『ディアブロ イモータル』の最強装備に必要な課金額は「約7300万円である」との試算。1500万円どころじゃない

 

Blizzard Entertainment/NetEase GamesによるMMOアクションRPG『ディアブロ イモータル』の課金システムについて、批判の声があがっている。先日には、これまで想定されていた「最強装備獲得への課金額」が、数倍に膨れ上がるユーザー試算が投稿され、反響を呼んだ。

『ディアブロ イモータル』は、ハクスラアクションRPGの金字塔ともいわれる『ディアブロ』シリーズの最新作。今月よりiOS/Androidにて配信されているほか、PC向けにも現在オープンベータとして提供中だ。本作では、基本プレイ無料方式を採用。そのかわりに少額課金システムが導入されている。ただ、本作のそうした方針にはファンからの懸念の声もあった。今までの『ディアブロ』シリーズが買い切り方式だったためだ。キャラ強化に没頭するのが魅力の同シリーズでありながら、「キャラ強化に重い課金が必要になるのではないか」との懸念を受けたのである。


一方で、Blizzard Entertainmentはそうした懸念に対して公式発表で回答。「ゲームプレイ優先」を掲げ、同シリーズの核となる「悪魔を倒して装備を手に入れる」というゲームプレイを邪魔することない、公平と感じられる課金要素にしたいと伝えていた。また、「装備を手に入れる唯一の方法はプレイすること」である点も非常に重要としていた。2年前の発表ではあるものの、戦闘と強化を繰り返すコアゲームプレイの楽しさに影響しないような課金実装を、方針として伝えていたのだ。

しかし、本作がリリースされた今、多くのユーザーはそう感じてはいないようだ。というのも、Metacriticにおける本作iOS版のユーザーレビューは、記事執筆時点で5779件が寄せられ、全体ユーザースコアは0.4点。10点満点中の数値である。PC版もほぼ同様に、レビュー4303件で全体ユーザースコア0.3点だ。そして、ユーザーの批判レビューのほとんどが「課金要素がひどすぎる」と非難する内容なのだ。

本作の課金要素の調整具合を示す例として、前日話題になったのが「キャラクター強化要素である宝石を最高の状態にしようと思えば、11万ドル(約1500万円)ほどの課金が必要になる」との試算だ(Game Rant)。こちらはYouTuberのBellular Newsによる計算であり、インパクトのある金額とともに各メディアでも報道され、ユーザーの反響を呼んだ。


それほど多額を必要とする宝石とは、一体どのようなものなのだろうか。初代を除く『ディアブロ』シリーズには、装備に宝石を挿入して、性能を付与するシステムがある。『ディアブロ イモータル』の宝石システムも、それを踏襲している。宝石のなかには、一般的に手に入って効果もありふれたノーマルの宝石のほか、特殊な効果などをもつレジェンダリー宝石が存在する。そして、このレジェンダリー宝石の入手手段は、本作では課金を除いてかなり限られているのである。さらに、レジェンダリー宝石のなかでも星5の宝石は稀少。無課金でもいくつか入手方法は用意されているものの、そもそも入手すら難しい存在である。

さらに、レジェンダリー宝石にはそれ自体のランクのほかに、5段階のクオリティもある。そして、最高クオリティの星5レジェンダリー宝石(通称5/5)入手のハードルはさらに上がる。課金したとしても相当な狭き門だ。たとえば、入手方法のひとつである、課金アイテムを利用しての「エルダーリフト」周回では、5/5レジェンダリー宝石の排出率はわずか0.045%だ。

海外掲示板Redditのユーザーによる試算では、これを手に入れるには平均的な運の良さでも2450ドル(約33万円)の課金が、運が悪ければ2万5530ドル(約345万円)の課金が必要になるという。プレイヤーは6箇所の装備にこのレジェンダリー宝石を装着できるため、「最高の宝石を揃えようとすると約1500万円がかかる」との試算とも合致する。しかし6月26日、同Redditにて、この「約1500万円」説に異論を唱えるユーザーが現れた。


異論を唱えるユーザーは「最高の宝石を揃えようとするとかかるのは約1500万円ではなく、約7300万円である」と主張している。ただでさえ度肝を抜く約1500万円との試算は誤りであり、現実はさらに厳しいというのである。同ユーザーによれば、この原因として、本作には“廃課金者向けのさらなる仕組み”が存在するのだという。それが、「覚醒(Awakening)」システムだ。

覚醒システムは、最大ランクまで強化したレジェンダリー宝石を一定ランク以上のレジェンダリー装備(防具や武器など)に挿入することで可能になる。新たな能力の付与やステータス強化などの恩恵が受けられる要素だ。こちらも、基本的には課金アイテムとなる「夜明けのこだま」が必要。そして、覚醒を発生させることにより、宝石ソケットが5つ増える。装備6箇所で覚醒すれば30個増える。比例して、最高装備への必要課金額も跳ね上がる。結果として、54万ドル(約7300万円)の予算が必要になるというわけだ。なお、これは運が良かった場合における試算だという。

本作の課金の厳しさが伝わる事例もある。ストリーマーのQuin氏のケースだ。同氏は5/5レジェンダリー宝石を入手するために、多額を課金。約2万5000ニュージランドドル(約214万円)をつぎ込んで5/5レジェンダリー宝石をゲットした。しかし、その後のストリーミング中に、抗議の意思を示すため、画面にファックサインを突きつけながら『ディアブロ イモータル』のキャラクターを削除し同作をアンインストールした。また、同氏は5/5宝石入手の際に「“由緒正しい”『ディアブロ』体験をさせてもらったよ、ありがとう」とBlizzardおよび本作公式Twitterにリプライしている。これは、強さを追い求めると多額のお金を費やすことになる課金要素に対する皮肉だろう。

『ディアブロ イモータル』は、もちろん課金なしでも楽しむことは可能だろう。一方で、際限ないトレジャーハントと装備強化のループで力の頂点を目指すのは、ハクスラの金字塔たる『ディアブロ』シリーズの最大の魅力のはずだ。そこに課金の壁が立ちはだかるのは、特に過去作のファンにとっては到底歓迎できないことだろう。ただ、低迷する評価と裏腹に、本作の売上は配信から2週間で2400万ドル(約32億5000万円)を超えたとの分析もある(Forbes)。Blizzardは今後、ユーザーの声に反応していくだろうか。