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NEOWIZは8月6日、『Lies of P:コンプリートエディション』をNintendo Switch 2向けに発売した。今回は先行プレイに基づき、ソウルライク作品にほとんど触れたことのない筆者が本作でソウルライクに挑戦し、物語の深みや成長の醍醐味を味わった感想をお届けしよう。

『Lies of P』は、豪華絢爛のベル・エポック時代を、ダークなピノッキオ物語とともに美しく残酷に描くソウルライクアクションRPGだ。2023年にPC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売され、高い評価を獲得。大型DLC「Overture」を含めて全世界累計販売数400万本を突破している。

そんな『Lies of P』が、本編の前日譚を描いたDLC「Overture」を同時収録した『Lies of P:コンプリート エディション』として新たに登場する。このたび弊誌は本作を先行してプレイする機会に恵まれた。本稿では、本編とDLCを通して感じたことを、筆者の視点でお伝えしていきたい。

なお筆者はソウルライクをまったくと言っていいほどプレイしたことがない。厳密にはいちど挑戦しようとして“門前払い”を食らって以来、プレイしようとは思えなかった。高難度ゲームと称されることも多いジャンルであり、魅力となる部分が筆者がゲームに求めるものとは根本的にずれているのではないか、といった印象さえ抱いていた。頑丈な鎧をまとった屈強な戦士が、返り血を浴びながら、一筋縄ではいかない強大な敵を倒していく。そういったオーソドックスなソウルライク作品の表現を見た時点で、少しおののいてしまう。そんな筆者は、当然本作を低難易度モードの「蝶の導き」でプレイした。ソウルライクは食わず嫌い、かつ初心者だったのもあるが、低難易度なら腕に自信が無くてもスムーズにクリアできるだろうと侮っていたのだ。


ソウルライク初心者が惹かれた、美しく残酷な「嘘」の世界

まずは本作の舞台設定やストーリーから紹介しよう。舞台となるクラット市は、かつて革命的な人形産業で栄華を誇っていた。しかし人形たちの暴走により突如崩壊してしまう。殺人人形がうごめく血塗られた街で、プレイヤーはゼペットの人形として目覚め、案内役であるジミニーとともに謎の声に導かれていく。ゼペットの人形として描かれる本作の主人公は、人間の振る舞いはできるものの、感情はまだ育っていない。そのためプレイヤーは「嘘」をつくことによって主人公の人間性を獲得していくことになる。「嘘」を言葉にすることは人間特有の行為だからだ。

主人公はさまざまな背景を抱えた人物たちと出会い、その問いかけに「嘘」をつくかどうかによって物語の行方が変化していく。壊れた人形を自分の子どもと思う女性にありのままの真実を伝えるのか、体が硬化する石化病に侵された老婦人を思いやり、あなたは今でも美しいと「嘘」をつくのか。プレイヤーは時に優しく残酷な決断をすることになる。また一度した選択は変えることはできない。この独自の「嘘」システムが、人間らしく成長していく主人公への愛着を生み、物語の深みへと引き込んでくれるのだ。……と、ここまで説明するだけでもすでに筆者がソウルライク作品に抱いていたイメージと印象が違う。ソウルライクといえば高難度アクションというイメージばかりが染みついていたが、「蝶の導き」でプレイできたこともあってか、アクションとは異なる本作の持ち味をさっそく堪能していった。


直感に任せるのもよし、突き詰めるのもよしのビルドシステム

しかし、物語を進めていく中で、ソウルライク初心者の筆者が最初に直面したのがビルドシステムだ。本作では敵たちを倒した暁には「エルゴ」が手に入る。エルゴは経験値として主人公のレベルアップなどに使えるほか、新しい武器やアイテムを購入する通貨としても利用できるため、いかに振り分けるかが攻略のカギともなっている。本作のビルドシステムでは、義手を強化できるリージョンアーム、さらに多彩な武器や装具、補助アイテムといったさまざまな形でカスタマイズが可能だ。熟練者においては、武器の調合や主人公の潜在能力を解放できるP機関システムによって、ビルドをより突き詰めることもできるだろう。

ただソウルライク初心者の筆者はどこから手を付ければいいか分からない。そこでゲーム内のガイドを見ながら、主人公の見た目重視でひとつずつカスタムしていくと、実はシンプルなビルド設計であることに気づいた。本作では武器とリージョンアームに加え、複数の防御パーツやアミュレットを組み合わせて主人公の性能を調整できるものの、右も左もわからぬままビルドの方向性に頭を悩ますようなことはない。初心者でも迷いにくい作りになっている。

また、ほとんどの武器は専用アイテムによって強化できるため、見た目や使用感で選べるのも嬉しいポイントだ。ステータス強化では、序盤は自身のプレイスキルを補うために生命力や、攻撃力の強化(動力など)を優先したり、後半は性能が高く重量のある補助装備をつけるために積載力を上げていくなど、これまでの経験を生かして主人公を育てていくことができる。ゼペットが丹精込めて主人公を作り上げたように、プレイヤーもビルドシステムによって主人公に成長と個性を与えられるのだ。

さらにゲームを進めていくと、主人公をドレスアップできる衣装も揃ってくる。衣装に特殊効果はないので、武器やリージョンアームと組み合わせて気軽にコーディネートを楽しめるのも本作ならではだ。Nintendo Switch 2版においてもグラフィック表現は豪華で、衣装の質感や布の動きまで丁寧に描かれており、戦闘中にもゼペットの人形の端正でどこか物憂げな佇まいが際立つ。中でも筆者のお気に入りは、ベル・エポックを思わせる燕尾服とレイピア、盾型リージョンアーム「アイギス」の組み合わせだ。燕尾服のひらみやシックなレイピアでエレガントさを出しつつ、盾形のアイギスを添えることで騎士のような勇ましさも両立できる。こうした自慢の衣装でひたむきに戦う主人公を見ていると、いっそう愛着が湧いてくる。「服は人を作る」といったように、着替えることで、主人公の印象や行動、気分さえも変えることができるだろう。


主人公の成長とともに磨かれる、剛柔一体のプレイスタイル

そうして主人公への愛着が深まっていく中、ゲームを進行すると当然ながら敵も手強くなってくる。緊張感のあるボス戦では、低難易度といえども判断ミスが命取りとなるのだ。だんだんと人間のように成長していく主人公が、強力な攻撃で倒れてしまうことに心が痛んだ筆者は、ここで一層強くなることを決意した。筆者のこれまでの戦闘スタイルは、敵の攻撃を避けつつ、明確な隙だけをついて反撃するといったヒット&アウェイ方式だった。

しかし、アクションゲームに不慣れな筆者ではこの攻撃スタイルでは十分なダメージを与えることができないまま被弾が増えて、じり貧になりがちであった。ただ攻撃を避けるだけではなく、敵のモーションを見極めて隙の大きさにあわせて決定打を次々と打ち込んでいくための観察力が筆者には足りなかった。とはいえ意識的に主人公の基本的な動きや武器の違いによるモーション変化などにも集中して目を当てていくと、敵の攻撃やわずかな隙を見逃すことなく対処することができるようになった。ソウルライク攻略の一歩は観察による学びなのだと実感した瞬間であった。さらに戦闘中は、セットした二つの武器を即座に入れ替えることができるので、動きが遅く攻撃力が高い敵には素早い動作の武器を、動きが早く隙が少ない敵には重量感のある武器で渾身の一撃をといった、状況次第でプレイスタイルを変更する戦法も有効だと気づいた。

そして本作ではリージョンアームを活用することで、敵を引き寄せて1対1の戦闘に持ちこんだり、炎や雷といった状態異常を付与することもできる。こうして丁寧に敵と対峙していくと、不思議と敵の細かなモーションまで見えるようになり、ついにジャストガードまで習得することができたのである。ジャストガードや攻撃を重ねて敵の体勢を崩し、好機にチャージ攻撃を当てれば、グロッキー状態から強力な致命攻撃へつなげられる。この達成感といったら、思わず主人公とハイタッチしたくなるほどの喜びである。こうしたソウルライクならではの魅力は知識としてもっていたが、実際に体験してみるとこれまで食わず嫌いしていたことが悔やまれる。ただ低難易度やビルドシステムなどの取っつきやすさと、謎めいた魅力のある主人公や「嘘」を軸にした物語などに強いフックがある本作だからこそ、筆者はその魅力までたどり着けたのだろう。

そうしてプレイしているとふとあることに気づく。主人公の「呼吸音」が聞こえるのだ。本作においてフィールドに流れる音楽は控えめで無音な場面も多い。聞こえるのは殺人人形のきしむ音や、壊れた劇場のスピーカー音といったものだけだ。そして主人公は最初は呼吸音すら発しないため、そうしたステージでの静寂が一層引き立てられている。ところが人間性が成長することで、主人公は呼吸やうめき声を上げるようになっていったのだ。これには流石に主人公への愛着どころではなく親心のようなものがあふれてしまった。主人公の鼓動、そして成長を強く感じた瞬間だった。


目の前に広がるベル・エポック芸術とダークな世界観

19世紀末から第一次世界大戦前までのフランスを中心に、文化や芸術が華やかに発展した時代を指す「ベル・エポック」をモチーフとした本作では、豪華絢爛な建物や瓦礫や炎に包まれた街並みが凄艶なグラフィックで表現されており、そのコントラストが鮮烈である。ゴシック建築とステンドグラスが印象的な大聖堂や、ベル・エポック期のヨーロッパを思わせる劇場などは、戦闘中にもかかわらず退廃的な美しさについ目を奪われてしまうことも多い。反面、感情をそぎ落とされた殺人人形や、かつて人間だったモンスターが見せる生命のグロテスクさによって、主人公の無垢な美しさやかつての優美な街並みがより引き立てられているとも言えよう。

各地を主人公とともに探索していくと、運よく生き残った住民が不安や恐怖に駆られて襲いかかってくることもある。しかし、彼らにもそれぞれ物語があり、クラット市に残された誰かの手紙やメッセージから、その切実な背景を垣間見ることができる。

本作において懐疑心を持つのはキャラクターたちだけではない。クラット市崩壊の真相に迫る中で、誰が真実を語り、誰が「嘘」をついているのかをプレイヤーは明らかにしなければならない。先述した通り、キャラクターたちは秘密や謎を抱えている者が多く、拠点となるホテル・クラットの住民も同様である。主人公を導いてくれる存在、たとえば人形たちの動力となる「エルゴ」を操る謎の女性ソフィアや、主人公の制作者であり天才人形職人のゼペットに対しても、徐々に疑いの目を向けてしまうのだ。

本作でプレイヤーは、登場人物たちとの会話で真実を伝えるか、時に相手を思いやった「嘘」を選ぶかを迫られる。そうした選択を重ねる中で、ゼペットの人形には少しずつ人間らしい変化が表れていく。人間性が育っていく主人公を眺めながら、芽生えていく他人への疑念。こうしたプレイヤーの心情の変化も、作品を通して表現される人間の表裏一体さに説得力をもたらしている。

本作からは人間とは切っても切り離せない「嘘」と「成長」というテーマが、物語だけではなくビジュアルや世界観、ゲームシステムのすべてを通して強く伝わってくる。特に「成長」という点では、ソウルライクのシビアな戦闘体験が主人公、そしてプレイヤーの成長に重なっている。プレイスキルから従来のソウルライク作品で“門前払い”されがちであった筆者にとって、低難易度を備えた本作は持ち味を楽しめるまでのハードルが低く、それでいて確かな成長を実感できる手強さもしっかりと兼ね備えていた。筆者にとって本作は、ソウルライクはアクションゲーム玄人でないと遊びづらいといったイメージを覆してくれた作品となった。


伝説の人物とともに過去を紐解く、試練のDLC

なお『Lies of P:コンプリート エディション』はDLC「Overture」が本編と同時収録されており、物語を進めることで解放することが可能だ。クラット市崩壊の前日譚と、本編では断片的にしか語られなかった伝説のストーカーに触れることができる物語となっているので、その体験についても紹介したい。

過去に飛ばされた主人公と案内役のジミニーが目覚めたのは、雪景色のクラット市。殺人人形の代わりに、錬金術師の実験でモンスター化した人間や動物が解き放たれたこの街は、すでに異様な光景を見せている。しかし、太陽に照らされた建造物には純粋な美しさがあった。過去の記憶を辿るジミニーとともに、主人公は伝説のストーカーと呼ばれる女性の痕跡を拾い集めていく。

ここで筆者はまたしても試練に直面する。というのも「Overture」では本編で身につけた立ち回りを改めて試される、歯応えのある敵やボスが待ち受けている。苛烈な敵に倒れそうになる主人公を見て泣きそうになりながらも、ゲーム序盤とは違い、今は一緒に乗り越えてきた冒険の軌跡があると思い直す。本編で主人公とともに成長を遂げた自身のプレイスキルを、このDLCでさらに試すことができると、むしろ挑戦的な気持ちで進んでいくようになっていった。本作を始める前の筆者であれば考えられないほどの成長を感じる。

また本DLCでは、伝説のストーカーである「レア」と一緒に戦うことができる。焦りや葛藤を抱えるレアに寄り添いながらともに立ち向かっていく主人公は、ここまで一緒に成長してきたこともあってとても頼もしく見える。二人の共闘シーンはその迫力と美しさに圧倒されることだろう。新たな武器として弓や鉤爪も登場し、戦闘の幅も広がっている。

「Overture」では物語についても単なる過去編ではなく、本編のピースを埋めていった上で、新たな1ページが開かれるような体験となっている。本編をクリアした後の腕試しや、さらなる真相への追求に最適なDLC内容であった。


高難易度ゲームへの架け橋となる新たなソウルライク体験

高難易度ゲームも一般的になり、ブームを博すソウルライク作品も多い中で、筆者のようにアクションゲームに不慣れなゲーマーの中には作品のビジュアルや世界観に惹かれながらも食わず嫌いとなっているケースは少なくないだろう。『Lies of P』はそんなソウルライク初心者がプレイしても成長していく主人公と共に、自身のプレイスキルの成長を感じられる作品であり、まさにソウルライクの指南書であった。ソウルライクに慣れたプレイヤーでも成長という力強い魅力を、物語と共に堪能できることだろう。『Lies of P:コンプリート エディション』としてNintendo Switch 2にも裾野を広げたこの機会に、新たな世界への第一歩として本作を手に取ってみてはどうだろうか。

『Lies of P:コンプリート エディション』はNintendo Switch 2で8月6日より発売中だ。パッケージ版も10月1日に発売予定だ。

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