『エルデンリング』発売前の金仮面卿には“声”が用意されていた。沈黙の思索家でも“あの衝撃”の前には喋る


エルデンリング』に登場するNPC「金仮面卿」は、異様な姿と共に、一切言葉を発さないことで知られるキャラクターだ。しかし「発売前のバージョンには、金仮面卿の“セリフ”があった」と、とあるYouTuberが報告している。本稿および掲載動画には、『エルデンリング』本編設定にまつわる重大なネタバレが含まれるため、留意してほしい。


『エルデンリング』は、フロム・ソフトウェアが手がけたアクションRPG。本作は『ダークソウル』シリーズなど同スタジオ過去作のゲームプレイを色濃く受け継ぎつつ、舞台は広大なオープンフィールドへ。多くの新要素も盛り込んだ新作となっている。そして本作の魅力のひとつが、世界観を支えるNPCたちの存在だ。王を目指す主人公は旅路のなかで、一癖も二癖もある多数の人物たちと出会っていく。人気NPCとしては、物語の主軸にも関わるクエストラインをもつ「魔女ラニ」や、“カメ教皇”の愛称をもち一部コミュニティでアイドル的存在となっている「ミリエル」などが挙げられる(関連記事)。ほかにも、友好的な者から悪意全開な者まで、多彩なNPCたちが本作の物語を彩っているわけだ。

そうしたNPCのなかでも、比較的強めのインパクトと重要性をもつ人物が「金仮面卿」である。まず見た目としては、枯れ木のごとく骨ばかりにやせ細った長身。しかも衣服は風化してしまったのか、肩に残骸のようなボロ切れがかかるばかり。股間および手足に装身具のようなものを身につけているものの、早い話がほぼ全裸である。そして顔面には、輝ける黄金の輪を模したとされる、ひまわりのようなド派手な仮面。ともすれば植物のようにも見えなくもない、かなりユニークな出で立ちなのである。


さらには、その行動が奇異だ。金仮面卿は基本的に動かず、喋りもしない。ただひたすら黄金樹を指さして黙りこくるだけであり、謎に包まれている。一方で、関連アイテムのテキストやクエスト進行により、金仮面卿が思索に身を捧げる学者であることがわかってくる。彼は『エルデンリング』の世界の理である黄金律の探求者であり、そのために常軌を逸した境地に至ったのだ。また、金仮面卿は実のところ本作冒頭カットシーンにも登場しており、物語の本筋にも深く関わってくる重要人物。一方で、弟子がその意思を代弁するようなシーンはあれど、自ら声を出して言葉を発することはない。金仮面卿は、沈黙を守り続ける超越的探求者なのである。

しかしそんな金仮面卿にも、製品版から削除された「セリフ音声」があったというのだ。動画にて報告したのは、『エルデンリング』関連動画を製作するYouTuberのSekiro Dubi氏。同氏はかつて、一般にプレイヤーが触れる機会がない、いわゆるDay 1パッチ前のバージョンの「王都ローデイル」の様子を知らせた人物だ(関連記事)。同氏が今回知らせたのは、本作の「ネットワークテスト向けパラメーター」のなかに、金仮面卿が声を発するセリフが存在したとの証言だ。以下に重大なネタバレがあるため、留意してほしい。

動画を見てみると、まず主人公が金仮面卿に衝撃の言葉を伝える。「ラダゴンとはマリカである」。多くのプレイヤーがショックを受け、頭をひねった真相だろう。また、黄金律を信仰、あるいは探究するNPCたちにとっては、足元が揺らぐような事実のはずだ。

金仮面卿にこの真相を伝える選択肢については、製品版にも存在する。ただし、そちらでは金仮面卿の反応はただ無言であり、ジェスチャーが手に入るのみだ。一方で、Sekiro Dubi氏の動画では、彼がたじろぎ、深い声を発する様子が収められている。テキストについては「…!」と無言扱いながら、音声からなにかを喋っているのは間違いないだろう。あまりの真相に、超越的な精神をもつ金仮面卿もついに声を出してしまった、という演出と見られる。

そして、金仮面卿がその声でなにを告げたのかは、やや曖昧である。Sekiro Dubi氏は、このセリフを聞き取った上で「It… why not?」と解釈している。この場合、訳すのなら「それは……やはりそうか」といったところだろうか。黄金律の探究のなかで、金仮面卿が真相に気づいていたニュアンスを含む解釈である。ただし、「Why not」の部分については比較的はっきりと発声されている一方、前半はかなりおぼろげ。動画コメント欄では「Yes, why not」とより強い肯定の言葉ではないかとの意見や、「Then, why not…?」と、金仮面卿のなかに新たな疑問が生じたニュアンスではないかとの解釈コメントも寄せられている。


金仮面卿の「幻のセリフ」に、心くすぐられるファンたち。彼はNPCのなかでも謎多き存在であり、その人となりや思考を知る手がかりは極めて貴重だ。Sekiro Dubi氏の投稿した音声が実際に収録されていたのであれば、本作が製品版となる以前には、金仮面卿は若干異なるキャラ付けがされていたとも考えられる。

しかしいずれにせよ、金仮面卿の言葉は製品版に収められたものがすべて、すなわち無言である。公式な設定としては、金仮面卿は一声も発していないことは踏まえておきたい。今後さらに『エルデンリング』の世界観を深めるのは、ダウンロードコンテンツの配信などになってくるだろう。現在そうした予定は明かされていないものの、期待はもち続けたいものだ。