実写インタラクティブドラマゲーム『盛世天下:女帝への道I&II』プレイ感想。「大河ドラマを自分で遊ぶ」「無数の分岐から激動運命を体験する」シミュレーター

『盛世天下:女帝への道I』および『盛世天下:女帝への道II』では、1400年程前の中国の歴史を、大河ドラマのようにプレイし追体験できる楽しさがあった。

『盛世天下:女帝への道I』および『盛世天下:女帝への道II』は中国の唐の時代を舞台とした実写インタラクティブアドベンチャーゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)/iOS/Androidで現在配信中となっている。Nintendo Switchでも展開予定である。

『盛世天下:女帝への道I&II』の舞台は640年頃、唐の太宗・李世民の時代。後に中国史上唯一の女帝となった武則天をモチーフとした武元照(作中ではたびたび皇帝や皇后から名を賜るため名前が変化するが、ここでは便宜上「武元照」で統一する)という女性が主人公だ。基本的には史実を追体験するようなストーリーラインであるため大筋が決められているものの、選択を迫られる場面が多数用意されており選択を誤った際のゲームオーバールートが豊富であることが特徴である。

特に筆者の場合には武経七書の1つ「李衛公問対」に登場する李世民、その名臣であった長孫無忌といった面々が出てくることを知りかなりテンションが上がっていた。そしてプレイを通していくなかで本作が良質な大河ドラマのような感覚で楽しめつつ、歴史の追体験もできる歴史好きにこそプレイして欲しいアドベンチャーゲームであると感じられた。IとIIのそれぞれの概要について触れつつ、そのように感じた理由について述べていきたい。

後宮内の権力争いと皇帝の後継者争いに板挟みにされる『盛世天下:女帝への道I』

『盛世天下:女帝への道I』は後宮という女性同士の戦場が舞台になっている。幼馴染である劉熙も過去の因縁から主人公を陥れるように立ち回るし、かといって自分自身も誠実なだけでは残忍な韋貴妃などから狙われることもあるなどほとんど四面楚歌である。

それを更に泥沼にしているのが太宗・李世民の後継者争いで、女性達だけでなく跡取りの男性達の陰謀が絡み合うドロドロとした人間模様が繰り広げられる。大半の登場人物が自分のために他人を利用しようとしており、腹芸による上辺だけの関係性になっているのだ。その中で多くの選択やQTEをこなして物語を進めていくことで主人公・武元照も徐々に権力闘争の世界に順応していく。

史実ルートとifルートで全く異なる物語展開が楽しめる『盛世天下:女帝への道II』

続編『盛世天下:女帝への道II』になると太宗・李世民が崩御した事から舞台が移り、その後宮であった武元照らは出家することになるが、そこから1つのきっかけを契機として再び権力闘争の中心に立つことになる。
時が移っても首の皮一枚の人間関係であることは変わりはいが、IIではストーリーの作りに大きく2つの変化が見られる。

1つは正史ルートとifルート(ゲーム上ではメインルートとサブルート)という物語自体に大きく異なる展開が用意されている点だ。このルート分岐は序章で分かれることになるため、最後のエンディングだけが違うようなものではなく物語の展開全体が大きく異なっている。

2つめは「選択が後の物語分岐に影響する」ようなゲーム的な物語ギミックが導入されている点である。たとえば賄賂を渡す際に自身が持つ高価な品を差し出すシーンで、何を差し出したかによって後々の物語の分岐が変化するのである。これも間違った品を渡してしまっていた場合にはゲームオーバーとなってしまうのだが、以前の選択をプレイしなおして正解ルートを模索する必要があるなど、より複雑な展開になるようになっている。

事実は小説よりも奇なり

本作は1400年程前の中国を舞台にしているが特に背景設定がわからずに混乱するような事はなく、筆者は中国語はわからないものの役者の演技も話す相手によって声色が違うなどの空気感はしっかりと感じられたためテレビドラマを字幕でみている感覚で楽しむことができた。また、歴史を題材とした大河ドラマのような作品であることから実際の人物の来歴を並行して追っていくことでより深く楽しめる作りだ。

驚いたのは「流石にこれはドラマを盛り上げるために置かれた架空の人物だろう」と思っていても、実際に調べてみると史実に同名の人物がいたことだ。ディティールにはフィクションは散りばめられてはいるものの、大枠の流れは史実と似た足跡をたどっていることがわかり事実は小説よりも奇なりということを強く感じることができた。

過酷な時代の追体験

周囲の人間関係が首の皮一枚で繋がっているような状態の環境であることから、一見すると現代道徳的には悪くない選択肢に思えても自身に付け入る隙を与えてしまうことで讒言され焼印をされたり牢に入れられたりしてバッドエンドとなってしまうし、ふとした発言で機嫌を損なうだけでも殺され得るなど散々な目にあってしまう。フィクションはあるにせよ身分が高い人間が行使できる権限が大きかった当時の時代背景のなかで生き抜くことの難しさを追体験できるのは歴史好きには貴重な体験となるだろう。

数多くのゲームオーバーが待ち受けているゲームであるが、なかには扱いとしてはゲームオーバーではあるものの内容自体はグッドエンドに思えるものもいくらか存在しているだけでなく、ゲームオーバー時に表示されるテキストには遊び心もあるためゲームオーバーになることも楽しさに繋がっている。

また、選択を誤った場合には長々とした会話はみせずにスパっとゲームオーバーになるうえ、再スタートも選択肢の位置まで即座に復帰することができるようになっているため、全体でみても物語を読み進めるテンポを全く阻害しない。選択肢自体も判断が難しいものも確かにあるがトンチのように感じてしまうような理不尽なものではなく、登場人物の背景や人間関係が理解できればある程度は正解を導きやすい納得感のある選択肢になっているように感じられた。

大河ドラマとして、そして歴史を追体験できるADVとしての楽しさがあるものの、冒頭でも少し書いた通り皇帝や皇后などからたびたび名を賜ることになり、名乗る名前が変わるのはユーザーのプレイ環境によっては少し足を引っ張ってしまうかもしれない。主人公をはじめとしたいくらかの登場人物が物語の進行と共に名前が変わるため、プレイを再開するまでの期間が開いてしまったりすると混乱しやすい。

筆者は今回、IとIIを続けてプレイしたため顔や性格で登場人物は覚えていたが、少なくとも現在の名前がなんなのかはパッとは出てこない。実写の人物を記憶することに苦手意識がある場合には撮り溜めしていたドラマを一気見するようなイメージである程度のまとまった時間が確保できた良いだろう。

史実を踏襲しながらディティールをフィクションで補完し、些細な選択が数多のゲームオーバーを生み出す熾烈な権力争いの追体験はゲームだからこそできる形で歴史好きを満足させてくれるはずだ。日本語字幕のみではあるもののドラマ自体の質が良いため「面白いドラマを観たい!」という動機だけでも十分に楽しめる内容になっている。

『盛世天下:女帝への道I』および『盛世天下:女帝への道II』はPC(Steam)/iOS/Androidで現在配信中だ。Nintendo Switch向けにも展開予定である。

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S.Ishida(Game’s Wolves)
S.Ishida(Game’s Wolves)

色々なゲームの色々な楽しみ方を発見したい雑食ゲーマー。コンソールゲームやソーシャルゲームを遊ぶことが多めです。

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