『エルデンリング』“カメ教皇”ミリエルのアイドルっぷりが凄い。尊すぎる、狭間の地の良心

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エルデンリング』が発売されて以降、海外コミュニティを中心にことさら愛情を注がれるキャラクターがいる。友好的NPC、司祭ミリエルだ。本稿では、『エルデンリング』発売から現在まで、ミリエルがいかに愛されて来たか、そして現在いかに愛されているかをお伝えしていく。本稿には『エルデンリング』のネタバレになりうる要素が含まれるため、留意してほしい。


フロム・ソフトウェアのアクションRPG『エルデンリング』が発売されて、早4か月が過ぎた。ファンの多大な期待を受けてリリースされた本作は大ヒット。コミュニティも大いに沸き、国内外のプレイヤーたちが現在も本作について盛んに語り合っている。そして、本作ファンコミュニティにおける話題としてポピュラーなひとつが「キャラクター語り」である。

本作には敵対的なボスから主人公の助けになる者まで、さまざまなキャラクターが登場。個性の豊かさもあり、多くのキャラが話題にのぼる。たとえば、そのクエストラインからか多くのプレイヤーが特別な存在として挙げる「魔女ラニ」や、プレイヤーと友情を育む壺人「鉄拳アレキサンダー」などが人気だ。ボスでは、圧倒的な巨躯を誇る「星砕きのラダーン」や、その強さでプレイヤーたちに悲鳴をあげさせた「ミケラの刃、マレニア」などが頻繁に話題の種になっている。そして、海外掲示板Redditの本作コミュニティ/r/Eldenringでやや特殊な愛され方をしているキャラクターが「結びの司祭、ミリエル」だ。


ミリエルの特徴といえば、巨躯のカメであり、しかも喋ることだろう。本作には半狼のブライヴやゾラーヤスなど、動物の要素をもちつつ交流可能なキャラもいる。しかし、ミリエルの容姿はストレートなカメ。圧倒的なサイズを除けば、現実の動物園で見られそうなほどの本格的なカメである。しかもミリエルは、本作屈指の人格者でもある。

本作におけるNPCたちは、くせもの揃い。善良なキャラたちも存在するものの、どこか不穏だったり、プレイヤーを上手く利用しようとしているキャラの方が比率としては多い。そんな中でミリエルは、出会ったばかりのプレイヤーに警戒の気配すら見せない。それどころか優しく歴史を説き、魔術や祈祷を伝授するなどできる限りの手助けをしてくれるのだ。さらには、彼はプレイヤーの攻撃を受けても反撃さえしない。ただ命尽きるまで、暴挙を止めるよう諭しながらじっと耐え忍ぶのみだ。しかも、祝福での休憩などを挟めば、まるで何事もなかったように優しく接してくれる。


そんなミリエルのことを海外プレイヤーたちは、「Turtle Pope(カメ教皇)」と呼ぶ。彼が被っている司教冠からの連想だろう。信仰心に篤く、無償の愛でプレイヤーに接してくれるミリエルはいつしか、宗教的シンボルの如き敬愛を受けるようになった。たとえば、海外掲示板Redditの本作コミュニティにおいて、彼の姿を描いたファンアートの投稿は多数。ミリエルの姿をさまざまなスタイルで描いたもののほか、彼の悲哀を誘う設定を、漫画仕立てにした作品などが人気だ。こうしたファンアートは絵だけに留まらず、刺繍でミリエルを描いたり、かぎ針編みで立体的にミリエルを作ったりと幅広い。さらには、実物の亀にミリエルの“コスプレ”をさせるユーザーも。また、いずれの投稿も数百~数千件単位でのUpvote(高評価)を集めるなど、同掲示板ではアイドル的存在のひとりなわけである。

Image Credit: /u/GlisaPenny on Reddit

さらに、ミリエルのキャラクター性もネットミームとして発展している。というのも、ミリエルの「魔術も祈祷も教えてくれる」という性質は『エルデンリング』においてかなり例外的だ。本作にて魔術と祈祷は、基本的に相容れぬ存在として描かれているからだ。一方で、ミリエルは魔術書を渡しても「この世界に本来異端などない」との哲学を語り、「すべては結ばれることができる」と魔術の伝授を優しく快諾してくれる。いわば異教のような魔術ですら受け入れる懐の広さをもつわけである。さらに、ミリエルはNPCとの敵対状態を解消できる、結びの教会を守る存在。「赦し」のシンボル的存在でもあるわけだ。

そんなミリエルの赦しの心になぞらえ、「ミリエルに罪を告白し、赦しを乞う」という趣旨のスレッドなどが立てられている。一方で、無辜のNPC殺害などの蛮行に対して「カメ教皇でも許さないレベル」とするスレッドも。そして、ミリエル関係のRedditスレッドでことさら反響を集めたのが「ミリエルを殺めてしまった」と告白する投稿である。

この投稿者は、どうしても好奇心に抗えずにミリエルを手にかけてしまったとのこと。しかし、その結果として得たのは強い罪悪感のみだったようだ。投稿者は後悔を認め、二度とやらないとコメント。ゲームプレイ面でも、魔術と祈祷を両方学べるNPCを失うことになるなどデメリットは大きかったようだ。また、投稿者は「俺はこの罪悪感を胸に生きていかなければならない」とコメント。ミリエルを手にかければゲームプレイ面のデメリットばかりか、自分の大切な一部を失ってしまうとして、同じことをしないように呼びかけている。まるで本物の犯罪自白のようである。また、この告白を受けたユーザーたちからは「あなたの為に祈ります、まあ地獄行きになるとは思いますが」など、ジョークか真面目か判断に困る恐ろしいコメントが寄せられている。


海外コミュニティにおけるこうしたミリエルの人気は、ネットミームとして発展するかたわら、ある種本物の聖人を崇めるような風情さえ感じる。Redditには英語話者人口が多い性質上、キリスト教に馴染み深い北米ユーザーなども多いだろう。そうした人々にとって「カメ教皇」を敬愛し、崇めるのは自然の流れなのかもしれない。一方で、ミリエルは国内でも一定の人気をもつキャラクターである。国内のミリエルファンの方は、海外での彼の愛されっぷりを眺めてほっこりしてみてほしい。



※ The English version of this article is available here

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