人気宇宙シム“『Kerbal Space Program』キラー”を謳うゲーム『Kitten Space Agency』発表。開発者は「訴訟上等」と強気、大難航中の『KSP2』への対抗心燃やす

発会社RocketWerkz のCEOを務めるDean Hall氏は、『Kitten Space Agency』を発表した。同作は人気宇宙シミュレーションゲーム『Kerbal Space Program』(以下、KSP)の精神的後継作であり、「KSPキラー」とも謳われている。

発会社RocketWerkz のCEOを務めるDean Hall氏は、『Kitten Space Agency』を発表した。同作は人気宇宙シミュレーションゲーム『Kerbal Space Program』(以下、KSP)の精神的後継作であり、「KSPキラー」とも謳われている。『KSP』を意識した作品であることもうかがえる一方、Hall氏は『KSP』の権利保有者からの申し立ても歓迎であると、強気な態度を示している。

『Kitten Space Agency』(以下、KSA)は、開発会社RocketWerkzが手がけるタイトル。CEOのHall氏は『DayZ』やKerbal Space Program』のMod制作を数多く手がけた経験があるという人物だ。

『KSA』は、発表に際して『KSP』の大手コミュニティであるsubreddit(r/KerbalSpaceProgram)上で「『KSP』の代わりになるゲーム(The KSP Replacement)」としてHall氏によって投稿された。太陽系をシミュレートした開発中の映像も公開されており、コミュニティからは好意的な反応が多く寄せられている。

現在『KSA』の開発チームには、元『KSP』開発者や元『Kerbal Space Program 2』(以下、KSP2)開発者も参加しているとのこと。また『KSP』のMod開発者も携わっているそうだ。『KSA』は独自のエンジンであるBRUTAL Frameworkを用いて制作されており、現在は実際の太陽系データをシミュレートしている段階であるという。Hall氏は将来的には独自の太陽系をシミュレートし、またゲーム内できわめて複雑な「n体シミュレーション」を実現したいと語るなど、その開発に意欲を見せている。

ちなみにHall氏が語るところによると、RocketWerkzは『KSP2』の開発会社として入札に参加していたそうだ。候補としては上位3位にランクインしていたものの、惜しくも最終選考で落選した過去があるそうだ。

なおHall氏によれば、『KSA』の最初のバージョンは無料でリリースする予定であるという。理由については「(『KSP』コミュニティは今)非常に疲れ切っている」からだと説明。無料のバージョンでその開発方針をユーザーが気に入ったのであればサポートしてもらう、という方針を取るようだ。

一方、『KSP』に対抗するような宣伝方法もあってか、上記の投稿には『KSP』の関係者および権利保有者からの法的措置の可能性を懸念する返信も寄せられている。それについてHall氏は「大歓迎だ(They are welcome to try)」とコメント。「(『KSP』の権利保有者は)ひどい会社だと思っており、とても憤慨している」として、挑戦は歓迎するし、我々には素晴らしい弁護士がいると強気な態度を見せている。

こうした同氏の態度には、『KSP2』をめぐって起きた一連の騒動が背景にあると思われる。『KSP2』は、2023年2月24日の早期アクセス配信開始。宇宙開発プログラムの責任者となって宇宙ロケットを建造するシミュレーションゲームだ。航空力学と軌道力学による本格的なシミュレーションが導入され、さまざま用意されたパーツを自由に組み合わせて宇宙ロケットを作り、カーバルと呼ばれる宇宙飛行士たちを宇宙へと送り届けることを目指す。

同作は人気を博していた『KSP』の続編ということもあり、リリース前から高い期待が寄せられていた。しかし配信直後から、パフォーマンスの最適化不足やコンテンツ量の不足などを指摘する声が多く寄せられSteamユーザーレビューでは「賛否両論」の厳しいスタートを見せた。

なお『KSP』第1作を手がけたのはメキシコのデベロッパーであるSquadだ。一方でIPは同スタジオから、大手パブリッシャーのTake-Two Interactiveによって買収されている。そのため『KSP2』の開発は傘下レーベルのPrivate Divisionによって設立されたIntercept Gamesによって行われていた。

『Kerbal Space Program 2』


しかし2024年5月2日に、公開された雇用対策局のレイオフ情報などからIntercept Gamesが閉鎖される予定であるとの報道が上がった。これについてTake-Two Interactive CEOのStrauss Zelnick氏は5月17日、投資家向けの説明会でスタジオの閉鎖報道を否定。しかしこのとき既に、Private Divisionでもレイオフ(一時解雇)が実施され、大多数(vast majority)のスタッフがすでに同社を去ったとも報じられていた(関連記事)。

これを受け、『KSP2』の現状のコンテンツや品質面への評価の不満も相まって、「このまま開発が中止されるのではないか」とユーザーの怒りが爆発。不評レビューが多く寄せられ、本稿執筆時点でもSteamユーザーレビューは約2万3000件中35%が好評とする「やや不評」ステータスとなっている(関連記事)。

なお5月時点でTake-Two Interactiveは、Private Divisionによって『KSP2』の開発を継続することを明言していた。6月12日にアップデートが実施されたものの、以降新展開や続報はなく、開発元のIntercept Gamesは公式X上でも沈黙を貫いている。今後も『KSP2』の開発が継続されていくかどうかについては不透明な状況といえる。

そうしたなかでHall氏は『Kitten Space Agency』を「KSPキラー」と称して発表したかたちだ。『KSP2』の開発続行が危ぶまれるなかで、ファンベースにアピールする狙いがあるのだろう。とはいえ、野心的な作品とみられる一方、ゲームプレイなどについて詳細は明かされていない段階であり『KSP』からどのような面が受け継がれるのかは注目される。『KSP』ファンからは期待を寄せる声も多くみられ、続報が期待されるところだろう。

Jun Namba
Jun Namba

埼玉生まれBioWare育ちです。悪そうなやつはだいたいおま国でした。RPG全般が好きですが、下手の横好きでいろいろなジャンルに手を出しています。

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