鉄道会社運営シム『A列車で行こう9 Evolution』、Nintendo Switch 2では「レンダリングの見直し」に挑戦。技術挑戦もしつつ現代により近づけた、開発者に話を訊いた

久々のコンシューマー機への参戦となる『A列車で行こう9 Evolution』の注目ポイントや、今後の『A列車』シリーズの展開を開発者に訊いた。

アートディンクは6月4日、『A列車で行こう9 Evolution』を発売する。対応プラットフォームはNintendo Switch 2で、価格は税込1万2980円。特別記念切符シートなど豪華特典がついた40周年メモリアルボックス(特装版)も同時発売される。

『A列車で行こう』(以下、『A列車』)シリーズは、アートディンクが手がける都市開発鉄道会社経営シミュレーションだ。直接区画やエリアを設置し発展させていくほかの都市開発シミュレーションゲームとは異なり、鉄道会社の運営を通じて間接的に都市を発展させていく。

今回は、『A列車で行こう9 Evolution』(以下、『A9Evo』)でディレクターを務める小野 純明氏と、プロデューサーの清道 孝行氏にインタビューを実施。ナンバリングタイトルとしては久々のコンシューマー機への参戦となる本作の注目ポイントや、今後の『A列車』シリーズの展開を訊いた。

──自己紹介をお願いします。

小野 純明(以下、小野)氏:
ディレクターの小野 純明です。アートディンクには2011年にプログラマーとして入社しました。『A列車』プロジェクトには、ニンテンドー3DS版の『A列車で行こう3D』から参加し、それ以降はずっと『A列車』関連のプロジェクトに携わっています。

元々はグラフィックスプログラマーとして『A列車』プロジェクトに参加しました。Switch版で発売した『A列車で行こう はじまる観光計画』のDLC『A列車で行こう ひろがる観光ライン』からディレクターを任せていただいて、今作でもディレクターを担当しています。

──歴代『A列車』シリーズのディレクターはプログラマーの方が多いですが、プログラマーが就かれるのが伝統なんでしょうか(笑)

小野氏:
『A列車』シリーズの最初のディレクターが社長の永浜(永浜 達郎氏)で、ずっとプログラマーとして活躍していた方なので、その伝統が残っている気はします。『A列車』プロジェクトは複雑なゲームで、しかも仕様書がちゃんと整っていない場合もあって(笑)そういう状態で作品全体を一番把握できているのがプログラマーなので、プログラマーがディレクターをやる方向になっている気はします。

──『A9Evo』について、どのようなタイトルか教えてください。

小野氏:
『A列車』シリーズは鉄道会社の社長になって、駅を建て、線路を引いくことで街を発展させてくシミュレーションゲームです。直接街に手を加えるのではなく、列車を走らせて人やモノの流れを作ると、勝手に街が発展してくのが特徴です。

ナンバリング最新作の『A列車で行こう9』は2010年にPC向けに発売したゲームで、16年間コツコツとアップデートを続けてきました。今回Nintendo Switch 2という新しいハードが出て、このパワーなら移植できるのではないかと考え、『A9Evo』を開発しました。

『A9Evo』のベースになっているのはPlayStation 4で発売した『A列車で行こうExp.+ DX』で、これにグラフィックの改善、建物の追加、マウス操作の追加などの更新を行っています。また、任天堂プラットフォームに『A列車』のナンバリングが移植されるのは、1995年の『A列車で行こう3 スーパーバージョン』(スーパーファミコン)以来となります。久しぶりにナンバリングの本格的なシミュレーション系『A列車』を移植するので、チュートリアルの追加など、ユーザーの間口を広げるような追加要素も実装しています。

──『A9Evo』について、様々な要素が追加されていますが、注目してほしい要素はどこでしょうか。

小野氏:
特に見てほしいのは街の眺望の変化です。『A9Evo』は「現代に合わせる」をテーマにしていて、16年の間に現実で起こった街の変化を取り入れています。緑化建物やデータセンターが建っていたり、現代的な見た目のタクシーや水素バスが走っていたりと、現代的で見栄えが良くなるようにオブジェクトを追加しています。

レンダリングも近代的に見直しています。16年前に作ったレンダリングの仕組みはPhongライティングに近い古典的なものだったのですが、さすがに古く見えるので、ライティング周りの実装を見直しました。時間による街の移り変わりなど、情緒的な、街の表情の変化が良くなっているので、そのあたりに注目してほしいです。

──ここにきてビジュアル面が進化しているのは興味深いですね。単純な移植ではなく、レンダリングに手を入れたと。

小野氏:
技術的な話になりますが、昔は1方向から光が当たっている状態で、ライティングの計算をするやり方でした。それだと空の色の表情が建物に反映されないので、そのあたりを改良して、太陽の光+空の色が反映されたキューブマップを作って、リアルタイムに反映されるよう、イメージベースドライティングの手法を取り入れて対応しています。

──モデルやテクスチャに関しては、PC版と遜色ないように見えます。

小野氏:
モデルのポリゴン数やテクスチャの解像度は落としていません。元々のPC版が昔のPCを対象としていて、かなり節約した作りになっているためです。むしろ、見栄えがよくないモデルはテクスチャ解像度やポリゴン数を『A9Evo』で上げたものもあります。特にわかりやすいのは樹木ですね。

──逆に最適化をするうえで、削らないようにした部分、『A列車』シリーズにおいて譲れないポイントはどこでしたか。

小野氏:
『A列車』シリーズは俯瞰で見たときに美しく見えることを狙っているので、描画範囲はなるべく広くなるように、頑張って調整しています。また、『A列車』シリーズはユーザーが自由に物を配置できることで、大量のオブジェクトを描画するため、GPUに描画コマンドを投入するためのCPU側の前処理がいつもネックになるのですが、そこの並列化を結構頑張っています。

──小野さんが『A9Evo』で気に入っているシーンはありますか。

小野氏:
やはり夕暮れですかね。パッケージ画像のイメージにもなっていますが、夕暮れの空のグラデーションと、太陽の光がバーッと広がっている感じ、それを主観視点で見上げるのが、自分的には気に入っています。

──『A列車』シリーズは現在、PCの軸とコンシューマーの軸、2軸展開になっていると感じるのですが、違いは意識されていますか。

清道 孝行(以下、清道)氏:
おっしゃる通り我々も、2路線あると思っています。ニンテンドーDSで『A列車で行こうDS』をリリースしたのがすごく大きなポイントでした。『A列車』はマウスで遊ぶことが多いゲームだったので、ゲームパッドの十字キーとボタンで遊ぶのは結構難しく感じます。DSだとタッチペンでなんでも処理ができて、線路も簡単に引けるのがよかったと思います。

小野氏:
今回Nintendo Switch 2に移植したのも、Joy-Con 2をマウス代わりとして使えることが大きな理由のひとつになっています。

清道氏:
また、DS版にはこれまで無かったチュートリアルの収録により、『A列車』シリーズの遊び方を学べたことも相まって、あそこから任天堂プラットフォーム軸と呼べるものが始まったのだと思います。

PC版の『A列車』のナンバリングタイトルは、ゲームには違いないのですが、どちらかというとシミュレーターに近いです。自分で好きに街を作って眺めて楽しむ感じですけど、任天堂プラットフォームの軸はクリア条件が設定されていたり、時代の概念をもたせてみたり、観光要素を入れてみたり、いままでの『A列車』にはない要素をどんどん足して独自の進化をしています。

今回の『A9Evo』も、結構コンソール向けの仕様を追加しています。ナンバリングタイトルなのでPC版そのままで勝負したいところではあるのですが、出すハードごとの遊び方はあるので。

DS版や3DS版みたいにシナリオはないですけど、きちんと説明を付けたり、チュートリアルを入れたり、久々に任天堂ハードで出るナンバリングタイトルなので、買ってくれた人に対して、ちゃんと遊べるように、そういうところは意識しています。

──『A9』発売から16年、『A列車』シリーズで新展開があるたびにSNSで「A10」……つまり『A列車で行こう10』についての声が上がりますが、「A10」は考えていますか。

小野氏:
はっきりしたことは言えないですけど、まったく考えてないわけではないです。やるとしたら『A9』の継続じゃなくて、まったく新しい感じで作りなおしたいと思っています。

清道氏:
私も小野以上のことは言えないです(笑)

──ユーザーの声は聞こえているということですね(笑)

小野氏:
意識はしています。

──ありがとうございます。最後にお二方からユーザーに向けてメッセージをお願いします。

小野氏:
今回レンダリングや新しい建物を追加して、より現代っぽい見た目になるように調整したので、そこに注目して楽しんでほしいです。

また『A9Evo』は『A列車』シリーズ40周年の記念の作品として、これまでの『A列車』自体の進化も感じられるように、クオータービューモードを追加しています。過去のナンバリングタイトルっぽい見た目や、カメラ角度にできるようにしています。新しい方はもちろん、昔からの『A列車』ファンの方にも、ぜひ新しい街の景観を楽しんでいただきたいです。

清道氏:
40周年だからではないですけど、普段応援してくれている人はもちろん、まだ一度も遊んだことがない人にも、ぜひこれを機に遊んでもらいたいですね。

あと、今回『A9Evo』のロゴは、『A列車で行こうIV エヴォリューション』を踏襲して作っています。あの頃遊んでいたけど、もう遊ばなくなってしまった人にも、これを機にまた『A列車』に戻ってきてもらいたいと思っています。

──ありがとうございました。

A列車で行こう9 Evolution』は6月4日発売予定。対応プラットフォームはNintendo Switch 2で、価格は税込1万2980円。特別記念切符シートなど豪華特典がついた40周年メモリアルボックス(特装版)も同時発売される。

[書き起こし・編集:Junichi Matsui]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]

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