Steamに出現した『キニーと名状しがたいおでん屋』は、全然おでん屋のゲームじゃない。開発者に命名理由を訊いたら「おでん屋=戦略的コンセプト」だった

Rogue Duck InteractiveおよびLazy Otter、Gamersky Gamesは5月18日、『キニーと名状しがたいおでん屋』を8月1日に発売すると発表した。

パブリッシャーのRogue Duck InteractiveおよびLazy Otter、Gamersky Gamesは5月18日、『キニーと名状しがたいおでん屋』を8月1日に発売すると発表した。同作の英語タイトルは『Kinny and the Cosmic Cauldron』であり、「名状しがたいおでん屋」という目を引くフレーズで邦題が付けられている点が印象的だ。このたび弊誌は開発元Kinnymomsの担当者にメールインタビューを実施し、特徴的な邦題が付けられた経緯などをうかがった。

『キニーと名状しがたいおでん屋』は大釜の中で食材をぶつけ合い、スコアを獲得していくデッキ構築型ローグライクゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)で、5月5日時点でSteamのウィッシュリスト数が1万人を突破しており、注目度もあがっている。絵本のようなピクセルアートの世界で、主人公の魔女「ライラ」となって、エイリアンたちにカオスな料理を提供しよう。お客さんが料理に満足できないと、次に食べられてしまうのはあなたかもしれない。

本作の舞台となるのは、宇宙を股に掛けたレストランだ。料理は大釜に投入する最大20個のランダムな食材がぶつかり合うことで完成する。りんご、ゴブリン、マーメイドといった風変わりな食材にはそれぞれ基本スコアとボーナススコアが存在し、大釜の中でぶつかり合うことによって料理の合計スコアを獲得できる。食材は特定の食材とぶつかるとスコアが上がったり、合成できるなど、さまざまな効果をもつ。新たな食材は料理開始時と報酬で入手できるため、どんどん料理を提供し、多彩なシナジーを発生させよう。

本作はデッキ構築型ローグライクとなっているが、おもなアイテムの種類は投入する「食材」とバフ効果を装備できる「宇宙遺物」のふたつだ。料理中の複雑な操作がないので、ゆったりと大釜の中で増えていくスコアを楽しむことができる。ひとりのお客さんにつき3回まで料理をすることができ、合計のスコアが目標に達した時点で料理は完成する。目標スコア達成までの料理回数が少ないともらえる報酬が増えるので、早めに高スコアを狙うのも戦略のひとつだ。

目標スコアが達成できずゲームオーバーになっても安心してほしい。リザルトでは主人公のレベルが上がることによって新たなアイテムが解放され、リトライ後の報酬やお店の商品に出現するようになる。プレイに行き詰まってもリプレイを繰り返すことで、より強力なシナジーを組み合わせることができる。製品版では、プレイヤーのゲーム進行に応じて徐々に難しくなっていく「チャレンジモード」を実装予定とのこと。

ゲーム中では特殊な会話イベントが発生することもあり、答える選択肢によってはアイテムがもらえることも。来店ストーリーは40~50種類程度あるそうで、宇宙の果てから訪れる奇妙なエイリアンとの変わったエピソードを体験できる。

ところで、本作は『キニーと名状しがたいおでん屋』というタイトル名ながら、原題の英語タイトルは『Kinny and the Cosmic Cauldron』。直訳すれば「キニーと宇宙の大鍋」といった意味になるだろう。“名状しがたいおでん屋”というフレーズはどこから飛び出してきたのか、特徴的な日本語タイトルの経緯と今後の展開を、開発担当者のYoung June氏に伺った。

──『キニーと名状しがたいおでん屋』の原題は『Kinny and the Cosmic Cauldron』です。「Cosmic Cauldron(宇宙の大鍋)」を「名状しがたいおでん屋」と表現されていますが、どのような経緯で日本語タイトルが決定されたのでしょうか?

Young June氏:
「名状しがたいおでん屋」というタイトル案は、当初パブリッシャー側から提案されたものでした。ただ、開発者側の視点では、最初は少し馴染みのない印象もありました。というのも、韓国における「おでん」のイメージが、私たちが当初思い描いていた「cosmic cauldron(宇宙の大鍋)」というコンセプトとはやや距離があるように感じられたからです。そこで私たちはパブリッシャーにタイトルの意図を尋ね、詳しい説明を受けたことで、その方向性を十分に理解することができました。

──たしかに「名状しがたいおでん屋」は原題からはちょっとかけ離れていますよね。どのような話し合いがあったのでしょうか?

Young June氏:
以下はパブリッシャー側の考えを要約したものになります。まず「名状しがたい(Unnameable)」という表現は、本作に含まれているラヴクラフト的要素を反映しています。本作には果物や魚介類といった通常の食材だけでなく、クラーケンや触手のようなクトゥルフ神話風の食材も登場します。このジャンルは日本で強いファン層を持っており、本作の核となるジャンルがデッキビルディングであることから、ラヴクラフト的世界観と戦略性のあるゲームを好むプレイヤーに効果的に訴求できると考えました。

次に、「おでん屋」という言葉は、大鍋で食材を煮込むというゲームの中核コンセプトを直感的に伝えるために選ばれました。「鍋」や「シチュー」といった抽象的な言葉よりも、日本で馴染み深い「おでん」を使うことで、ゲームの雰囲気をより素早く分かりやすく伝えられると考えたのです。さまざまな具材を一つの大鍋で煮込むという点でも、本作の料理スタイルと非常によく一致していました。

──言われてみると日本のおでんにはさまざまな具材があり、食事の最後に麵を入れてうどんにしたり、お米を入れて雑炊にすることもあります。とはいえ本作での調理は「おでん」感はない気も……

Young June氏:
パブリッシャー側は、「Cauldron」という単語だけでは、『Balatro』や『Luck be a Landlord』のようなゲームを好むターゲット層に対して、十分な訴求力を持たない可能性があるとも考えていました。一方で、「おでん屋」という表現は、日本のプレイヤーにとって直感的かつ親しみやすく、さまざまな食材を一つの鍋で調理するというゲーム性を明確に伝えられると判断したそうです。

──なるほど、戦略的・コンセプト的な「おでん」というわけですね。ちなみに当初、Steamで公開された日本語タイトルは『名状しがたいおでん屋』で、「キニー」はタイトルに含まれていませんでしたが、なにか特別な想いがあって追加されたのでしょうか?

Young June氏:
「Kinny(キニー)」については、私たちにとって非常に重要なキャラクターではあるものの、パブリッシャー側は「意味を持たない固有名詞」であるため、新規プレイヤーにとって若干の認知的ハードルになる可能性があると考えていました。そのため実は当初のローカライズ方針では、ゲームのジャンルや雰囲気を即座に伝えることを優先し、「名状しがたいおでん屋」というタイトル案が提案されました。

しかし開発者側としては、キニーが新規プレイヤーへの障壁になり得るという点には同意しつつも、タイトルから除外してしまうとゲームのアイデンティティが弱まってしまうとも感じていました。ゲーム全体を通して登場し続ける不思議な存在について、プレイヤーが理解しづらくなってしまうのではないかと懸念していたのです。

──「キニー」は前作『Kinny and the Star Track Puzzle』にも登場した、かわいい星の妖精のようなキャラクターですね。今作の物語とつながりはあるのでしょうか?

Young June氏:
キニーは私たちの世界観における中核的存在であり、過去作『Kinny and the Startrack Puzzle』や、開発中止となった『Kinny and the Lost Starlight』から受け継がれてきたマスコットキャラクターでもあります。キニーは、宇宙の混沌(エントロピー)と光から生まれた魔法的存在です。設定上、古代の魔女たちはキニーと交信し、その力を用いることで、さまざまな文明が星々の間で繁栄することができました。しかし一部の者たちがキニーの力を資源として利用し始めたことで、キニーは徐々に宇宙から姿を消していきます。

過去作では、魔女ダナが最後に残されたキニーを発見し、失われた星明かりを取り戻して宇宙の均衡を回復する旅へ出る物語が描かれました。その旅の後、キニーは再び宇宙各地に現れるようになり、魔女たちは再びキニーと共に魔法を扱える時代を迎えます(なお、本作ではダナが旅商人としてカメオ出演しています)。

『キニーと名状しがたいおでん屋』は、その後の時代を舞台としています。大きな危機を経た後、宇宙の片隅に浮かぶ小さな店で、新たな物語が始まります。主人公は魔女ライラと、その相棒であるキニーです。キニーの力によって、ライラは普通の料理ではなく、星明かりや混沌、そして神秘的な宇宙エネルギーを込めた“宇宙料理”を作ります。その料理は、普通の客だけでなく、名状しがたい存在すらも満足させることができるのです。

──本作の体験版を最後までプレイした時点では、作中の「キニー」はストーリーに登場するだけのキャラクターではなく、食材を除去したり特殊効果を発揮するレリックとして入手できるなど、ゲームシステム内での存在感もあります。このような体験もタイトルに込められているのでしょうか?

Young June氏:
キニーは、ゲームシステムにも深く組み込まれた重要な存在です。食材の除去、コイン、レリック、客などのシステムとも関わっており、UIを含めゲーム内のほとんどの要素に自然に登場します。つまりキニーは設定上重要なだけでなく、プレイヤーのゲーム体験の中にも継続的に存在しているキャラクターなのです。

そのため、タイトルにキニーを含めることで短期的にはマーケティング上の不利がある可能性は理解しつつも、それでも入れることが重要だと私たちは考えました。そしてパブリッシャーとの再協議を経て、ローカライズ戦略と開発側の世界観構築、その両方を反映した最終タイトルとして、「キニーと名状しがたいおでん屋」に決定しました。

──本作は日本語ローカライズに対応しており、絵本のような温かみのあるピクセルアートや、ラヴクラフトとクトゥルフ神話の要素も相まって、より日本のプレイヤーに刺さる作品になっているかと思います。日本のプレイヤーへの想いやメッセージはありますでしょうか?

Young June氏:

まず何より、日本のファンの皆様に心より感謝申し上げます。ウィッシュリストやデモ版のプレイデータを見ると、日本のプレイヤーの皆様が非常に大きな割合を占めていることが分かります。韓国で制作されたゲームであるにもかかわらず、私たちの予想以上に日本で注目していただけていることを、とても驚きつつも本当に嬉しく感じています。開発期間中、私たちは日本のファンの皆様から寄せられる応援レビューやSNSでの反応、さまざまなフィードバックを継続的に読ませていただいています。その一つひとつが、私たちにとって大きな力となり、完成版をさらに良い作品にしたいというモチベーションにつながっています。

振り返ってみると、私たち開発チームの多くは幼い頃から日本のアニメやゲームに触れて育ってきました。今でも多くの日本コンテンツを楽しんでいます。そのため、そうした体験の中で育まれた感性や好みが、自然とこのゲームにも反映されているのかもしれません。もしそうした部分が日本のプレイヤーの皆様にも届いているのであれば、これほど嬉しいことはありません。

──最後に、リリースに向けた今後の展開を教えていただけますか?

Young June氏:
現在、私たちは完成版に向けて、さらに多くの食材、より多彩なデッキビルドの組み合わせ、そして一段と奇妙で魅力的な客たちを追加しながら、鋭意開発を進めています。また、6月にはデモ版の無料アップデートも予定しています。リリースを待ってくださっている皆様に、ひと足先に新しい楽しさを体験していただけるよう準備していますので、ぜひ楽しみにしていてください。皆様の期待に応えられるよう、より楽しく洗練されたゲームをお届けできるよう全力を尽くします。これからも、キニーとライラ、そして宇宙の大鍋をめぐる奇妙で美味しい物語を温かく見守っていただければ幸いです。

──ありがとうございました。

キニーと名状しがたいおでん屋』はPC(Steam)で8月1日に発売予定。体験版も配信中だ。

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Misako Murayama
Misako Murayama

インディーゲームとゲームの雰囲気に合った飲み物を探すのが大好きです。ひそかに女性向けゲームも楽しんでいます。

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