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「約126万円」の高級カメラで『DOOM』を動かす人あらわる。シャッターを切って敵を“ベストショット”
ソフトウェア開発者のRadium Wang氏は10月7日、ミラーレスカメラ「Hasselblad X2D 100C」で『DOOM』を動作させることに成功したという。

ソフトウェア開発者のRadium Wang氏は10月7日、高級ミラーレスデジタルカメラ「Hasselblad X2D 100C」で『DOOM』を動作させることに成功したと報告した。Reddit上では実際にゲームをプレイする映像も公開されており、カメラのタッチディスプレイで移動や視点操作をおこない、シャッターボタンを押すことで銃を撃つこともできるようだ。海外メディアTom’s Hardwareなどが報じている。
『DOOM』は、id SoftwareがMS-DOS向けに開発し、1993年に発売されたFPSだ。FPSというジャンルを世に広めた代表的な作品であり、現在はゲームエンジンのソースコードが、利用・改変・再配布などを一定の条件のもとで認める「GPL-2.0」ライセンスで一般公開されている。そのため、さまざまな環境への移植が試みられており、これまでにもWindows標準のペイントソフト「Microsoft Paint」などで動作させる試みが登場したほか、「ひとつの巨大な文字列」で『DOOM』を実装した人物も現れるなど、一風変わった挑戦がたびたび話題となっている(関連記事1、関連記事2)。

そんな『DOOM』が今回動作したのは、スウェーデンのカメラメーカーHasselbladが2022年に発売した「X2D 100C」だ。同製品は、プロの写真家などに向けた中判ミラーレスカメラで、約1億画素のCMOSセンサーや1TBの内蔵SSD、3.6インチのチルト式タッチディスプレイなどを搭載。米国での販売価格は8199ドル、日本の公式ストアに掲載されている価格は126万5000円という、非常に高価なカメラである。

そしてWang氏は、海外掲示板RedditのHasselblad製カメラに関するコミュニティ「r/hasselblad」に、この高級カメラで『DOOM』をプレイする様子を投稿。15秒の映像では、カメラ背面のディスプレイに『DOOM』のゲーム画面が表示され、実際にステージ内を移動する様子が収められている。指で画面をスワイプすると視点が左右に回転し、タッチ操作によって通路を進んでいく。そして、カメラ上部のシャッターボタンに指を移すと、画面内の銃が発砲。撮影するかのような動作で敵に銃撃を浴びせるという、なんともユニークな光景が確認できる。
Wang氏によると、今回の移植版ではカメラ本来の機能をゲーム操作に活用しているようだ。同氏がGitHubに公開した資料では、シャッターボタンを完全に押し込むと銃を撃つことができ、押し続ければ武器の連射速度に応じて発砲を続けると説明している。一方、撮影時にピントを合わせるための半押し操作では発砲しないという。
また、背面のタッチディスプレイには前進や後退、左右への旋回のほか、射撃やダッシュ、ドアを開ける操作などに対応するボタンを配置。画面を左右にスワイプすることでも視点を回転でき、別の指で移動しながら周囲を見回すことも可能だ。さらに、カメラ内蔵のスピーカーから効果音を再生する機能も実装されており、銃声などを直接鳴らせるという。ただし、現時点でBGMの再生には対応していないとのことだ。

では、そもそも撮影用のカメラでどのように『DOOM』を動作させているのだろうか。Wang氏は今回、オープンソースの「doomgeneric」を利用してゲームエンジンを移植している。doomgenericは、画面描画や入力処理などを利用環境に合わせて実装することで、さまざまな機器上で『DOOM』を動作させるためのプロジェクトだ。なお、今回の実験では『DOOM』の商用ゲームデータではなく、互換ゲーム『Freedoom』のデータが使用されている。
Wang氏の研究資料によれば、X2D 100Cの内部にはAndroid関連の仕組みやQtなどの技術が用いられており、今回の移植ではその仕組みを利用。独立したゲームエンジンが320×200ピクセルの画像を生成し、カメラのメモリ上に書き出す。そして、その画像をカメラ本来の画面表示システムに読み込ませることで、背面ディスプレイにゲーム画面を映し出しているという。タッチ操作なども、カメラ側の入力機能を介してゲームエンジンへ伝える仕組みだ。

なかでも、特徴的なシャッターボタンによる射撃は、カメラ本来の入力処理を一時的に変更することで実現しているとのこと。通常の撮影処理に使われるボタン入力をゲーム側へ振り分ける仕組みを利用しており、Wang氏の報告によると、実機試験ではシャッターボタンの入力が認識され、ゲーム内の弾薬数が50発から48発へ減少することも確認されたという。
なお、今回の移植版はあくまでも実験的なものであり、カメラにゲームを常時インストールして遊べるようにしたわけではないようだ。公開された実験用プログラムは、30~180秒の制限時間を設けてゲームを動作させる仕組みで、終了時には本来のカメラ用画面へ復帰するよう設計されている。また、動作が確認されているのは初代X2D 100Cの特定のファームウェア環境であり、長時間の安定動作などは未検証。今回公開されたソースコード自体も、実機での再検証はおこなわれていないという。

ちなみにWang氏は、今回の『DOOM』移植以前からHasselblad製カメラのファームウェア解析に取り組んでおり、連続オートフォーカス機能「AF-C」や瞳検出機能の有効化などを報告している。同氏は、カメラ内部のソフトウェア環境にはまだ多くの可能性があると考えており、研究成果をオープンソース化して、ほかの開発者にも参加を呼びかけている。今回の『DOOM』移植も、そうした研究の一環というわけだ。

なお、デジタルカメラで『DOOM』を動作させた事例は今回が初めてではない。8月には、プログラマーのBas Lichtjaar氏が2010年発売のデジタル一眼レフカメラ「Canon EOS 550D」向けに『DOOM』を移植したことも話題となった。同氏は、カメラの機能拡張ソフトウェア「Magic Lantern」を活用し、方向キーなどによる移動や射撃、音声再生などに対応する移植版を開発している。ただし、こちらの移植版では撮影処理やオートフォーカスとの干渉を避けるため、シャッターボタンをゲーム操作に使用していないという。対して今回のX2D 100C版では、あえてシャッターボタンを射撃操作に割り当てている点が特徴となっている。
今回の映像が公開されたRedditではたちまち話題となり、感嘆の声のほかにも、「次は『Crysis』を」「敵を撃った瞬間に写真を撮れるようにしてほしい」といったさまざまな“要望”なども寄せられている。高品質な写真を撮影するために設計された約126万円のカメラで、シャッターを押すたびに銃弾が飛び出す『DOOM』。移植先としてはもちろん、高級カメラの使い方としても実に奇抜な試みといえるだろう。
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