今年3月からオーストラリアで220本のゲームが発売禁止に、なぜ急増したのか?

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オーストラリア政府の司法部門が公開した新たな統計情報より、2015年3月から約220本のビデオゲームが同国にて発売禁止に処されたことが明らかとなった。ABCニュースのオーストラリア支部が報じている。一見その数字を見て審査基準が厳しくなったのかと推測してしまいそうだが、その原因は審査対象が増加したことにあるようだ。

オーストラリアのレーティング審査機関「Australian Classification Board(以下、ACB)」にレーティングを拒否されたゲームを販売、宣伝、あるいはおおやけに展示した場合、オーストラリア国内では罪に問われる可能性がある。業界団体が非営利法人として運営している日本国内のCEROと異なり、ACBはオーストラリア政府が設置した機関であり、“レーティング拒否”の烙印には法的な拘束力が発生する。

新たな審査モデルで母数増える

ACBは、1994年から2014年の20年間で約50本のゲームを不合格として発売禁止にしているが、今年の3月からわずか4か月間でその4倍以上の数のビデオゲームに発禁処分が下された。その理由は、ACBが今年3月から新たな審査モデルを試験運用しており、デジタルストア上にて販売されているゲームも審査されるようになったためだ。この審査モデルではモバイルやオンラインゲームが対象となっており、母数が増えた結果、不合格となった作品の数も激増したことが考えられる。実際に、過去4か月間で発売禁止処分が下された『Douchebag Beach Club』や『Drunk Driver』、『HoboSimulator』は、いずれもオンライン上で公開されているタイトルだ。

オーストラリアの連邦政府は今年3月、パートナーシップ「International Age Rating Coalition(以下、IARC)」に参加し、新たな審査モデルを試験運用することを表明している。IARCでは共有のオンラインツールが提供されており、開発者はツールを使用してゲーム内容に関するレポートを提出すると、それを元に各地域でのレーティングが決定される。わざわざ各地域の審査機関に書類や作品を提出することなく、一度のチェックで全世界にてゲームを販売できるようになるというわけだ。このIARCに日本は参加していないが、米国やカナダ、欧州主要国などの審査機関が参加している。

オーストラリアの司法部門「Attorney-General’s Department」の代表者は、レーティング機関が大量のデジタルコンテンツを監視することは現実的ではないとコメントしている。またオーストラリアのゲーム業界組合IGEAのCEOであるRon Curry氏は、ACBが1年間に約400本のビデオゲームをレーティングしているのに対し、昨年度には18万本から20万本のゲームがデジタル上でリリースされていると伝えている。これらのゲームをすべてACBが審査するというのは確かに不可能だろう。

オーストラリアの厳しきレーティング

オーストラリアのレーティング機関ACBは、今回のモデルを採用する前より、他国と比較しても厳しい審査を下すことで知られている。『Manhunt』や『Postal』といった残虐な表現のあるゲームのほか、『Saints Row IV』や『State of Decay』などのタイトルもオーストラリア国内で販売することは禁じられている。今年1月には『Hotline Miami 2』を不合格とし、開発者が海賊版をプレイするようオンラインのゲーマーたちに推奨する一幕も見られた。

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初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。