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ついに国内でも発売されたミリオンセラーの超大作『パスファインダー:キングメーカー ディフィニティブエディション』(以下『パスファインダー:キングメーカー』)。本作はTRPG「パスファインダーRPG」の世界観やゲームシステムをビデオゲームへと落とし込むことで生まれた、「即興劇を演じるかのようなライブ感」を作品の大きな魅力として掲げている。フィールド探索や戦闘、ビルド構築、王国運営とさまざまな要素が組み合わさった大ボリュームのファンタジーRPGだ。

そこで弊誌では日本語版の発売を記念して、全3回に渡り、本作の見どころを紹介していく。本稿はその第2回。テーマは「王国運営」である(第1回「フィールド探索と戦闘」はこちら)。


日本語版『パスファインダー:キングメーカー』はDMM GAMESより、PC(DMM GAME PLAYER)/PS4/Xbox One向けに販売中(公式サイト)。既に海外で発売されている『Pathfinder: Kingmaker』の日本語ローカライズ作品であり、DLC6つがすべて最初から同梱されている決定版である。本作のローカライズの監修を務めるのは、原作にあたるTRPG「パスファインダーRPG」のコアルールブックの翻訳を手掛けた「チームPRDJ」の代表である石川雄一郎氏。国内販売元であるDMM GAMESの発表によると、翻訳したワード数は150万を超えるという。

王国運営って、何をすれば良いの?


『パスファインダー:キングメーカー』は、プレイヤー自身が作り上げたキャラクターによる冒険だけではなく、「王国運営」シミュレーションをもう一つのロールプレイング要素として作品に盛り込んでおり、これは最初のチャプターをクリアすることで解禁となる。

主人公は最初のチャプターにて、本作の舞台「ストールンランド」を牛耳ろうとする盗賊団の首魁「牡鹿の王」を討伐せよと、とある有力者から命じられる。そしてライバルの猛追とコボルトたちの騒乱を乗り越え、見事、ストールンランドに巣食う盗賊団の首魁「牡鹿の王」の討伐を果たす。歓喜と興奮の声冷めやらぬ祝祭の中、討伐の報酬として爵位と共に、この地を治める権利を獲得したのであった。かくしてプレイヤーは、主人公パーティーの冒険進行だけでなく、王国の統治を任されることになる。

だが待ってほしい。王国運営要素が搭載されているといっても、その目標とは何か。王国の運営とは言うものの、具体的には何を目指して何をすれば良いのだろうか。また、「王国運営シミュレーション」におけるロールプレイとは何なのか。読者の脳裏には尽きぬ疑問符が湧いたことだろう。

まず採り上げるのは「王国運営の目標について」だ。冒険パートのメインストーリーには終幕……つまりエンディングがある。では王国運営は何をゴールにしているのだろうか。最終的にはプレイヤー思い思いの施設や住民を取り揃えた理想的な王国の成立を目指すことになるが、基本的にしばらくのあいだ目標となるのは「ゲームオーバーの回避」である。


プレイヤーが統治を任されるストールンランドは実のところ、何者かによって呪われた曰く付きの土地と化しており、定期的に外部から強大な攻撃を受けることになる。具体的に言うと、主人公の本拠地となる首都にはその内情を示したステータス(ゲーム中では「データ」と表記)が各種設定されており、攻撃が始まり次第14日間、2日ごとに値がゴリゴリと減少していく。0になってしまうとゲームオーバーである。


敵は外部だけに留まらない。シミュレーションパートにおける画面左上には民衆の「不安度」が提示されており、イベントやゲーム中におけるプレイヤーの選択肢などを通じて低下してしまう。不安度は平穏、安定、崩壊など全7段階存在し、崩壊のままで一定時間が経過するとこれまたゲームオーバーとなる。


こういった国家の崩壊を防ぐには、何よりも国の繁栄、つまりステータスの向上が不可欠。ステータスは全10種あり、各値を担当する「顧問」に仲間キャラクターを割り当てることなどを通じて上昇が可能となる。プレイヤーの元には「イベント」と「プロジェクト」という2種類の依頼が時間の経過に伴って届き、これを顧問が達成することでステータスは向上する。たとえば「暴れている村人をなんとかしてほしい」という依頼に対して、「摂政」という役職の顧問に対応させると「共同体」という値が上昇する。「将軍」という顧問に対応させると「軍事」という値が上昇する、という仕組みである(同じ顧問の役職でも、割り当てるキャラクターによって結果が異なる)。依頼の達成にはゲーム内時間の経過が必要であり、複数の依頼に跨って同じ顧問を担当させることはできないため、采配には気を配らなければならない。

「イベント」と「プロジェクト」の差異に関していえば、前者は達成の可否が確率に左右され、失敗するとステータスが減少する場合もある。後者は「BP」というポイントを大量に支払うことになるものの、確実に成果がでる、達成により今後のゲームプレイに影響が出るという点で違いがある。「BP」は週に一度手に入るポイントで、ステータス値が高いほど多く入手することができる。


ステータスの向上については、ワールドマップ中に点在する資源の獲得のほか、コミュニティ内に施設を建設することでも達成が可能。設定されたサイズに適したマスの上に施設を建設することで、指定の値が上昇する。兵舎を建てれば「軍事」が上昇し、商店を建てれば「経済」が向上する。特定の施設と隣接時に追加でステータスが上昇するものもある。施設の建設数はコミュニティの規模で変化し、村が街になり、街が都市に発展することで増えていく。物語が進み直轄地が増えれば遠方にもコミュニティを設置、施設を建設可能。中には「職人」に関する施設という、特定の条件を満たしたときに特定の地域でしか建てられない建造物も存在し、建てるとレアアイテムを定期的に献上してくれるようになる。なお建設関連はすべて「BP」を使用して行う必要があるため、ご利用は計画的に。

つまり、プレイヤーは制限時間付きの本編(冒険パート)を進行させながら、王国崩壊を防ぐため国力を向上し、民草を導かねばならない。国務=シミュレーションパートの操作は直轄地内でしかできないゆえ、冒険を途中で切り上げ、時間をかけて帰還し、国務をこなしてから再び冒険へ向かうという、文字通り忙しない日々を過ごすことになる。え?スケジューリングが大変だって?「人の上に立つ」とはこういうことなのだ。しかし中には時間制限つきのマルチタスクはパニックになり苦手だ、というプレイヤーもいるだろう。そんな時は難易度設定の画面から王国運営の難易度を変更できる。最低難易度に設定すると、基本的に王国が崩壊することはなくなるため、手詰まりに陥ったときは試してみることをオススメしたい。

シミュレーションにロールプレイングを持ち込む


次に注目するのは、王国運営におけるロールプレイング要素だ。多くの場合、運営型シミュレーションというものは俯瞰的な視点からプレイを行う都合上、主観的な役への没入を良しとするロールプレイを組み込むには一見相性が悪いようにも思える。そこで本作が採用した方法というのが、メインとなる冒険パートにおいて発生した選択の結果を反映させるというもの。具体的に言うと、冒険パートでプレイヤーのとった選択によって、コミュニティに建設できる施設、顧問=仲間キャラクターの在籍状況などが変わってくるというものである。

『パスファインダー:キングメーカー』では物語を通じてプレイヤーにさまざまな選択が突きつけられる。身内から出た悪人に対し別け隔てなく罰則を与えるのか、恩赦するのか、完全無罪とみなすのか。敵に戦いを挑むにしても大義名分を掲げるのか、闘争自体が自身の趣味であるということを宣言するのか。本作にはキャラクターの性格に関して「属性」というものが設定されており、「秩序/中立/混沌」「善/中立/悪」の要素よって全9種類の組み合わせが存在する。これはゲーム中の選択によって常に変動していく。この属性によって変化するのが設置できる施設の内容である。


たとえばプレイヤーが混沌属性を持っていると、「娼館」や「ダンスホール」のような、ある種グレーゾーンにある施設を建てることが可能となる。一方で善属性を持っていると「孤児院」「病院」など慈善施設の建設が可能。こうした専用施設は汎用施設よりも高い効力を持つため、自然と国内に設置されることになる。結果としてプレイヤーの嗜好がシミュレーションパートにも反映されていくというわけである。

王国を築き上げる仲間達に関しても同様のことが言える。プレイヤーが、ゲーム中における特定の場面で特定の選択をとると、仲間に見放され、離反される可能性があるのだ。離反したキャラクターは冒険に連れ歩くことができなくなるのは当然のこと、顧問を担う人材の喪失につながる。空いた穴を埋めるキャラクターがいればまだマシなのだが、特に仲間の出入りが激しくなる物語中盤以降、離反者が出てしまうと王国の拡張が完全にストップするという事態に突入することもある。また、特定の属性らしい振る舞いをしないとスカウトの選択肢が出現しないメンバーもいる。

これは一見すると、攻略効率の観点を通じてロールプレイを捻じ曲げる要素であるように思えるが、筆者としては好意的に捉えている。政治というものは何も素直さばかりが尊重されるわけではない。腹に一物抱えた傑物に対し、本音と建前、ふたつの刃を使いこなしてこそ一流の政治家と言えよう。譲れるところは譲り、貫く場面はとことん貫く。『パスファインダー:キングメーカー』は領主という設定を用いることで、個人が持つ思考の深い部分まで没入を求められるRPGであると私は思っている。

序盤攻略Tips


ここまで「王国運営」を紹介してきたが、冒頭で述べたとおり、このシステムを体験するにはチュートリアルを兼ねたプロローグを抜け、最初のチャプターをクリアしなければならない。前回の記事で述べたように、本作は攻略難易度が同系の作品と比較しても高い。そうでなくとも序盤ということで、すべてが手探りの中、進行状況が膠着状態に陥ってしまった、なんてことになりやすい。よって、王国運営シミュレーションを楽しめる場所までたどり着くことが難しいプレイヤーもいるかもしれない。そこで最初のチャプターに関する簡単な攻略情報をいくつか掲載し、本稿を閉じるとする。

タイムリミットに焦らないこと

本作はストーリー進行にゲーム内時間を用いたタイムリミットを採用しており、最初のチャプターはゲーム内で3か月以内にクリアする必要がある。加えて実際にプレイすると分かりやすいのだが、一挙手一投足、さまざまな行動によって時間が経過する。だが焦る必要はない。3か月というのはサブクエスト含め、出現するすべてのクエストをクリアするにはもちろん、寄り道をしても十分間に合う。無策に動き回ると流石にデッドラインギリギリになってしまうこともあるが、最初のチャプターに限ったことを言えば、時間制限はほとんど気にしなくて良い。

積極的に探索を行うこと/無理せず引き返すこと そしてこまめにセーブすること

本作は敵が再出現しない仕様上、レベリングが難しく装備への依存度も高い。だからこそ出現する敵は可能な限り討伐し、探索を通じて換金アイテムを集め、装備を充実させていくことが肝である。しかしその一方で、戦闘に失敗した際のリカバリーが難しいゲームでもある。だからこそ、引き際の判断というものは非常に重要だ。いくらダンジョンの奥深くまで潜ったとしても、回復薬のストックがなくなった、魔法の使用回数が0になったという場合はおとなしく引き返した方が身のためである。そして何よりも不測の事態に備えてセーブはこまめに行なっておきたい。データを複数個つくっておけばなおのこと良いだろう。

人さらいからの救出はやったほうがいいのか

これはサブクエストではあるが、ぜひとも達成しておきたいところだ。なぜかと言えば、このクエストをすべてクリアすると、さらわれた仲間が戻るだけではなく、新たに2人のメンバーが加入し、フルパーティでボスとの戦闘に挑むことができる。本作はレベリングが難しい仕様上、パーティメンバー1人あたりの重要性がかなり高い。装備が整わない序盤ならなおのことである。ただ序盤のクエストにしては攻略難易度が高く、すぐに挑んでも苦戦は必死。レベルはともかく、フィールドを探索し、装備は整えてから挑んだほうがいい。

「牡鹿の王」との決戦を迎える前に、とにかく周りをみること

最初のチャプターのボスである「牡鹿の王」。彼の砦に乗り込んだ際、その首めがけ一直線に突撃するのもいいが、筆者としてはまず砦内外の散策をオススメしたい。戦利品が山程用意されているほか、敵に見つからない進入路など、戦いを有利にするための要素がいくつか隠されている。たとえばNPC「アキロス」。彼は「牡鹿の王」の右腕ではあるが、条件を満たすと対話をすることができ、選択肢によっては戦闘の回避、共闘を行うことも可能となる(なお戦って倒せば彼の装備を獲得できる)。同様の存在として、「牡鹿の王」のペットである「オウルベア」の檻が砦のどこかにある。予め動きを封じることができるほか、説得に成功すると共闘ができる。NPC「クレスル」もまた共闘可能な人物ではあるが、彼女を初見プレイで仲間に引き込むのは難しいだろう。このほかワインに毒を盛るのも良いが、戦闘員を未然に排除しておくのも良い。なかでも「牡鹿の王」の副官2人をあらかじめ排除しておくと、戦闘の難易度がグッと下がるためオススメである。

日本語版『パスファインダー:キングメーカー』は、PC(DMM GAME PLAYER版)/PlayStation 4/Xbox One向けに販売中(公式サイト)。弊誌企画の第1回「フィールド探索と戦闘」はこちら

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