任天堂看板キャラ・マリオの“ミルク”をネット上で売る、怪しげな人々現る。牛乳の正体は

 

海外通販サイトにて、今月始め頃から「限定版マリオのミルク」なる商品が出回っているようだ。とはいえ、実際にマリオから出たミルクが売られているわけではない。普通の、いやむしろ普通以下のミルクが売られている。その背景とは。


マリオといえば、いわずと知れた任天堂の看板キャラクターである。そして今月に入り、マリオの名を冠した「限定版マリオミルク」なる出品が、海外オークション・通販サイトeBayに出現。コミュニティの注目を集めているようだ。SNS上では、“マリオミルク”の出品ページとされるスクリーンショットなどが盛んに投稿されている。しかし、マリオミルクなる公式コラボレーション商品が転売されているのかと思えば、そうではないようなのだ。

筆者はeBayにて、実際にマリオミルクを探し求めてみた。すると、一見なんの変哲もないミルクボトルが「限定版マリオミルク」として販売されているのを確認できた。日本ではあまり見かけないガロンボトルではあるものの、マリオのプリントやロゴなどは見当たらない。しかし、価格は40米ドル(約4639円)とかなり強気である。いったいこのミルクはどこが“マリオ”なのか、その根拠は「賞味期限」にあった。


売り出されたミルクの賞味期限を見てみると、「MAR 10」との表記がある。March 10といえば、3月10日。つまり、賞味期限が3月10日と書かれているだけである。しかし、この日はマリオファンにとって記念すべき日、マリオの日として認定されているのだ。3月10日を英語で簡易に表記すると「MAR. 10」すなわち「MARIO」と読めるためだ。もともとファンの間で浸透していたと見られるこのミームは、いつしか任天堂側も公式に認める「マリオ記念日」となっている。海外向けには「MAR10 Day Sale」と題して、任天堂による関連作品のセールが実施されているほか、SNS上では多くのファンからお祝いのコメントなども寄せられている。

つまり、eBayに出品された“マリオミルク”は、そうした記念日に便乗した「賞味期限が3月10日なだけの牛乳」なのだ。マリオ記念日が刻まれているように見えるとはいえ、コレクターズアイテムとしての価値は疑問。そもそも1年待てばまた手に入る品物だ。というか、手に入る頃には賞味期限も切れているだろう。にもかかわらず、SNS上に投稿されたマリオミルクの価格は50米ドル(約5833円)から1000米ドル(約11万6669円)までと、いやに強気である。それぞれの出品者が本気で“マリオミルク”を売りつける気なのか、冗談なのかも判断にこまるところである。

筆者が確認したマリオミルク出品もかなり杜撰だった。同出品ページでは、品物の状態については「新品同様(Like New)」としている。しかしながら、写真を眺めてみると蓋が開封されている。そればかりかミルクの残りは2割ほど。明らかに使用済みミルクである。もっとはっきり言えば、使用済みで賞味期限が切れたただの牛乳である。しかも出品カテゴリーは「ビデオゲーム」となっており、賞味期限切れの牛乳は場違い感が強い。ほかには「使用済み(Used)」のマリオミルクが販売期限切れで売れ残っているのが確認できた。そもそも「使用済みミルク」とはなんぞやとの疑問も湧いてくる。なお、SNS上に投稿されているマリオミルクの出品画像には、数年前から出回っているものも含まれるようだ。つまり、マリオミルクは今年に限らず、以前からしばしば出品されていたと見られる。


賞味期限の怪しいミルクを売りつけるバカバカしさが受けたのだろうか。Twitter上では「マリオが搾乳された」との前提で味わいに興味を示す者や、乳ではないものを絞るセクシャルな想像を言葉にするユーザーもいる。マリオミルク出品は、コミュニティからおおむね珍事として受け止められているようだ。一方で、看板キャラを利用しビジネスしようとする試みは、任天堂にとってはただただ迷惑だろう。ミルクを出品する側は、たとえ牛乳であっても、マリオと関連付けることで新たなバリューは生まれると考えているのかもしれない。

出品されたマリオミルクたちが実際に売れたかどうかは定かではない。コレクターズアイテム感もイマイチで、飾ろうにも早めに腐るただの牛乳に、買い手はつかなかっただろう。マリオとミルク、なかなか縁の遠いふたつの存在が、奇妙なかたちで結びついた珍事であった。