最初からクライマックス、ラストダンジョンから始まる『Dark Lord: The Duel』 開発者インタビュー

インディーゲームに目を向けると、普通ではないゲームはたくさん存在する。しかし本作の独特の雰囲気のあるアートスタイルを見ると、その類とは思えない“何か”が感じられる。なぜラストから始まるのか、どのようなコンセプトなのか――。

Dark Lord: The Duel』は、ラストダンジョンから始まりラストボスとの決闘に勝つことを目的とする一風変わった趣旨のゲームだ。今年の夏ごろにコンセプトが公開されてからは、あまり進展がなかったように見えたが、10月にはACT2のレベルデザインに着手したことをTwitterで報告し、短時間ではあるもののプレイ動画も公開している。

インディーゲームに目を向けると、普通ではないゲームはたくさん存在する。しかし本作の独特の雰囲気のあるアートスタイルを見ると、その類とは思えない“何か”が感じられる。なぜラストから始まるのか、どのようなコンセプトなのか――。

本作を手がけるSad Jester Gamesは、イタリアを拠点とする小さな開発会社だ。代表者であるJonathan Gervasi氏を中心にスタッフはわずかに5人。Gervasi氏は数々のゲーム開発に携わり、ゲームデザイナーやプロジェクトマネージャー、クリエイティブディレクターと様々な役職を経験したのち、「より深みのあるゲーム」を生みだすために仲間とともにインディーゲームの開発者となる決断を下した。それぞれのスタッフは週の半分をメインに抱えている仕事に費やし、残った時間でゲームを開発している。「楽しく幸せになるゲームを作る」というコンセプトをもとに、日夜ゲーム開発に勤しんでいるという。

ゲームの開発経験があるからこそ、ゲーム開発がいかに困難であるかを理解していたと語っている。自分たちの力量を試すために、設立当初は小さなゲームを制作していた。それがGoogle PlayやWindows Marketで販売されている『RYG』だ。『RYG』はスマートフォンを縦方向に持ち落ちるまで進んでいく、“Temple runライク”のランニングアクションゲーム。難易度や操作性にはやや課題が残るが、サイバーな音楽やグラフィックには独特なセンスがあり、光るものを見せる。

処女作の開発を終えた彼らは、次にPC向けフリーゲーム『I’m falling』を開発する。『I’m falling』は、「対人不安の鬱」にさいなまれ絶望した若者が希望を見出していく短編ゲームだ。ゲームとしては落ちるのみで単純かつ短いものになっている。しかし、主人公の心境の揺れの描写など演出面は凝っており、こちらも光るものが感じられる。

そしてSad Jester Gamesにとっての3作目が『Dark Lord: The Duel』である。これまでの作品とがらりと変わり、陰鬱とした雰囲気のゲームだ。現時点では、ラストダンジョンからゲームが始まり「Dark Lord」という名のラスボスと戦うというコンセプトしか明示されていない。一体どういうゲームなのか、開発者であるGervasi氏に話をうかがった。

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『Dark Lord: The Duel』。背景には人の目のようなデザインが映っており、ダークな雰囲気を感じさせる。

 

――あなたは『RYG』と『I’m falling』を開発してきましたね。その2作と比べると『Dark Lord: The Duel』は、これまでとかなり異なった内容に見えます。何故『Dark Lord: The Duel』を開発しようと思ったのですか?

Gervasi氏:
これまで小さなゲームを2作開発して、もう少し複雑なゲームを作りたいと思ったんだ。2015年の7月に才能のあるアーティスト達に会い、すばらしいコンセプトが浮かんだ、それが『Dark Lord: The Duel』だ。数週間議論してから早速ゲームの開発に取り組み始めた。
――『Dark Lord: The Duel』はこれまでのプロジェクトよりも規模が大きいように見えます。PCやコンソール向けのリリース予定はありますか?

Gervasi氏:
現時点ではPCでのリリースを予定している。2016年の3月から5月頃からKickstarterを利用するつもりだ。それが成功すれば喜んでコンソールでリリースしたいね。開発にはUnityを使っているから、将来的に大きなトラブルもなく様々なハードにゲームを供給できる予定だよ。

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画面のいたるところに赤い棘があり、かなり難易度の高いゲームであることを匂わせている。

――『Dark Lord: The Duel』は「ファイナル」や「ラスト」といったテーマで開発されていますね。どうしてファイナルをテーマにしたのでしょうか。また、ゲームがファイナルから始まることの魅力を教えてください。

Gervasi氏:
多くのゲームの物語は、主人公のあまり経験のないところから旅が始まり、ラスボスを倒し終わりを迎える。現時点ではあまりストーリーの情報は公開できないが、従来のものとは違い、主人公の「August」は最初のシーンでラスボスであるDark Lordの居城である寺院にたどりつく。このゲームはこの寺院の中ですべての出来事が起こる。Dark Lordを倒すという使命を果たすためにね。しかしこの他にもこの世界には様々なしがらみがあるんだ。Dark Lordとの戦いはその一部でしかない。主人公であるAugustの過去などを理解できるような、十分な描写を用意するつもりだ。
――初めにこのゲームの画像や映像を見たとき、『悪魔城ドラキュラ』シリーズに似ている印象を受けました。なんらかのインスピレーションは受けていますか?

Gervasi氏:
『悪魔城ドラキュラ』や『プリンスオブペルシャ』などは有名であり名作でもあるので、現代のゲーム開発へ多大な貢献を果たしているね。しかし、比較はしたくない。これらのゲームは真の名作であり、僕らの作品がその域に届くことはないんだ。僕らは、そういうゲームをプレイして育ってきたし、『悪魔城ドラキュラ』のような素晴らしいゲームから自然と影響を受けているんだよ。
――『Dark Lord: The Duel』はかなり陰鬱としたゲームに見えます。Sad Jester Gamesは楽しく幸せになるゲームを作る、というコンセプトでしたよね。それでも暗いお話になるのでしょうか?

Gervasi氏:
幸福と闇はどんな開発者の心の中にも両方存在している。『RYG』は楽しさを追求し、『I’m failing』は深刻さ、憐れみ深さと幸福を描いた。しかし僕らはある時『Dark Lord: The Duel』で人の頭の中のゆがんだ部分である闇に見惚れてしまった。それからというもの、ある開発メンバーは頻繁に悪夢を見ると言っていたりするよ。
――あらためて『Dark Lord: The Duel』を紹介してください。

Gervasi氏:
『Dark Lord: The Duel』は5つの異なるステージに分かれたユニークなゲーム体験を提供するつもりだ。その5つはすべてDark Lordの寺院内で起こる。しかし道中で戦うことになるたくさんの奇妙なミニボスを用意しているし、ボーナスステージも用意している。ゲーム内の音楽は複数のジャンルにわかれた長いサウンドトラックで構成されている。トレイラーを公開できるのは来年の1月か2月になると思う。今僕らは必死に開発に取り組んでいるんだ。

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――今日では日本のインディゲームシーンはますます盛り上がりを見せています。日本のゲームファンにメッセージをお願いします。

Gervasi氏:
日本はビデオゲームの世界において、いつだって重要な場所なんだ。任天堂やセガはすばらしいゲームを作り続け、一時代を築いてきた。日本で、個人開発を基本とするインディーが支持され始めているのはとても嬉しいね。

しかし、日本のゲームファンに興味を持ってもらうのはすごく難しい。日本でゲームはとても深い歴史があるからだ。僕らは世界のあらゆる人々から興味を持ってもらえるようにゲームを開発している。『Dark Lord: The Duel』は特にハードコアなゲーマー向けの作品だ。ブラウン管テレビで子どもの頃に遊んでいたような熱中度で、何度も死にながら挑戦し続けるトライアル&エラーを重ねるような体験に待ち焦がれる人たちに送りたい。僕らの作品が日本のゲーマーに”価値あるもの”として気に入ってもらえることを願っているよ。

――ありがとうございました

 

インタビューからもわかるとおり、Jonathan氏は『Dark Lord: The Duel』に並々ならぬ熱意を抱いて開発しているようだ。まだ断片的な情報が多いが、ダークな雰囲気を感じさせる難易度の高い横スクロールアクションになりそうだ。開発状況に大きな進展があればまた続報をお伝えしたい。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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