『H1Z1』の平均プレイヤー数が5か月で78%ダウン。バトルロイヤル人気の影に隠れていく過去の覇者

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Daybreak Game Companyが開発するバトルロイヤルゲーム『H1Z1』の平均同時接続ユーザ数が5か月の間に78%ダウンした。SteamやTwitchのデータを分析している「githyp」が指摘したもので、同作の平均同時接続ユーザ数は2017年7月に過去最高となる8万7703人を記録してから落下の一途をたどり、2017年12月には1万9600人(12月25日時点)にまで減っている。Steam APIを用いてデータを解析している「Steam Charts」でも同様の数字が見られる。

『H1Z1』は最大150人までの同時対戦に対応したバトルロイヤルゲーム。プレイヤーはパラシュートで戦場に降下し、武器やアイテムを揃えながら最後の生き残りになるまで死闘を繰り広げる。マッチの展開が速く、アーケード寄りの操作感となっているのが特徴だ。

『PUBG』への人口流出

人口が減った要因として真っ先に浮かぶのは『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(以下、PUBG)』の台頭だろう。たしかに「The Game Awards 2017」にてTrending Gamer部門を制した「Dr. Disrespect」氏のように、『H1Z1』の主要な実況配信者は続々と『PUBG』に戦いの舞台を移していった。いまでは『H1Z1』のTwitchのチャンネル数、視聴者数は『PUBG』の10分の1ほどの規模にまで縮小している。またSteamSpyの管理人Sergey Galyonkin氏が8月に公開した情報によると、『PUBG』は『H1Z1』『Counter-Strike: Global Offensive』『Payday 2』といったシューター系タイトルからユーザを奪うことに成功している(関連記事)。

ユーザ数3000万人越えを達成した『PUBG』

『H1Z1』は2016年後期よりTwitch連動、新規参入のハードルを下げる施策、通貨システムの整理などが続いたことも影響してか、ユーザ数が増え、2017年3月にはわずか半年でピーク時における同時接続ユーザ数を10倍にまで増やしている(関連記事)。その後も数字は伸び続け、7月のピーク時には15万人、平均でも8万7700人と順調に人気を集めていた。つまり2017年3月に『PUBG』が登場してからも、しばらくはユーザが増えていたのだ。SteamSpyが指摘するように『PUBG』にユーザを奪われていたとしても、それを上回る流入数が支えとなり、『H1Z1』は栄えることができた。『PUBG』のおかげでバトルロイヤル人気に火が付き、その恩恵が『H1Z1』にまで行き渡っていたということだろう。

ところが『H1Z1』のユーザ数は、8月後半から下り坂に入りはじめる。ちょうど『PUBG』のオフライン・トーナメント「Gamescom PUBG Invitational 2017」開催と同時期だ。このころから緩やかなカーブを描きはじめたことから、『PUBG』へのユーザ移行が本格化したと考えられる。同タイミングではじまった『PUBG』の有料クレート&キー販売にも(換金化による旨みという意味で)移行を促す効果があっただろう。ただ、そうした動きを経てもなお『H1Z1』のピーク時同時接続ユーザ数は10万人台に乗っていた。ユーザの減少が激しくなったのは9月中旬からである。

Steam Chartsより

『Fortnite』がNo.2の座を奪う

9月に何があったのか。『Fortnite Battle Royale』の登場である。それまで『PUBG』『H1Z1』がバトルロイヤル・ジャンルにおけるツートップを飾っていたが、彗星のごとく現れた『Fortnite Battle Royale』が話題をかっさらっていった。9月12日からのベータテスト期間を経たのち、9月26日に正式ローンチを迎え、初日から累計ユーザ数100万人を記録。1週間後には700万人、12月時点では3000万人(ピーク時同時接続ユーザ数は130万人)と驚異的なスピードで人口を増やしていった。

かくして『H1Z1』は『PUBG』にNo.1の座を奪われてから間もなくして、No.2の座すらも失う。しかも『Fortnite Battle Royale』は基本プレイ無料のタイトルである。『H1Z1』のようなアーケード寄りのバトルロイヤルゲームであることを踏まえると、『PUBG』よりも『Fortnite Battle Royale』への流出量の方が多いのではないかとすら思えてくる。さらにいえば、本来コンソール初のバトルロイヤルゲームとなるのは『Fortnite Battle Royale』ではなく『H1Z1』のはずだった。だがリリース予定が2016年夏から無期延期となり、その間に後発の『PUBG』『Fortnite Battle Royale』に先を越されてしまった。こうして、二大巨頭の登場を前に『H1Z1』は競争から外れ、バトルロイヤルブーム到来前の数字にまで人口が収斂していったのではないだろうか。

『H1Z1』の1時間あたり平均同時接続ユーザ数。昨年12月と同水準に戻っている。Image Credit: GitHyp

それでも単体で見れば成功の部類に入る

有料の『PUBG』、無料の『Fortnite Battle Royale』。同じ年に、同じジャンルの中でユーザ数3000万人越えのモンスタータイトルが2つも誕生したことで、バトルロイヤル隆盛の影に隠れてしまった『H1Z1』。本作はときおり大型アップデートを経てプレイ感覚がガラリと変わることもあるが、今後はこれまで以上に抜本的な改革がない限り再浮上するのは難しいだろう。アクティブユーザが最も多い中国圏では新しいバトルロイヤルゲームが続々と登場していることも忘れてはならない。12月にはテンセントが『H1Z1』の中国での独占運営権を獲得したことも発表されており、中国国内で増えつつある新星のライバルたちと今後どう戦っていくのか、気になるところである(関連記事)。

ちなみに国別の数字に注目すると、『H1Z1』における中国のアクティブユーザは8月時点で46.81%であったが、12月現在は34.68%にまで減少している(SteamSpy)。一方『PUBG』では、中国のアクティブユーザが同期間中22.9%から50%近くにまで増加しているというのも興味深い。

11月には『H1Z1: King of the Kill』から『H1Z1』に改名。12月には無料週間と大幅値引きを実施したが、大きな効果は見られなかった

ただ覚えておいてほしいのは、SteamSpyの調べによると『H1Z1』は12月時点で800万本近くも売り上げているということ。また2016年2月のスタンドアロン化から1年10か月が経過した今でもSteamトップ30(同時接続ユーザ数)に食い込むほどには遊ばれている。2016年8月には平均8000人台にまで低迷していたことを踏まえれば、長期的な観点から見たユーザ数はむしろ増えている。『PUBG』『Fortnite Battle Royale』との対比で見ると、落差が激しすぎて『H1Z1』が失敗しているように思えてくるが、実際には十分成功の部類に入るだろう。

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