ヒットしたインディータイトルの続編が前作比15%のセールスと苦戦中。Steamという膨張し続ける市場で作品を見つけてもらうことの難しさ

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Failbetter Gamesは2月7日、『Sunless Skies』の正式リリース時期を延期する旨を発表した。当初は2018年5月を予定していたが、現在は新しい見通しを立てている最中とのこと。また開発陣によると、本作の売れ行きは前作『Sunless Sea』との同期間比でわずか15%と振るわず。資金切れにより次のプロジェクトに取りかかれなくなる事態を避けるため、やむなくチーム体制の見直しを図り、従業員15人中4人のレイオフに踏み切った。費用対効果が見込めない『Fallen London』のモバイルアプリは2018年Q2にクローズ。2016年にスタートしたFundbetterも終了する(ナラティブ重視のプロジェクトを対象とした基金)。

『Sunless Skies』とは、2017年8月に早期アクセス販売が開始された、見下ろし視点のサバイバル・アドベンチャーゲーム。舞台となるのは、前作『Sunless Sea』の10年後となる20世紀初頭。ヴィクトリア女王が宇宙大英帝国の建設を目指す中、プレイヤーは蒸気機関車型の宇宙船を操るひとりの船長として、帝国軍と反乱軍の勢力争いに加担しつつ新世界を旅する。燃料や食料、恐怖値を管理しながら、港から港へと人や情報を運んだり交易を行ったり、ときには宇宙海賊と一戦を交えながら銀河系を航海するのだ。

※2017年8月に公開されたローンチ・トレイラー

開発陣はセールスが伸び悩んでいる理由をいくつか述べている。まず早期アクセス販売を開始するには時期尚早であり、想定していたよりもメディアに取り上げられなかったこと。また2017年2月に実施したKickstarterキャンペーンが大成功をおさめたことで(出資者数は前作のおよそ3倍)、ファンの多くはすでにゲームを所有しており、売上ランキングといったSteam上での露出を減らしてしまったことが要因として挙げられている。クラウドファンディングキャンペーンでの成功が、販売プラットフォーム上での可視性を低めてしまったという分析は注目に値する。

もちろん、前作『Sunless Sea』が早期アクセス入りした2014年とはマーケット事情が異なるという点も、売上に影響を及ぼしているのだろう。前作が発売された2014年にSteamで配信された新作の数は1782本。一方で続編が発売された2017年には4倍超の7640本にまで膨れ上がっている(SteamSpy)。2017年にSteam Greenlightプログラムが廃止され、ゲーム配信までのプロセスを簡略化したSteam Directが導入されたことで、リリース数が増加傾向にあるのだ(関連記事)。2018年に入ってからもペースは衰えず、今年だけですでに815本ものタイトルが市場に投下されている。作品数がハイペースで増えていることから、ユーザに発見されず埋もれてしまう可能性が高まっている。人気作品の続編と言えども、例外ではないのだ。

暗闇に包まれた大海原から、大宇宙へと舞台を移した『Sunless Skies』

開発陣によると『Sunless Skies』の売上は前作同期間比で15%とのことだが、具体的には何本なのだろうか。2015年当時の公式ブログによると、前作『Sunless Sea』は初月だけで2万8432本、早期アクセス中の合計では5万17本の売上を達成していた。前作の早期アクセス期間は7か月、続編となる『Sunless Skies』は現時点で5か月なので単純には比較できないが、1万本には達していないとの目安がつく。

ただ、前作『Sunless Sea』は2015年2月に正式リリースを迎えたのち、1か月で5万本の上乗せに成功し、累計10万セールスを達成。SteamSpyによると、2018年2月時点では所有者数50万人前後にまで増えている。続編の『Sunless Skies』も、今後のアップデートを機にセールスを伸ばす可能性は十分にある。

前作『Sunless Sea』の売上推移。公式ブログより

開発者が資金繰りに悩まされる事例というのは、スタジオの規模を問わずありふれている。例えば『Dear Esther』『Everybody’s Gone to the Rapture』などで知られるThe Chinese Roomは、2017年7月にディレクター二人を除く全従業員のレイオフを実施している(Eurogamer)。パブリッシャー探しの交渉段階で起きた資金切れだ。またヒーローシューター『Gigantic』を開発したMotigaは開発期間中に4度のレイオフに踏み切り、スタジオ閉鎖ギリギリのところでやりくりしていた(関連記事)。小規模のスタジオでも、収入が途絶えればランニングコストを賄えなくなる。『Sunless Skies』のFailbetter Gamesが述べたように、次のプロジェクトのために内部留保を残しておく(そのために従業員を解雇する)というのは、やむを得ない判断だったのだろう。Faibetter Gamesのコミュニケーション・ディレクターのHannah Flynn氏は以下のように語っている:

Flynn氏「我々はほかのインディースタジオと同様に、小さくて壊れやすい船であることを、痛いほど理解しています。スタジオを稼働させ、ゲーム制作を続けるために全力を尽くしておりまして、『Sunless Skies』のプロジェクトが中止の危機に瀕しているわけではありません。ここ数か月間で下した決断は、『Sunless Skies』以降もゲームをつくり続けるため、そして長期にわたりスタジオを運営し続けるためのものです」
 

『Sunless Skies』はSteam/GOG.comにて早期アクセス販売中。対応プラットフォームはWindows/Mac/Linuxで、Steamでの販売価格は2480円となっている。

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元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)