ピーター・モリニューの『Godus』失敗の負債

ピーター・モリニュー氏が率いるゲーム開発スタジオ22Cansは、最新作『Godus Wars』の配信を今月スタートした。Steam早期アクセスを利用しており、価格は1480円。同作は2013年9月にリリースされたPC版『Godus』をよりPCゲームとして再調整したタイトルで、『Godus』にRTSの戦闘要素を組み込んだような内容となっている。

『Godus Wars』は、『Godus』をすでに所有しているプレイヤーや、『Godus』のKickstarterキャンペーンを支援したユーザーには無料で提供される。デザインを大幅に変更し既存のファンにも配慮した最新作となっているのだが、コミュニティからは現在も厳しい視線が向けられているようだ。『Godus』での失敗を取り返すことは、まだまだ難しそうである。

約80パーセントが不評

『Godus』は、『ポピュラス』を生んだピーター・モリニュー氏と氏が率いる22Cansが手がける新たなゴッドゲームとして2012年に正式発表された。Kickstarterにて1万7184人から52万6563英ポンドを集めるなど大きな注目を浴び、2013年には早期アクセスを通じてPC版が発売。2014年にリリースされたiOS/Android版はどちらも好評を獲得した。一方で有料のブーストアイテム「ジェム」の導入など、『Godus』のデザインは当初予想されていた以上にスマホゲーム寄りとなり、PC版のプレイヤーからは不評が寄せられていた。

今回配信された『Godus Wars』は、こういったPC版のプレイヤーからの声にようやく耳を傾け、あらたに開発が進められる『Godus』である。前述したようにリアルタイムストラテジーの戦闘要素を導入し、ゲームはよりチャレンジングな内容に。プレイヤーはそれぞれ異なるプレイスタイルやゴッドパワーを持つ4人の神から1人を選び、世界を制服することを目指す。また今後の新規コンテンツは、無料アップデートにて追加される。

PC版のプレイヤーが求めていた『Godus』を完成させるため、モリニュー氏と22Cansは『Godus Wars』で再スタートを切った。一方でファンから寄せられている同作への評価は辛辣だ。Steamでは200件以上のレビューのうち、78パーセントのユーザーが不評を下しており、総合評価は「ほぼ不評」となっている。投稿されているレビューはプレイ時間が1時間以下のものが多く、なかには「ピーター・モリニューと22Cansを信じるな」「彼らのゲームを買うな」といったコメントまで。それらはレビューというよりも、感情的な怒りのメッセージにも見える。

断ち切れない”失敗”の負債

ちょうど『Godus Wars』が発売される1年前。2015年2月に『Godus』とモリニュー氏は海外メディアから大々的に批判され、コミュニティの怒りはピークに達しつつあった。前述したようなゲームデザインの問題だけではない。PC版『Godus』の開発は早期アクセスでリリースされたにもかかわらず遅々として進まず、当初約束されていた各種マルチプレイヤー要素の多くが実装されないことが開発陣より示唆。さらにKickstarterの支援者へと提供されるはずのリワードも、そのほとんどが届いていなかった。これらの問題に関してピーター・モリニュー氏は謝罪のビデオをアップロードしたが、結果的にそれが『Godus』の失敗を認めることになり、批判の火に油を注ぐこととなった。

参考: ピーター・モリニューの『Godus』における失敗

海外メディアGameindustry.bizの当時の取材によれば、この『Godus』の問題により、モリニュー氏と家族は脅迫を受けたことさえあったという。クラウドファンディングと早期アクセスを通じて開発資金を獲得したピーター・モリニュー氏と22Cansだが、『Godus』の失敗によりコミュニティから顰蹙（ひんしゅく）を買い、大きな負債を負うこととなってしまった。そして『Godus Wars』へのレビューを見る限り、現在もその負債を断ち切ることはできていないようだ。今年1月末には、モリニュー氏のTwitterアカウントがハックされ、『Godus』の販売を停止し業界からもリタイアするとの嘘のツイートを投下される事件も発生している。