Steamゲームの価格は下降の一途を辿る。インディーゲームはセールスも減少で「薄利多売」成立せず、一方で収益トップは20ドル価格帯

Steamデータを収集し公表するデータベースサイトSteamSpyの管理人Sergey Galyonkin氏が、2017年のSteamにまつわるデータを公開した。現在Steamで販売されているゲームの価格は、全体の価格の中央値が5.99ドルであり、インディーゲームの価格の中央値が3.99ドル。そして2017年に発売されたインディーゲームの中央値は2.99ドルであるという。

Steamデータを収集し公表するデータベースサイトSteamSpyの管理人Sergey Galyonkin氏が、2017年のSteamにまつわるデータを公開した。Galyonkin氏はいくつかの注意点をあげて必ずしも正確ではないと前置きしつつも、さまざまなデータを公表している。Steamの2017年のSteamでの総売上は前年の35億ドルを上回る43億ドルであるということ、6300万ものプレイヤーが新たに同プラットフォームに参加しているということ、新たに流入しているプレイヤーはゲームを買わない傾向にあることなど、さまざまなデータが明かされている。

Image Credit : Sergey Galyonkin

今回価格について記載されている部分に注目したい。Galyonkin氏によると、現在Steamで販売されているゲームの価格は、全体の価格の中央値が5.99ドルであり、インディーゲームの価格の中央値が3.99ドル。そして2017年に発売されたインディーゲームの中央値は2.99ドルであるという。昨年8月Galyonkin氏は直近に発売されたインディーゲームの価格の中央値が8.72ドルにまで下がってきていると指摘していた。2.99ドルはそれを大きく下回る数字である。Galyonkin氏は、ゼロに向かって突き進む、非常によくない傾向であると懸念している。ここまで下がると計測がおかしいのではないかとも考えてしまうが、直近リリースされたSteamタイトルを確認できるサイト「What’s On Steam」を見ても新作は5ドル以下のものばかり。2017年の価格の中央値が大きく下がったと考えるだけの根拠はある。

Image Credit : Sergey Galyonkin

さらに深刻なのは、価格を下げていながらゲームのセールス(正確には所持者数であるが、本稿ではセールスとする)も芳しくないという。2015年には中央値が3万2000本であったゲームごとのセールスは9500本まで低下。インディーゲームで比較すると、2015年に2万2000本だった数は5000本に。2017年に発売されたインディーゲームに限れば、1500本がセールスの中央値であるようだ。

価格の低下とタイトルごとの所持者の低下の原因は、やはりSteam Directの導入にあるだろう。昨年6月に開始されたSteam Directでは、開発者はデジタル書類を提出しValveからの承認を得ることで、簡略にシステム化された認証プロセスのなかでゲームを配信することができる。Greenlightのようなユーザーによる審査はなく、個人でもSteamにて積極的にゲームを配信できるようになった。しかしその一方で、Steamではとにかく多くのゲームがあふれるようになった。Galyonkin氏もSteam Directリリース以降著しくリリースタイトルが増えたことを報告している。2017年に出たタイトル数は、これまでのどの年よりも多い7700本であるとも記している。Steam Direct解禁以来、個人開発者が安くゲームを出し続けており、その数が増えることにより価格とセールス中央値が下がっている流れだ。

ではそうした安いタイトルが利益をもたらしているというと、やはりそうでもないようだ。ゲームの価格は9.99ドルのものがもっとも多いが、収益の観点からみると19.99ドルのゲームと59.99ドルのゲームが高い数字を記録している。昨年のSteam市場を席巻した『PUBG(29.99ドル)』を含むと29.99ドルがもっとも収益をもたらした価格帯になるものの、『PUBG』は昨年頭一つ抜けて売れた例外とも言えるタイトル。現時点では19.99ドルがもっとも利益をもたらす値であると考えてよさそうだ。

Image Credit : Sergey Galyonkin

価格を安く設定して多く捌き、利益を得る……。「薄利多売」という発想は今のSteam市場では通用しないと考えていいだろう。安いからという理由でゲームを買うユーザーがメインストリームではない以上は、利益を見込める値段を設定する必要がある。59.99ドルの収益が高いこともあわせて考えると、ユーザーはあくまで質のよい、もしくは面白いタイトルを求めていることが垣間見える。

実は、こうした価格の問題は昨年から懸念されていた課題である(関連記事)。Galyonkin氏は昨年8月には、15ドルですら安いと批評しており、インディーゲームの開発者がアメリカ的な「リッチになるか死ぬか」という傾向にあることを危惧していた。それからさらにゲームの価格が安く、そして売上自体が下がっている現状を見ると、この問題はさらに深刻になっていることになる。

『Songbringer』はPlayStation 4/Xbox One向けにも販売中。そちらでの収益も見込める

価格設定による成功例としては、オープンワールドパズル『The Witness』は39.99ドルの価格で50万近くを売り上げている(バンドル除く)。昨年GameIndustry.bizに対し「20ドルの割引なしで発売しますが、この判断は間違いかもしれません。しかしリスクを考えてこの決断をしました」と語ったWizard Fu Gamesが発売した『Songbringer』は、1万2000本とまずまずの結果を残している(SteamSpy)。評価はほぼ好評でありユーザーの評価が著しく高いというわけではないので、目安として参考になるデータだろう。例外ではあるが全く値引きせず、かつ安価とはいえない価格でも、数字を伸ばし続ける『RimWorld』『Factorio』のような作品も存在している。前述したが「安いから売れる」という傾向は、全くないわけではなさそうであるが、現状では同じ狙いのライバルはあまりに多く、かつ市場も小さい。今後Steamでゲームを出そうと思っている開発者の方は、下がり続ける中央値をそれほど意識せず、自信をもって価格を設定していくことが重要になるかもしれない。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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