『The Culling』2度も開発終了したゲームの復活が発表されるも批判の嵐。ゲーム本体5.99ドルで「1日1回」遊べ、1日2回以上遊ぶ場合は別料金

過去に2度、開発終了を経験したバトルロイヤルゲーム『The Culling』が再復活。しかしながらゲーム本体料金5.99ドルで「1日1回」遊べ、1日2回以上遊ぶ場合は原則別料金というマネタイズモデルにより批判の声が集まっている。

【原文 2020/05/13 15:54】
デベロッパーのXaviant Gamesは5月12日、『The Culling: Origins(以下、The Culling)』を再ローンチすることを発表した。Xbox One版は5月14日にサービス開始。PC版は後日対応するという。同作は、これまでに2度の開発終了を経験したゲーム。2017年12月に一度開発を終了したのち、2018年9月に基本プレイ無料タイトルとして再出発を切るも、2019年5月にサーバーを停止している。それから1年が経過した今、『The Culling』が再々復活を遂げる。

『The Culling』は、最大16人で対戦する一人称視点のバトルロイヤルゲーム。銃器ではなく手製の弓矢や槍を中心に戦うプリミティブな作風、攻撃・防御・防御崩しの三すくみの近接戦闘、さまざまなステータス異常効果やトラップの活用といった、特徴的なゲームメカニックの組み合わせによって2016年の発表当初注目を集めた作品だ。その後主流となる『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』『フォートナイト』といった大人数型のバトルロイヤルゲームとは異なる趣向のゲームであり、いまだコアなファンが存在する。

 

5.99ドルで、1日1回遊ぶ権利を得る

https://youtu.be/XjU5JfPFiZA

Xaviant Gamesは、2018年6月に『The Culling 2』という続編もリリースしている。初代『The Culling』の特徴をほぼ全て取り払い、『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』のフォーマットに近づけた非個性的なバトルロイヤルゲームであったことから、ファンの期待を裏切ることに。発売初日からまともにマッチングしない状態が続き、わずか9日で販売・サポートを停止した経緯がある(関連記事)。『The Culling』『The Culling 2』ともに人が集まらず苦戦してきたXaviant Games。今回の『The Culling』再ローンチは嬉しい知らせのはずだが、そのマネタイズモデルが変則的であり、批判の的となっている。

具体的にどのようなマネタイズモデルが採用されているのだろうか。まず新規プレイヤーは1日間のフリートライアルでゲームを試すことができ、気に入ればゲーム本体を5.99ドルで購入できる。すると、オンラインマッチに「1日1回」だけ参加できるようになる。1日2回以上遊びたい場合は、有料トークンを購入するか、7日間(1.99ドル)/30日間(5.99ドル)の遊び放題プランに加入する必要がある。有料トークンの方は、0.99ドルの3個セットから4.99ドルの20個セットまで複数のオプションが設けられている。「ゲーム本体」と「マッチ参加権」を別売りしているのだ。

すでにゲームを所有しているプレイヤーであれば、初期費用の5.99ドルは不要(基本プレイ無料中にゲームを入手した場合も含む)。マッチに勝利することでもトークンを入手できるため、勝ち続ければ追加料金を支払わなくてよい。コスメティクスアイテムは有料販売されず、マッチをプレイしてレベルを上げることで入手可能。レベルは、マッチ参加権が不要なオフライン対戦でも上げられる。

 

「Pay-To-Play-To-Pay-To-Play」

事情を知らないプレイヤーからすると、かなり取っつきにくい販売方法だろう。PC/コンソールゲームというよりも、モバイルゲームで見られる手法に近い。YouTubeで活動するゲームレビュアーのJim Sterling氏は、『The Culling』のマネタイズモデルを「Pay-To-Play-To-Pay-To-Play」と呼んでいる。ゲーム本体とマッチ参加権の別売りも妙だが、ゲームを有料で売っているにもかかわらず「1日1マッチ無料」と表現していることに対しても、Jim Sterling氏は疑問を投げかけている。

この奇怪なマネタイズモデルの意図を理解するには、開発者の発言に耳を傾ける必要がある。先述したように、開発元のXaviant Gamesは『The Culling』の運営に幾度となく失敗してきた。2018年9月に基本プレイ無料タイトルとして再始動した際には、サーバーやバックエンドの費用を賄えず、あえなくサーバー停止に追い込まれた。運営コストをカバーするためのマネタイズモデルがうまく構築できていなかったのだ。

サーバー停止後、ファンからは復活を願う声が寄せられたそうで、バックエンドの最適化によるコスト削減と、新しい収益化方法の模索を始めたという。運営コストを賄えなければ、歴史を繰り返すだけ。そこで生み出されたのが、「Pay-To-Play-To-Pay-To-Play」と揶揄されしマネタイズモデルである。これはゲームを成功させるというよりは、どのようなプレイヤー人口であっても安定してサーバーコストを賄えるような仕組みとして採用されたもの。持続的なサービス提供を最優先にしたマネタイズモデルである。ただ、新規プレイヤーにどう映るのかは、あまり考慮されていないように思える。マッチ単位で追加料金が発生するゲームに手を出すというのは、なかなかにハードルが高い。

 

3度目の正直なるか

https://youtu.be/DagyNvoA9DU

有料のゲームでありながら、マッチ参加権を別売りする。とても消費者フレンドリーとは思えないマネタイズモデルである。『The Culling』のトレイラーおよび上の開発者ダイアリーも、低評価票と批判的なコメントで埋め尽くされている。だが「強欲さが生んだマネタイズモデル」として簡単に退けるわけにもいかない。人が集まらないことを見越し、それでもなお維持費をカバーし続ける術を模索した結果ではあるからだ。

サービス維持に必要な収益を生み出せるゲームは限られており、大多数は淘汰されていく。そうした業界において、2度のみならず3度も息を吹き返そうとしている『The Culling』、ならびに需要が限られたゲームをしぶとく蘇らせようとするXaviant Gamesは、稀有な存在である。単純な損得勘定だけでは、2度も開発終了を経験したゲームをサポートし続けるという判断には至らないはずだ。

とはいえ、もう少し良心的なマネタイズモデルを作るべきだっただろう。「1日1マッチ無料」の部分をなくし、シンプルな週額/月額課金にしていれば、もっとプレイヤーに理解してもらえたのではないだろうか。先述したJim Sterling氏も、本作のようなマネタイズモデルの存在を許容してしまうと、追従する企業が現れかねないと危惧している。

ただ、『The Culling』の復活を望んでいたファンがいるのも確か。はたして『The Culling』の新しいマネタイズモデルは、同作のファンに受け入れられるのだろうか。そして同作は、3度目の正直として生き延びることができるのだろうか。

【UPDATE 2020/05/13 16:29】
記事タイトルを、”『The Culling』2度も開発終了したゲームの復活が発表されるも批判の嵐。5.99ドルで「1日1回」遊べ、2回目以降は別料金”  から ”『The Culling』2度も開発終了したゲームの復活が発表されるも批判の嵐。ゲーム本体5.99ドルで「1日1回」遊べ、1日2回以上遊ぶ場合は別料金” に訂正。

【UPDATE 2020/05/15 12:00】
Xaviant Gamesは5月15日、『The Culling: Origins』のマネタイズモデルを部分的に変更することを発表した。変更前はゲーム本体を購入すると1日1マッチ追加料金なしで遊べる仕組みであったが、変更後は1日10マッチまで遊べるように。またオンラインマッチだけでなく、オフラインマッチ(bot戦)に勝ってもマッチトークンをもらえるとのこと。後日さらなる計画を発表するという。

批判を受けて課金体系を緩和したものと思われるが、ここまでマッチトークンを容易に得られるようにすると、「サーバーコストの回収」という当初の目的を達成しづらくなるのではないかという懸念が残る。

*Xaviant Gamesのツイート

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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