ValveのGabe Newell、Steam Greenlightから削除された市民虐殺ゲームを復活させる

ValveのGabe Newell氏は、Steam Greenlightから削除された市民虐殺ゲーム『Hatred』を、みずからの意思で復活させたことを明らかにした。Steam Greenlightは、Steamでの配信を目指すタイトルをデベロッパーが登録し、Valveとユーザーに対しアピールするサービスだ。Valveは昨日、開発スタジオDestructive Creationsに対し、Steamでの販売は実質不可能であるとして、Steam Greenlightから同作を削除した。しかし数時間後、なぜか『Hatred』はふたたびSteam Greenlightに掲載されていた。Valve内部でなにが起きているのか注目が集まっていたが、決断を下したのは同社のトップだった。

参考記事: Valveが市民虐殺ゲームをSteamで販売拒否 架空の不道徳はどこまで許されるのか

 


Gabe Newell: Steamは創造ツール

 

Destructive Creationsは、自身の公式サイトとメールにて今回の復活劇の経緯を説明した。ValveのトップGabe Newell氏は、Destructive CreationsのクリエイティブディレクターJaroslaw Zielinski氏に謝罪のメッセージを送っている。Newell氏自身が今回の件について早急に内部調査を行い、最終的に「良き判断ではない」との結論に至ったという。そしてZielinski氏に謝罪するとともに、Steam Greenlightへ『Hatred』を復活させた。

『Hatred』は、社会に憎悪の矛先を向ける男が、武器を使い一般市民を虐殺するアクションシューティングゲームだ。今年10月の発表から過激なテーマが注目を集め、ユーザーのあいだに賛否両論を巻き起こしてきた。今回の件で、Newell氏は架空の不道徳ゲームに対する自身のスタンスを明らかにしていない。だが、メールの最後に記されたシンプルな一文を読めば、Newell氏がSteamをどのような場にしたいと考えているのかを理解できる。

昨日、『Hatred』をSteam Greenlightから削除したとの話を聞いた。事態を把握していなかったため、なぜそのようなことに至ったのか内部を調査した。その結果、良き判断ではないとわかり、『Hatred』を戻すことにした。あなたがたのチームに謝罪する。Steamは、コンテンツ製作者と顧客のための創造ツールだ。

この謝罪に対しZielinski氏は、Steam Greenlightへ戻れたことを強く喜んでいる。PCゲーム最大の販売プラットフォームであるSteam、その指揮官であるGabe Newell氏から復帰を認められたのだから。『Hatred』がSteam Greenlightに復活してから7時間、同作は2万7016票の好評価を獲得し、同サービスにおけるトップ100リストの1位を飾った。ただしSteam Greenlightで多数の好評価を獲得したとしても、最終的にSteamで販売するかどうかを決断するのはValveであり、今後進展がないまま時が過ぎる可能性もある。

 

 

前述したように、今回の件はGabe Newell氏が架空の不道徳ゲームを認めた、認めていないという話ではないことに注意したい。Steam Greenlightの公式ページでは、同サービスに提出してはいけないゲームとして、「ゲームに不快な内容や著作権や知的財産権を侵害する内容が含まれていてはいけません」と記されている。今回はその「不快な内容」にあたるかどうか、『Hatred』があまりに不道徳すぎるかどうかの線引きについて、Valve社内で意見の相違があっただけだ。やはり架空の不道徳が許されるラインの線引きは困難を極める、というのが今回の話の結論だろう。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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