ドリームキャストの開発キットから未発売のゲームが発掘、すでに完成した状態で20年弱のあいだ眠っていたことが確認される

Image Credit: Retrogames
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『Millennium Racer: Y2K Fighters』というゲームをご存知だろうか。『American Chopper』シリーズなどを手がけたCreat Studiosが開発し、1999年にCryo InteractiveからWindows PC向けに発売されたレースゲームだ。まずはそのゲームプレイ動画をご覧いただこう。

本作は未来感あふれる世界を舞台に、ホバーバイクに乗ってレースをする『F-ZERO』や『WipEout』タイプのゲームだ。ホバーバイクは任意にジャンプできることが特徴で、コースにはそれを利用した分岐やショートカットが多数用意されている。本作はその後、続編などこれ以上の展開はなく一作のみで終わってしまう。しかし、当時水面下ではドリームキャストへの移植がおこなわれていたようで、その思わぬ発見をThe Dreamcast Junkyardが報じている

それによると、Kuririn84と名乗るドリームキャストファンの人物がドリームキャストの開発キットをどこからか入手し、そのハードディスク内を調べたところ、この『Millennium Racer: Y2K Fighters』を示すファイルが入っていたそうだ。上述したように本作のドリームキャスト版は世に出ていないため、さぞ驚いたことだろう。しかし、そのファイルを実行してもゲームを起動させることができなかったため、彼は何人かの人物にファイルを送り調査を依頼したという。その内の一人であるjapanese_cake氏は、なぜ起動に失敗するのかコードを調べ、いくつかのファイルを操作したところ見事起動させることに成功する。彼によると、そのビルドはデモやアルファ版といった開発途上のものではなく、すでに完成している状態だったそうだ。

その後、japanese_cake氏やドリームキャストファンコミュニティによって、エミュレーターやドリームキャストの実機上で起動可能な本作のイメージファイルが配布され、確かにフルにプレイ可能であることが確認されている。下に掲載した動画はそのドリームキャスト版のものだが、移植のクオリティは申し分ないように見える。

このドリームキャスト版の開発はいつ頃おこなわれていたのかは不明だが、オリジナルのPC版の発売からわずか2年後の2001年には、セガがドリームキャストの製造終了とコンソールの製造販売事業からの撤退を表明している。もしかすると、ようやく移植が完了した矢先に発売するプラットフォームが無くなってしまったのかもしれない。短命に終わったドリームキャストにおいては、このような例は少なくなかったのではないだろうか。

一般にゲームメーカーでは数多くの企画の中から一部がプロトタイプ開発に進み、そしてそのまた一部が製品化に向けて動き出す。その過程で日の目を見ることができなかったプロジェクトは、のちにあらゆる形で我々の知ることになるケースがあり、先日もプロトタイプ段階で開発中止されたメガブロック版『Halo』についてお伝えした。また、昨年にはNEOGEOの開発用基板のフラッシュメモリから未発表の国産格闘ゲームが発掘されたことも話題になった。一般のゲーマーが本来目にするはずのものでないだけに、知られざる歴史に触れたような気がして毎回興味深く思う。ただ、こういった発見の背景には開発者たちの苦渋の決断があったであろうことも、あらためて思い起こさせてくれる。

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