ゲーマーが「スキンに課金したくなる」理由を紐解く研究。世代によっては“他人の目”を重視していない可能性

アバターのスキンなどの装飾アイテムの購入に至るまでの心理プロセスが、世代間で異なる可能性について示されている。

米国のサウスカロライナ大学のKun Chang氏を筆頭著者とする研究チームは5月4日、研究論文「Esports in-game consumption across generations: Integrating motivated reasoning theory and the theory of planned behavior」を科学誌PLOS ONEに掲載した。そこでは、アバターのスキンなどの装飾アイテムの購入に至るまでの心理プロセスが、世代間で異なる可能性について示されている。

近年のオンラインゲーム、特に基本プレイ無料のタイトルでは、スキンなどの装飾アイテムを販売して収益を上げるビジネスモデルが広く採用されている。単体での購入のほか、バトルパスなどを購入した上でプレイによって開放する仕組みなども一般的だ。これらのアイテムは「non-functional products」(以下、NFP)と呼ばれ、ゲームプレイ上で有利に働くわけではない。単に外見のみを変更するものであるのにもかかわらず、購入しようと考えるユーザーは多く、オンラインゲーム産業の主要な収入源になっているという。

先行研究ではゲーム内のアバターが、仮想空間における自己呈示(self-presentation)、すなわち他者に好ましいイメージを伝えたいという欲求のための重要な媒体となっていることが明らかになっていた一方で、そうしたゲーマーの自己呈示動機が、どのようなプロセスを経て購買の意思決定に繋がっているのかについてはこれまで未解明であったそうだ。そこで研究チームは、動機から購買に至るまでの心理メカニズムを解明し、さらにゲーム市場の主要な消費者層であるZ世代(1997~2012年生まれ)とミレニアル世代(1981年〜1996年生まれ)との間で、その意思決定プロセスがどのように異なるのかを明らかにするために研究をおこなった。

本研究では、「動機づけられた推論理論(MRT)」と「計画的行動理論(TPB)」という2つの理論を合体させ、6つの構成要素から成り立つプロセスモデルを構築している。まず、他者にいい印象を与えたいという「仮想の自己呈示動機」が起点にあり、この動機が、NFPへの「態度」、社会的承認を重視する「主観的規範」、自らの購買能力に関する「知覚された行動統制」という3つの認知的評価に影響。そして、それらが「購買意図」を形成し、最終的に実際の「購買行動」を引き起こすという流れだ。なお本研究の仮説モデルでは、「仮想の自己呈示動機」が直接「購買意図」に、「知覚された行動統制」が直接「購買行動」にそれぞれ影響を与えるルートを持つとも定義されている。

Image Credit: Kun Chang et al. on PLOS ONE

これらの要素が実際にはどのように影響しあっているのか分析するため、研究チームはアンケート調査を実施した。調査対象となったのは、過去にNFPを購入した経験のあるeスポーツゲーマー計239名だ。うちZ世代は138名、ミレニアル世代は101名となっているほか、回答者の平均年齢は25歳で、男性が約85.4%を占めている。研究チームは『Counter-Strike: Global Offensive』『Dota 2』『リーグ・オブ・レジェンド』『フォートナイト』などのゲームのRedditコミュニティを通じて2022年3月にオンラインアンケートを実施。6つのカテゴリのいずれかに対応する設問に「全くそう思わない(1)」から「非常にそう思う(7)」までの7段階で回答を求め、得られたデータは構造方程式モデリング(SEM)および多母集団同時分析を通して整理した。

調査と分析の結果、6つの構成要素がどのように影響し合っているかが明らかとなった。全体的な傾向として、起点となる「仮想の自己呈示動機」は、「態度」や「主観的規範」と正の関連が確認できたものの、「知覚された行動統制」への影響は確認されなかった。また、「仮想の自己呈示動機」が直接「購買意図」に繋がるわけではなく、特に「態度」を経由して間接的に影響を与えることも明らかとなった。そのほか、「知覚された行動統制」から実際の購買行動への直接的な有意な影響は確認されなかったとのこと。

そして興味深いことに、世代別に見た際にはそれぞれ異なる認知ルートをとっていたという。Z世代では、「自己呈示動機」が「態度」を経由して「購買意図」へと繋がるルートのみが有意であったという。すなわち、具体的なシーンで考えると、Z世代のゲーマーは他人の目や周囲からの評価などはあまり重視せず、むしろ自分の好みに基づいてアイテムを購入する傾向にあると言える。一方で、ミレニアル世代では社会的承認を重視する「主観的規範」を経由して「購買意図」へと繋がるルートのみが確認された。これはつまり、ミレニアル世代のゲーマーがアイテムを購入する際には、他者からどう見られているかや周囲の承認といった、社会的な影響を強く受けて意思決定をおこなっている可能性を示しているわけだ。

承認欲求とも言い表せる自己呈示動機が根底にあるという前提のもとで、購入意図に繋がりやすい評価基準は世代間で異なる傾向にある可能性が明らかとなった。とはいえ今回の分析は1回のアンケート調査による横断的データに基づくものであり、決定的な因果関係を示すものではない点には留意が必要だ。加えて前述した通り、本研究では約85.4%の回答者が男性となっており、男女比を均等にした調査の実施も今後の展望として挙げられている。またそのほか、本研究ではNFPを一括りにしたが、ゲームのジャンルやアイテムの種類を細分化することでより正確な検証がおこなえる可能性も示唆されている。

ちなみに、先日にはZ世代やミレニアル世代、そしてX世代の3つの年齢層における、プレイヤーのゲームの購入傾向についての調査レポートが発表された。62%のユーザーが定価でゲームを買わなくなっているとの結果が出ており、そうした傾向は年齢層が上がるほどに高くなるというデータが公開されていた(関連記事)。ゲーム市場においても年齢層ごとに異なる行動が見られる可能性が示されており、そうしたユーザーの行動の背景にある心理を読み解く研究・調査が、ゲームの販売方法を変容させていくかどうかも注目される。

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Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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