『The Culling』課金モデルの批判を受けて開発元が反省。課金モデル自体ではなく「発表の仕方」や「1日1マッチ」制限が悪かったと自己分析

 

米国のゲームスタジオXaviant Gamesは5月15日、『The Culling』を海外Xbox One向けに再ローンチした。過去に2度の開発終了を経験したバトルロイヤルゲームの再々復活だ。しかしながら新たに採用された課金モデルに非難が殺到しており、最新トレイラーや開発者ダイアリーは低評価票が圧倒的に多い(開発者ダイアリーは、執筆時点で高評価626件、低評価3万2295件)。ForbesPolygonなど海外メディアも、軒並み批判的な姿勢を取っている。

https://youtu.be/XjU5JfPFiZA

その課金モデルの中身は、ゲーム本体を5.99ドルで購入すると1日1回オンラインマッチを遊べ、さらに遊びたい場合は、有料トークン(3個0.99ドル~20個4.99ドルのセット)を購入する、もしくは7日間(1.99ドル)/30日間(5.99ドル)の遊び放題プランに加入するという「Pay-To-Play」システムだ。マッチに勝利するとトークンを無料で入手できるというボーナス付き。

『The Culling』は有料のゲームでありながら、マッチ単位での課金形式を採用していることが批判の的となっている。すでに低人気によりサービス終了を経験しているにもかかわらず、プレイヤー集めではなくお金集めを優先する姿勢も不評気味(補記:マルチプレイゲームはプレイヤーがいないと成り立たない。本作はすでにサービス終了を経験しており、プレイヤーを確保できるか懐疑的な状態。そうした中で、新規参入しづらい課金モデルを設けることは、ゲームを存続させる上で賢明な手段だとは捉えられていない)。後日、1日1マッチから1日10マッチに条件を緩和したものの、鎮火には至っておらず(関連記事)。そんな『The Culling』の開発元Xaviant Gamesが、海外メディアPC Gamerに対し、後悔の念を伝えている。

【UPDATE 2020/05/20 18:05】
実際には1日25マッチ無料で遊べるようになっているとの報告が数件あり。Xaviantによる正式な発信があり次第、更新します。

「1日1マッチ」では不十分だった

*発表ツイートでは週額/月額の遊び放題オプションが示されておらず、トークン販売の方が優先されている

ただし課金モデルそのものは悪くなく、発表の仕方や、無料プレイ分を「1日1マッチ」に絞っていた点を反省している。Xaviant Gamesの運営ディレクターJosh Van Veld氏は、振り返って考えると「1日1マッチ」はプレイヤーを呼び込むのに十分ではなかったと、PC Gamerに語っている。ゲーム本体を有料で購入しているのに、無料マッチと表現すること自体にも違和感はあるが、ひとまずこの1日1マッチという制限は、先述したように1日10マッチに緩和された。

このような課金モデルを採用した理由について、「覚えておいてほしいのは、私たちは大量のプレイヤーが戻ってくることによるサーバー過負荷を恐れていたという点なんです。莫大なサーバーコストがかかる中、プレイヤーがお金を使わないという事態を」とVeld氏は説明している。2018年、同作が基本プレイ無料タイトルとして再ローンチした際、コスメティックアイテムの販売による収益化がうまくいかなかったことを踏まえて生み出されたのが、今回の課金モデルだ。

ゲームを購入した上で、1日に一定回数以上遊びたい場合は、トークンもしくは週額/月額プランに追加料金を支払う。「ゲームを遊んだ上でアイテムやDLCを買ってもらう」ことは難しいため、「ゲームを遊ぶこと」自体をマネタイズ化する方法。新規プレイヤーの参入ハードルは高くなるが、この課金モデルこそが、安定した収入を得るための解決策なのだという考えは変わっていないとのこと。

時間を巻き戻せるのならば、説明の仕方を変える

これは単発的に遊んで去るプレイヤーを想定して作られた課金モデルだとVeld氏は説明。しかしながら長年同作を遊んできたプレイヤーからは、継続的に追加料金を支払わなければならないことを不満に思うとのフィードバックが寄せられたという。本作を継続的に遊びたいと思っている人がいることにVeld氏は驚いていると、PC Gamerは記している。継続的に遊ぶ人がいないと想定した上で作られた課金モデル。開発元が『The Culling』に寄せる期待は限りなく低いことが読み取れる。Veld氏としては『The Culling』を人気作にするつもりはなく、マッチを遊べるだけのプレイヤーがいて、ゲームを維持できれば十分なのだという。

Veld氏は、時間を巻き戻せるのならば課金モデルの説明を変えるだろうとも述べている。「『The Culling』が好き、もしくは試してみたいという方は、ぜひ試してみてください。お金を払いたいと思えるだけ気に入ってくれた場合は、ぜひプレイし続けてください。ゲームを購入すれば、1日10マッチ遊び続ける機会が与えられます。さらに気に入ってくれた方は、お手ごろ価格のパスを購入できます。そうすれば、好きなだけ遊べるようになります。パスは好きなときに更新できます。遊ばなくなった場合は、びた一文追加で支払う必要ありません。こうした説明であれば、理解してもらいやすかったのではないでしょうか」。

旧作である『The Culling』のマッチ参加権1回あたり0.33ドル(3トークンで0.99ドル)、週額/月額の遊び放題プラン1.99ドル/5.99ドルが「お手ごろ価格」だと感じるかどうかは、プレイヤーによって個人差があるだろう。また批判されているのは、有料のゲームでありながらマッチ単位での追加料金が求められる「Pay-To-Play」モデルそのものであるため、説明の仕方を変えても批判を受けることに変わりはなかったかと思われる。

批判と引き換えにゲームを存続させる

今回の再ローンチは、『The Culling』の復活を望んでいたコアなファンのために、サーバーを提供し続けることが主眼とされている。だとすれば、確実にお金を出してもらえる週額/月額制に絞ることで、批判の大部分は回避できたのではないだろうか(YouTubeで活動しているレビュアーのJim Sterling氏は、Patreonで寄付を募ればどうかと提案している)。そもそも価格帯からしてトークンの個別購入は割に合わず、『The Culling』の復活を願っていたファンであれば、週額/月額課金を選ぶと思われる。マッチ単位で課金するトークン制にまで手を広げたからこそ、本作のファン層を超えた多数のユーザーから批判されることになった。

再ローンチを発表して以来、開発元は「いかにしてサーバー費用を回収するか」というお金の話に情報発信の大部分を割いている。お金を集める方法を軸としたコミュニケーションであり、プレイヤーにどう捉えられるのかという観点が抜け落ちていると思わしき情報発信が続く。再ローンチの発表時にVeld氏が「課金スキーム」と説明していたことからも(通常、消費者と対話する際に、お金を徴収する仕組みといった言葉選びはしないだろう)、ビジネス目線でファンと接しているのだと読み取れる(*)。今回のPC Gamerに対する一連のコメントも、サーバーコストの話を筆頭に、開発者目線の説明で完結している。正直ではあるが、すでに開発元を訝しがっているユーザーに受け入れてもらうのは難しい語り口だろう。

*補記:コスト計算を踏まえた理屈上合理的な課金モデルだとして、それがプレイヤーの視点から考えて納得のいく内容であるとは限らない。ビジネス的な損益計算として正しい結論だとしても、それがプレイヤーに受け入れられる商品として成立するかどうかは別問題。「1日1マッチ」という発表当初の内容は、開発者の事情として妥当だとしても、プレイヤーにどう受け止められるのか熟慮された仕組みだとは言いがたい。率直に事情を伝えるのは企業として好ましい姿勢だが、プレイヤーの視点が欠落していると食い違いが生じる。

Xaviant Gamesが信じる課金モデルによって、ゲームの安定した運営を実現できるのか。成功した場合、一定の批判と引き換えにゲームを存続させる、新しい道筋を示すことになるだろう。それが健全な道筋なのか議論の余地はある。ただ、どれだけ批判されようと、結局ゲームを維持できるかどうかは、プレイヤーに財布を開いてもらえるかどうかにかかっている。

最大16人で対戦する一人称視点バトルロイヤル『The Culling』は海外Xbox One向けに配信中。将来的にはSteam版も再ローンチを果たす予定だ。