスピタル』をリリースしたときの……。

          Gary氏:
          ああ、あれね(笑)『ツーポイントホスピタル』はリリース直後から売れ行きがとても好調で、数日でセガからの予算も回収できて、成功を確信できた作品になりました。それでお祝いに、ブライトンにある有名なケーキ屋さんのケーキを貰ったんです。そのとき感情的にこみ上げてくるものがありまして。私はなぜか、そのケーキの下についていた可愛いピンクのリボンを頭に巻いて、そのまま外に出て、泣きながら妻に電話をしたんです。

          その結果、ピンクのリボンを頭に巻いた50代の男が、涙を流しながら電話で話しつつ、通りを徘徊しているという状態になりまして……。オフィスに戻ったときもまだ泣いていたんですが、みんなからは不思議そうに「こいつは何をやってるんだ?」というような目で見られました(笑)美しくも奇妙な思い出で、たぶん一生忘れないと思います。

          ――(笑)最後になりますが、日本のユーザーにメッセージをお願いします。

          Ben氏:
          私たちのゲームをプレイしてくださった皆さま、本当にありがとうございます。今後も私たちのゲームも楽しんでくれると幸いです。この10年の旅路をとても楽しんで歩んでまいりました。セガと一緒に働けることも非常に楽しく働けてますし、日本市場での試行錯誤も楽しんでいます。

          Gary氏:
          ユーザーさんたちが、私たちのゲームにどういったものが欲しいか、どういうものを望むか、そういった声を知りたいと思っております。引き続きサポートのほどよろしくお願いします。

          ――ありがとうございました。

          『ツーポイントミュージアム』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2向けに発売中だ。また現在SteamおよびXbox Game Pass加入者向けに週末フリープレイが開催中。Steamでは6月23日午前2時まで無料で遊ぶことが可能だ。

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          Akihiro Sakurai
          Akihiro Sakurai

          気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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