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“ハエの脳の配線図“が公開され、すぐさま『DOOM』のプレイに使われる。「被ダメージ」を学習して生き残りを目指す
HHMI Janelia ResearchおよびGoogle Researchは9月3日、オスのショウジョウバエの脳および中枢神経系全体のマッピングを公開。それを活用し、『DOOM』のゲームプレイのシミュレーションを行う人物がさっそく登場したようだ。

HHMI(ハワード・ヒューズ医学研究所) Janelia ResearchおよびGoogle Researchは9月3日、オスのショウジョウバエの脳および中枢神経系全体のマッピングを公開、発表した。同プロジェクトに関してはデータセットとしてMaleCNS v1.0がすでに公開されており、このデータを用いてさっそく「ハエに『DOOM』をプレイさせたらどうなるか」のシミュレーションをおこなうプロジェクトも発足しているようだ。
ショウジョウバエは俗に“コバエ”としても呼ばれるハエの一種だ。赤い目をもち、体長は2~3ミリメートル程度。生後10日程度で卵から成虫になるという特徴や、染色体が4対で生物の中でも目立って少ない。さらに餌の費用も安く済む傾向などから、特にDrosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)が実験生物として生物学の研究に盛んに用いられている。
HHMI Janelia ResearchおよびGoogle Researchは、このショウジョウバエのオスについて、脳と中枢神経系の“配線図”にあたるコネクトームを公開。メスについてはFlyWireコンソーシアムがコネクトームをすでに公開、発表しているため、今回のHHMI Janelia ResearchおよびGoogle Researchの取り組みによって、雌雄のショウジョウバエのコネクトームが揃ったことになる。なおこのデータセットは、オープンソースツールNeuroglancerを通じ、誰でも閲覧やダウンロードが可能になっている。
そんなオスのショウジョウバエのコネクトーム「MaleCNS v1.0」だが、これを用いて『DOOM』をプレイさせようとする試み「DOOMFLY」が実行されているようだ。『DOOM』は、id SoftwareがMS-DOS向けに開発し、1993年に発売されたFPSである。FPSというジャンルを世に知らしめた代表的な存在だ。
「DOOMFLY」と名付けられたこのシミュレーションを実施しているのは、CoinbaseのエンジニアであるAlex Wormuth氏だ。シミュレーションではまず『DOOM』の画面情報を、ハエが受け取れるような信号へと変換。そして入力された信号は、MaleCNS v1.0を元に構築された神経回路モデル内でニューロンの活動を呼び起こす。発生した活動は既定のコントローラー操作に対応している。
たとえばDNp20というニューロンの活動が旋回運動に、DNpe017の活動が前進および射撃に割り当てられているといったかたちだ。つまり疑似的に、ハエの脳や神経系が『DOOM』のゲーム画面を見てコントローラーを操作する、という状況を作りあげているわけだ。そして“ハエ”が操作しているプレイヤーがダメージを受けるとマイナスの報酬として、ドーパミン細胞に人工的な嫌悪刺激が送られるとのこと。そしてゲーム内で死を迎えると、新たに再挑戦がおこなわれる。これを繰り返し、ハエの脳や神経系を模したモデルで『DOOM』を“学習”できるのかを実証しようとしているわけだ。
なおこの様子はWeb上で確認することができる。画面上では現在の体力やキル数、弾薬の数が表示されており、ゲームの再生速度や“ハエ”がおこなっている入力が視覚化されている。さらに先述のコネクトームを利用したモデルに関しては、ハエの“目”への入力、そして神経活動の様子も視覚化されている。
『DOOM』については、現在ゲームエンジンのソースコードの利用・改変・再配布などを条件付きで認める「GPL-2.0」ライセンスで一般公開されている。そのためさまざまな媒体への移植が試みられていることでも有名だ。また『DOOM』をAIにプレイさせる試みのほか、『Doom II: Hell on Earth』を実験用ラットに“プレイ”させる試みも話題となった(関連記事)。今回は実際のハエを用いた実験とは異なるものの、デジタル化された生物の神経回路をゲームに投入するといった点で興味深い。
ちなみにWormuth氏によれば、現時点では約3000回挑戦しているものの「学習」によって生存時間が伸びるという現象は確認できていないとのこと。長い時間を経て、いずれハエが『DOOM』を学習してクリアするのかといった点や、あるいは雌雄差があるのか、などといった点は今後注目される点だろう。なおGoogle Researchは今後の展望として魚の脳全体のマッピングを目指しているそうで、いずれ魚のコネクトームが登場した際には、“魚が『DOOM』をプレイする”日が来る可能性もありそうだ。
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