「Steamユーザーは、どんなゲームならレビューしやすいのか」。安いほどレビュー少ない・“布教”したいとレビュー多いなど傾向いろいろ調査報告

 

あるマーケティング調査サイトが公開した「Steamのゲーム購入者がユーザーレビューを投稿する割合」に関するグラフが注目されている。グラフからは、購入者がユーザーレビューを投じやすくなる、または投じにくくなるさまざまな条件が垣間見える。海外マーケティング調査機関GameDiscoverCoが伝えている。


今回GameDiscoverCoのSimon Carless氏は、Strahinja Milenovic氏によるマーケティング調査サイトGamalyticが公開した記事を紹介している。Carless氏は今回のStrahinja氏の記事を、Steam内のデータを深く掘り下げた素晴らしい調査であると称賛。グラフを引用しながら、Strahinja氏の調査結果を紹介している。

Strahinja氏は、Steamで販売されているゲームにおけるユーザーレビュー数に対する売上の比率(以下、レビュー対売上比率)を調査。たとえば100件のレビューに対して5000本を売り上げているゲームでは、50という比率が得られることになる。同氏はこの比率とさまざまな観点を組み合わせ、相関関係を示している。なお調査においては、公開されている売上データおよび独自の売上推定方法が用いられているそうだ。


“新しくて高い”ゲームほどレビューは多い傾向

まずStrahinja氏が紹介しているのは、近年のSteamにおけるレビュー対売上比率の推移だ。下記のグラフでは2014年から2022年ごろにかけてのレビュー対売上比率の中央値がまとめられており、年数を経るごとに比率が下がっていることがわかる。つまり各作品で売上本数に対するレビュー数が増加傾向にあることを示しているわけだ。

*Image Credit: Gamalytic

Strahinja氏およびCarless氏はこの傾向の一因として、Steamにて2019年に実施されたユーザーレビューへの施策が関係しているとの考えを示している。Steamでは2019年に「トピずれ(論点のずれた)のレビュー荒らし」を特定し、レビュースコアの計算から除外するための機能が実装された。ユーザーから盛んにレビューが投じられるようになった一因として、レビュースコアの正確さと信頼性を確保するための施策の存在はあるかもしれない。

次にStrahinja氏は「ゲーム発売後の経過期間」とレビュー対売上比率との相関関係をグラフで示している。こちらのグラフでは、発売後時間が経過するにつれて購入者はレビューを投じにくくなる傾向がうかがえる。同氏はこれについて二つの理由を推察しており、一つはゲームの“目新しさ”が関係していると見ている。発売されてすぐのゲームにはレビューを残したくなるユーザーが多いといった見方だろう。

*Image Credit: Gamalytic

さらにStrahinja氏は、発売後期間が経過したゲームはセール販売が増えて割引率も高くなる点もレビュー数の割合に関係していると考えているそうだ。Steamユーザーレビューでは、ゲームを購入しても10分前後プレイしなければ、レビューを投じることができない。つまりセール時に衝動買いしてプレイせずいわゆる“積みゲー”にするユーザーは、購入してもレビューを残すことができないわけだ。発売後期間が経過して割引されやすくなったゲームでは、これもレビュー数の割合減少に繋がるようである。

セールに関連して、Strahinja氏はゲームの定価とレビュー対売上比率の相関関係も後述のグラフとして紹介している。安価なゲームほど購入者のレビュー数が少なくなり、無料ゲームは40ドル(約5800円)以上のゲームと比べてレビューを投じる購入者の割合が半分になっていたことを示している。安価または無料のゲームは、入手したユーザーがレビューを残しにくい傾向があるのだろう。

*Image Credit: Gamalytic


好評率と開発規模もレビュー数の割合に影響する可能性

ほか、Strahinja氏が紹介したグラフのなかでも、「ユーザーレビューの好評率」とレビュー対売上比率をまとめた後述のグラフには興味深い傾向が垣間見える。 “好評率が低いあるいは非常に高い”ゲームでは購入者からレビューが多く寄せられ、好評率がそこそこ高い程度のゲームではレビューが少なくなる傾向を示している。

*Image Credit: Gamalytic

この理由についてGameDiscoverCoのCarless氏は、好評率が高く「圧倒的に好評」といったステータスを獲得しているゲームでは、ほかのユーザーに熱心にゲームを“布教”するためにレビューが多数投じられているのではないかと推察。一方で同氏は、ステータスが「やや不評」以下のゲームでは、ほかのユーザーに「このゲームを買うな」と警告するような傾向からレビューが投じられているとの考えを述べている。レビュー数が多いという点は共通ながら、正反対の目的からその結果が生じている可能性がある点は興味深い。

また、Strahinja氏の調査結果では「ゲームの開発規模」とレビュー数の相関関係についても言及されている。たとえば話題性の高いAAA(大規模開発)ゲームと小規模開発かつニッチな層を狙ったインディーゲームでは、いずれも購入者からのレビュー数が多い傾向があるという。そうした作品はもともと大きな関心を寄せているユーザーが購入していると見られ、プレイ後にレビューを投じやすいのかもしれない。

*Image Credit: Gamalytic


レビュー数が増えるメリット

そのほかにもStrahinja氏はさまざまなグラフを通して、レビュー数が増加あるいは減少する理由などを推察している。なお同氏は調査記事の締めくくりにおいて、レビュー対売上比率はゲームによって大きく異なり、予測が難しいとも説明。レビューを残す人の割合は非常に予測しにくいため、ゲームの売上を判断するためにレビュー数に頼るべきではないと結論付けている。

一方でStrahinja氏は、プレイヤーにとっても開発者にとっても、ユーザーレビューは必要不可欠な機能であると説明。潜在顧客が十分な情報を得たうえで購入を判断する助けになるほか、開発者はゲームを改善するための貴重なフィードバックを得られる機会になるとしている。そして同氏は、より多くの購入者がユーザーレビューを残すように促すことができれば、開発者はゲームに関するさらに広範なフィードバックを得られ、ゲーム体験の向上に繋がる可能性もあると締めくくった。

今回のStrahinja氏の調査においては先述のとおり、公式の売上データのほかに独自の売上推定方法が用いられている点には留意したい。一方で、さまざまな側面から見たユーザーレビュー数に対する売上の比率の推移から垣間見える傾向は興味深い。Steamでゲームを販売する際にユーザーレビューをより多く集めるための戦略に繋がるかもしれない。