AUTOMATONライター陣が選ぶ 2014年のビデオゲームTOP3・WORST3


次世代機の登場により激動の1年となった2014年も終わりが近づきつつある。Kickstarterブームの沈静化、Steamのさらなる規模拡大、未完成の大作ゲーム続出など、今年もさまざまなことがあった。普段は斜め見下ろしの視点からこれらの現象を斬るAUTOMATONのライターたちも、一皮剥けば読者と変わらぬゲーマーである。「AUTOMATONライター陣が選ぶ 2014年のビデオゲームTOP3・WORST3」では、ライターたちの個人的TOP3・WORST3を紹介する。

おもしろいゲームを「おもしろい!」、つまらないゲームを「つまらない!」。思いのたけをぶつけたこの一本、ぜひともご覧いただきたい。

 


Shuji Ishimotoの2014年TOP3

 

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  • TOP1: 『The Vanishing of Ethan Carter』

The Vanishing of Ethan Carter』は、簡単に言うならば、ミステリーアドベンチャーゲームで『Dear Esther』をやろうという発想だ。3Dのゲームワールド内に複数の殺人現場が存在し、プレイヤーは探偵Paul Prosperoとして事件の真相を探りつつ、依頼人の少年Ethan Carterを追う。ゲーム最大の魅力は、捜査シーンの美しいビジュアルでもなければ、どんでん返しが待ちうける楽しいオカルト探偵物語でもない。殺人現場から殺人現場へ歩む、空白時間の"余韻"だ。哀愁漂う秋の美しい風景と、主人公の静かな独白が、ゲームを深みのある作品へと昇華している。2014年の私のTOP1であるとともに、今年もっともホットコーヒー飲みながらプレイするのが似合う作品でもあるだろう。それに『Dear Esther』とくらべれば単純明快だ。

 

  • TOP2: 『まもって騎士 姫のトキメキらぷそでぃ』

レトロゲームファンをエレクトさせるために生みだされたポルノ。もちろん『Shadow Warrior』みたく女体が出てきて、大きいお友達を喜ばせるわけではない。そんな下品なものではない。ただ満を持して登場した『まもって騎士』の続編は、8ビットゲームとそのファンへのラブレターであり、こんな熱烈な恋文をもらって、恋に落ちないファンなどいないということだ。

 

  • TOP3: 『Wolfenstein: The New Order』

不満もあるが、オールドスクールシューターが好きならば、本作のどこかが気に入ってしまうゲームだ。あまりに酷く陳腐な感動ストーリーで泥を塗りたくっても、アイテムを探しだしてゴリ押しする感覚や、ラスボスとのマッシヴで馬鹿な戦いは隠しきれない。ステルスやカバーは悪くなかったが、別になくてもよかっただろう。むしろ新旧FPSのデザインが混ざりあって、邪魔に感じた。つまり、もうちょっと子供になれ『Wolfenstein』。次回作で君に求めるの は、英雄ヅラしたトリプルA級タイトルのイケメンではなく、もっとシンプルにナチス兵をぶっ殺す君だ。

Shuji Ishimotoの2014年WORST3

 

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  • WORST1: 『Areal』

Kickstarter やSteam早期アクセスを利用して、実力不足で退散するデベロッパーが「詐欺師!」と糾弾されているが、その言葉は『Areal』に向けるべきだろう。私の記憶では、一国の首相からメールをもらった偽りの発表をしたゲームは『Areal』だけだ。現在は『STALKER Apocalypse』と呼ばれる新作で60万ドルを集めようとしており、もう好きにしてくれという感じである。

 

  • WORST2: 多数登場したシミュレーターゲームフォロワー

ヤギと医者に連れられて増産されたシミュレーターゲーム。いくつか興味深いものもあったが、ほとんどはクソの山だ。

 

  • WORST3: 『Watch Dogs』

サプライズでUbisoftから発表され、ゲーマーたちが鼻息を荒くするなか、私はこのゲームのどこが面白いのかよく理解できなかった。そこまでオープンワールドゲームが好きではないからかもしれないと思ったが、『Grand Theft Auto』や『The Elder Scrolls』、『Fallout』に『Just Cause』、それに『Sleeping Dogs』も好きなのだから、それは理由にならないだろう。グラフィックがダウングレードしたことよりも、電子機器のハッキングが楽しくないのがつらい。オープンワールドゲームなら、他人に様々ないたずらをして、楽しんだりできそうなものなのに。ともかく数時間プレイしてわかったのは、悪い奴じゃないけど一緒に居ても楽しくないクラスメイトみたいなこのシカゴを、私は愛せそうにはないということだ。

 


Koji Fukuyamaの2014年TOP3

 

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  • TOP1: 『METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES』

MGS V:GZ』は『MGS V』のプロローグだけを抜き出したゲームなのだから「年間ベストゲームを決めるとき、他の完結したゲームと並べて選出するべきではない」という意見があったとしても、それはもっともなことだ。しかしこのゲームの圧倒的な創造性にたいして、それを無視することはとても賢明な判断とはいえない。クライマックスの「暴力のための暴力表現」はゲーム史上に残る、胸がしめつけられるものだ。次世代ゲームの幕開けはここからはじまった。その幕開けの開始音はピストルではなく、爆弾から発せられた轟音だったのだ。

 

  • TOP2: 『P.T.』

最初に断っておこう。私は小島プロダクションの熱烈な信奉者ではない。しかし、私にとってこの『P.T.』こそ2014年で最も挑戦的で、実験的なゲームの1つであることは疑いようがないのだ。高い難易度の謎解きは、動画配信を通じた集合知をはじめから考慮にいれたものであったという。この謎に包まれたゲームの正体は小島プロダクション製作の『Silent Hills』のPlayable Teaser『P.T.』であった。ホラーゲームの最高傑作が誕生した瞬間であり、新しいゲームのあたりかたを示すものであった。

 

  • TOP3: 『The Vanishing of Ethan Carter』

このゲームを私が2012年で最も重要なゲームと考える『Dear Esther』の亜流とみなすことは間違いだ。H・P・ラブクラフトの南極を舞台にした小説『狂気の山脈にて』から影響を受けたウクライナのホラーゲーム『クリオスタシス』は、『Dear Esther』にも影響を与えている。そしてこのゲームにもその影響は濃厚だ。おそらくラブクラフト本人をモデルにしたであろうキャラクター、ランドルフ・カーターからも着想を得ている。『The Vanishing of Ethan Carter』はラブクラフト的世界の二重三重の、豊かな邂逅なのだ。

 

  • 次点: 『ウルフェンシュタイン:ザ ニューオーダー』

シングルプレイに特化したコンセプトを打ち出し、開発のMachineGamesの第1作ながら、このゲームには老舗『ウルフェンシュタイン』の看板を掲げるプレッシャーなど微塵にも感じられない。このゲームにあるのは、FPSを刷新するなどという大それた野心をもたない謙虚さ、そして王道なFPSををきっちり仕上げる自信だ。これは『メトロ ラストライト』の全体主義の意匠、シューターとステルスのバランス感覚、主人公の独白を取り入れた成果でもあるだろう。このような職人的ゲームを軽んじてはいけない。『ウルフェンシュタイン:ザ ニューオーダー』は、作家性や新しさとは離れたところで、ちゃんと評価しなければいけないゲームの1つだ。

 

Koji Fukuyamaの2014年WORST3

 

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  • WORST1: 『シーフ』

  • WORST2: 『KILLZONE SHADOW FALL』

  • WORST3: 『サイコブレイク』

  • 次点: 『Sniper Elite III』

ゲームバランスに問題があっただけで、そのゲームを今年最悪のゲームに選出するのには迷いがある。『Sniper Elite III』は前作にもまして荒削りな出来になってしまった。しかしコンセプト自体は面白く、続きがあるなら応援していきたいゲームだ。今年最悪の名にふさわしいゲームとは、プレイしていてどうゲームをいじったとしても面白くなりそうにない、つまり開発現場の苦境や焦燥感さえ目に浮かぶような悲惨なゲームだろう。しかもそのゲームの主人公(仮に名前をギャレットとする)が、ゲームのなかで「人殺しはいけない」と言い放ち、自身は背後から人を強打することに何も違和感を感じないのだったら、もはやそんなゲームは絶望的だ。少ないボリュームを補うため「15時間以上掛けてゲームをクリアした」なんて実績があったら……そんなゲームがあったら迷わず今年最悪のゲームに選ぶだろう。今年最悪のゲームは『シーフ』だ。

 


Rokuro Eyamaの2014年TOP3

 

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  • TOP1: 『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』

2013年のタイトルだが、昨年の企画「[GGGotY] UnFreeMan編」の際に「前年の12月~本年の11月発売タイトル」から選出した関係上これが選考から漏れており、今年『神トラ2』ほどのめり込んだタイトルはとうとう発売されなかった。2013~2014年の通年で見ても『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』が私のナンバーワンである。

あくまで2014年内でのタイトルで見た場合この枠に収まるのは『Forza Horizon 2』だ。普段さして車に興味のない私の考える「車のあるかっこいい風景」のほぼ全てが本作には詰まっている。足りないのは雪化粧だけだ。

 

  • TOP2: 『ドンキーコング トロピカルフリーズ』

「横方向に進んでゴールを目指すだけ」というゲームにもまだまだギミックやアイデアの余地は残されているという熱量を感じたタイトル。

 

  • TOP3: 『タイタンフォール』

昨年のE3で見せたコンセプトを見事に実現したRespawn Entertainmentの情熱に最大級の賛辞を贈りたい。もう少しランク上げ以外にやることがあればBEST1は間違いなかったろう。

 

Rokuro Eyamaの2014年WORST3

 

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  • WORST1: 『KNACK』

本作に関しては過去にインプレッション記事を執筆したのでそちらを参照していただきたい。最新鋭のゲーム機に降臨した、3世代前のバトルアクションである。

 

  • WORST2: 『Destiny』

あまりにも空虚な体験と薄っぺらな世界。アップデートで世界が拡張されコンテンツが追加されたのかもしれないが、それを確認するために再度ゲームを起動させるほどの求心力を本作は持ち合わせていないのだ。

 

  • WORST3: 『Watch Dogs』

本来ここに載るようなタイトルではないのだが、UBIが喧伝し自ら設定したハードルに比べると、実際の本作はあまりにも平凡すぎた。

破綻しているような箇所は殆ど無いのだが、他のオープンワールドゲームより輝いている箇所もほとんどない。本作が目指したのはそうした「よくあるAAA級タイトル」ではなかったはずだ。

 


Tomohiro Noguchiの2014年Top3

 

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  • TOP1: 『Shovel Knight』

超大作「The Last of Us」と「GTA5」が一度にリリースされた2013年に比べると、2014年は日本ではPS4もまだウォーミングアップといった印象で、正直踊り場の年だったように思う。そんな中、自分が物足りなさを感じずにいられたのは『Shovel Knight』があったからだ。横スクロールアクションとしての完成度は、リスペクト元であるロックマンや悪魔城ドラキュラといった歴代のマイルストーンに勝るとも劣らない。「ドット絵のゲームっていいなあ」としみじみ感じさせてくれる、温かい家庭料理のようなタイトルだった。こういうのでいいのだ。

ではレトロゲーマーの懐古趣味だけに甘んじているタイトルかと言うとそうではない。インディーという新たな畑を得て、横スクロールアクションの傑作がどんどん収穫されている近年のトレンド上に花開いた、2014年らしい作品であることも忘れてはいけない。

ゲームが進化する方向は、最先端を追うばかりが正解ではない。今後の超大作への期待はもちろんあるし、現実と見紛うほどのリアルな体験もゲームの大きな魅力だが、本作は決してそれだけがゲームではないという進化の多様性を、非常に理想的な形で提示してくれた一本だ。コンシューマ機への移植もまだまだ続いているだけに、8bitスタイルの新たなるアイコンとして、2015年も引き続きその輝けるショベルを頭上に掲げ続けてほしい。Shovel Justice!

 

  • TOP2: 『スカルガールズ』

ずいぶん以前にリリースされた作品だが、2014年にアップデート版の『アンコール』が発売されたということで、2014年のランキングに入れさせてもらった。『Shovel Knight』と並び、古い革袋にも新しい酒を盛る価値があることを証明した快作だ。

対戦格闘ゲームという日本発祥のネタを海外で結実させたという背景は、近年のハリウッドでの「パシフィック・リム」や「ゴジラ」の成功を彷彿とさせる。海外のインディータイトルとして始まり、2015年には日本のアーケードへ凱旋上陸を果たすというのも嬉しいニュースだ。この先「ヴァンパイア」が復活しなかったとしても、我々には『スカルガールズ』がある。

日本のゲームシーンの閉塞化が叫ばれる昨今だが、オタク的な濃さと格闘ゲームとしての爽快感に満ちた本作をプレイしていると、日本のゲーマーと海外のゲーマーの間には大きな差などなく、そこには言語の壁"しか"存在しないのだと思わず反論したくなる。世界にはオタクと、それ以外の人々がいるだけなのだ。

この場を借りて、Reverge Labsから日本のオタクカルチャーへの愛はしっかり受け取ったと返礼しておきたい。今度日本に来るときはぜひ教えてほしい。君たちのフェイバリットアニメ「フリクリ」のロケ地を案内しよう。

 

  • TOP3: 『DARK SOULS II』のDLC

『スチームワールドディグ』、『The Vanishing Of Ethan Carter』、『Banished』、『朧村正』のDLC完結、など選びたいタイトルは多かったが、結局一番長く付き合ったこの作品を選んだ。賛否両論あるこのタイトルがなぜ3位に食い込んだのか、その説明自体が2014年のアップデートとDLCの現状を象徴しているからだ。

正直この続編は、マスターピースである前作「DARK SOULS」に比べると、どうしても見劣りする内容だった。冒険感の薄いステージ群、高難易度というより高ストレスなゲームバランス、そしてなぜか塔の上に広がる溶岩の城。もちろんアクションPRGとしては十分な出来だが、それだけ前作という偉大な兄の影が大きかったのだ。

そんな不憫な弟だったが、追試(DLC)でほぼ満点を取るという快挙を果たした。前作、前々作とも違う独自性のあるステージ、手応えを感じさせてくれるステージギミック、満足度の高いボス戦闘。よくぞこれだけ盛り返した、と喝采を浴びせたいところだが、同時に「最初からこの出来だったら……」とつぶやいてしまう我々ダクソ勢は本当に罪深い。

ユーザーからのリクエストを反映できるチャンスであるアップデートとDLCだが、出来がよかったらよかったで本編への不満が再燃するのがなんとも皮肉だ。では2015年リリースの全部入り『DARK SOULS II SCHOLAR OF THE FIRST SIN』で円満解決かというと、これはこれで一度に遊ぶ量としては多すぎるという余計な心配があるのが悩ましい。かくして後継作『Bloodborne』への期待のハードルはますます上がるのである。

 

Tomohiro Noguchiの2014年WORST3

 

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  • WORST1: なし

  • WORST2: なし

  • WORST3: 『コープスパーティーBLOOD DRIVE』

プレイ本数がさほど多くない自分がワーストを選ぶのは少々苦しい。おまけにこのタイトルをここに出すのは個人的な事情で気が引ける。というのもある別の仕事でプレイすることになった作品だからだ。そちらの関係者には本当に申し訳ない。が、これを挙げる。

内容を説明すると、ねんどろいどみたいな2頭身の中二病キャラが廃校をうろうろし、同じく2頭身の幽霊と鬼ごっこをし、ひたすらフラグ回収をするゲームである。しかもローテクなのにロードが長い。かといってワースト1位や2位に推すほどの負の爆発力もない。なんとも始末に困る。怖くもなく、登場人物には感情移入できず、快適でもないホラーゲームのどこを楽しめというのか。ダッシュぐらい制限なしで自由に走らせてほしい。

いまのところPlaystation Vita普及のきっかけになっていないこの作品に対しては、せめて成仏することを祈るばかりだ。「ギャー」「グェー」とやたら叫ばされる声優さんたちは本当に大変だっただろう。

 


Hikaru Nomuraの2014年Top3

 

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  • TOP1: 『Endless Legend』

ファンタジー4X-TBSの決定版。ファンタジーファン、ストラテジーファンは本作を見逃してはならない。メーカーの特徴に、数か月ごとに無料で配信される小型拡張パックがある。前作の『Endless Space』は計7回無料でリリースしており、本作も同様に手厚いサポートが期待できる。すでに、11月24日の無料小型拡張パック『Visions of the Unseen』で、バグフィックス、AIとユーザーインタフェースの改良にくわえ、新種族、新クエスト、新アイテムが追加された。ファン冥利につきる一作だ。

 

  • TOP2: 『The Last Federation』

宇宙SFドラマシミュレーター。4XストラテジーするAIプレイヤー国家同士の仲を取りもち、惑星連合設立を目指す。AI同士の相互作用で自律的に物語が生成され、全種族生存という高い理想は波乱の展開にのみこまれる。リリース当初はユーザーインタフェースと戦闘に不満だったが、11月14日リリースの拡張パック『Betrayed Hope』で改良された。そこに至るまでの、約61000語のリリースノートは開発とコミュニティの勝利だ。

 

  • TOP3:『Nidhogg』

ランニングブシドーブレード。敵を倒すのではなく、ゴールにたどり着けば勝利だ。一撃死のスリルにくわえ、戦わずにやりすごす選択肢が攻防に深みをあたえた。対戦アクションゲームの要素を最小限まで突き詰めたプレイフィールがレトロゲーム調の見た目とマッチし、2秒でリスポンし決闘が繰り返されるハイテンポに脳全体が興奮する。

 

Hikaru Nomuraの2014年WORST3

 

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  • WORST1: なし

  • WORST2: なし

  • WORST3: なし

 


Sjinji Sawaの2014年TOP3

 

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  • TOP1: 『OlliOlli』

開発元: Roll7

ビジュアルや選曲のセンス、すべてがオシャレに感じた。難度の高い作品ではあるが、ハイスコアをたたき出すことの快感に溺れてしまった。Skateがファッションの一部になったころに発売されていれば、「Supreme」のキャップをかぶった主人公が、「KAWS」のグラフィティをバックに滑る姿を見られたに違いない。もちろんサウンドは「Mo' Wax」で。もしも今が15年前なら、ゲームに興味を持たない人たちも惹きつけられただろう。

 

  • TOP2: 『Dragon Age: Inquisition』

開発元: BioWare

クリアするまでにかかったのは60時間ほどだろうか。それでも遊びつくせないほどのコンテンツがあり、マルチプレイもあるのだから驚かされる。ただ単純にボリュームをふくらませたのではなく、すべて意味があるものばかり。現実世界とはかけ離れたハイ・ファンタジーにあふれており、時間が許す限り遊び続けてしまう魅力がある。いくつかのバグがあり、好きになれない部分もあったが、気が付けば2周目をプレイしている自分がいる。『Dragon Age: Origins』で感動し、『Dragon Age II』で落胆した人は、"おかえり"と言いたくなったはずだ。

 

  • TOP3: 『Bounden』

開発元: Game Oven Studios

恋人と、友人と、会社の同僚でもいいだろう。誰かと一緒に踊れば、「楽しい」をその場で共有できる。相手と対戦するのではなく協力するダンスゲームであり、どちらか片方が悲しみを味わうのではなく、2人ともが笑顔になれる素晴らしい作品だ。たとえタコ踊りになったとしても、それはそれで楽しいだろう。

 

Shinji Sawaの2014年WORST3

 

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  • WORST1: 『Dungeon Keeper』

開発元: Mythic Entertainment

昨年リリースされた『Heroes of Dragon Age』に続き、ガッカリしたファンは多いだろう。これ以上は何も言いたくない。

 

  • WORST2: 『Gems of War』

開発元: Infinite Interactive

コメント:『Puzzle Quest』と『Puzzle Kingdoms』の良い部分をミックスしたパズルRPG……のはずだった……。ふたを開けてみれば、「課金でレアリティの高いカードを手に入れる」以外の楽しみがなく、勝敗をコントロールするCPUと戦い続けるだけである。対戦はもちろんPay to Winだ。しばらくプレイすると、回し車で遊ぶハムスターの気分になれた。

 

  • WORST3: 『Mountain』

開発元: David O'Reilly

見せ方や売り方は巧妙だったが、美しいビジュアルを持つ本作をゲームだとは思えなかった。窓を開けて山を眺めているほうが有意義な時間を過ごせた。

 


Takumi Nangoの2014年TOP3

 

  • TOP1: 『Banshee's Last Cry』

パブリッシャー: Aksys Games
発売日: 2014年1月24日
プラットフォーム: iOS/Android

Banshee's Last Cry』は、iOS/Android用アプリ『かまいたちの夜』の英語ローカライズ版だ。往年のサウンドノベル作品が約20年の時を経て初めて海外にローカライズされた。ゲームそのものというよりローカライズに惚れてしまったため、日本語版ではなくあえて英語版を選ばせていただいた。

本作ではゲーム内の一部要素が欧米向けにカルチャライズされている。まずは『Banshee's Last Cry』という名称。日本語版のタイトル名「かまいたちの夜」はご存知のとおり日本の妖怪「かまいたち」にちなんでいる。英語版では英語圏の文化を考慮し、アイルランドやスコットランドの伝承に登場する死の妖精「バンシー」がテーマとなった。ゲーム中、ある登場人物によってかまいたち伝説が語られるシーンがあったが、英語版では同じ場面でバンシー伝説について語られる。

 

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次に、本作の舞台となるペンション「シュプール」もローカライズされている。日本語版では、長野県の白馬村に実在するペンション「クヌルプ」で写真を撮影し、それを取りこんで背景として使っていた。『Banshee's Last Cry』では日本語版の背景をそのまま用いるのではなく、別のペンションで背景を最初から撮影しなおしているのだ。

英語版のペンション「The Snowflake Inn」のモデルは、カナダのウィスラーにある「アルパインロッジ」。日本語版のクヌルプと同様、スキーリゾート地にある宿泊施設だ。アルパインロッジのあるウィスラーは2010年にバンクーバーオリンピックの競技がおこなわれた都市である。冬季オリンピックの会場になったという点において、クヌルプのある白馬村と共通している。カナダに場所を移したものの日本語版の舞台の設定や雰囲気はきちんと踏襲されているのだ。

 

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筆者自身『かまいたちの夜』シリーズのファンであり、日本語版のペンションのモデルとなったクヌルプには宿泊した経験がある。このアルパインロッジもいつか訪れてみたい。アルパインロッジの公式サイトには日本語ページも用意されている。「ロッジの標準語は英語と日本語」との記述もあるため、日本人客でも安心して宿泊できそうだ。

ただ、細かい点を挙げれば、舞台となるペンションが変更されたことで不自然になった場面もある。たとえば、犯人が窓ガラスを割った手口を主人公が推理するシーン。ネタバレになるので詳述は控えるが、英語版の客室の窓は形状やサイズが日本語版と大きく異なるため、主人公が推理した方法で窓ガラスを割るのはほぼ不可能だと推測する。欲をいえばこの点もローカライズで補完してほしかったが、そこまで要求するのは酷だろう。

 

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他に特筆すべき点として、本作ではキャラクターもローカライズされている。主人公の名前が「Max」になっているなど、英語圏の文化に合わせて各人の名前や設定がアレンジされているのだ。中でも注目に値するのはアメリカ版香山誠一こと「Chase Buchanan」。日本語版の香山誠一は典型的な関西人キャラクターであったが、英語版のBuchanan氏はコテコテのアメリカ南部人だ。関西弁ではなく強いテキサス訛りでしゃべる。彼のテーマ曲も『わしが香山や!~男の大往生~』ではなくウエスタン風の軽快な楽曲が新たにつくられているのだ。

このように、『Banshee's Last Cry』のローカライズはiOS/Android用タイトルとは思えぬほど手が込んでいる。名作にふさわしいローカライズといえよう。『かまいたちの夜』の英語版というよりも新規タイトル『Banshee's Last Cry』として楽しむことができた。サウンドノベルの新作を待ちわびているサウンドノベラー諸氏は、英和辞典を片手にこの装い新たなペンションを訪れてみてはいかがだろうか。

※なおTOP1のレビューを書いて力尽きてしまったため、TOP2~3、WORST1~3、「2015年もっとも期待する新作」(来年掲載予定)は割愛させていただく。どうかご容赦願いたい。

 

  • TOP2: なし

  • TOP3: なし

 

Takumi Nangoの2014年WORST3

 

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  • WORST1: なし

  • WORST2: なし

  • WORST3: なし

 


いかがだっただろうか。一癖も二癖もあるAUTOMATONの面々も、一家言あるとはいえ化けの皮を剥がせば一人のゲーマーである。はたして2015年はどのようなゲームが登場し、我々を楽しませてくれるのだろう。新たに産まれる最新作たちは、はたして我々を楽しませてくれるだろうか。