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都市オープンワールド『NTE』は、UE専門家いわく、モバイル版のパフォーマンスがかなりすごい。多彩な反応、大量のパロディ、UE技術がもたらす“生きた街”
Unreal Engineの専門家である中村匡彦氏に『NTE』の街並みに込められた技術的なこだわりのすごさを訊いてきた。

Perfect World Gamesは『NTE: Neverness to Everness』(以下、NTE)を配信中だ。本作は、個性豊かなキャラクターを操作するオープンワールドアクションRPGである。なかでも印象的なのが、Unreal Engine 5を用いたグラフィック表現だ。ビル群、下町、大自然、そして「異象(アノマリー)」が引き起こす超常的な演出が入り混じるヘテロシティは、街そのものがもうひとつの主役といえる存在感を放っている。
さらに本作は、PC版だけでなくモバイル版でもリッチな街並みを楽しめる点が注目を集めてきた。では、そうした表現はどのような技術や工夫で成り立っているのか。プレイヤーとして街を歩くだけでは見えにくいが、仕組みを知ればヘテロシティの見え方も少し変わるかもしれない。
そこで弊誌は、Unreal Engineに詳しいIndie-us Games代表であり、テクニカルアーティストでもある中村匡彦氏にインタビューを実施。前回は識者である中村氏の視点から、キャラに込められたシステムや演出の妙について聞いた。後編となる今回は『NTE』の街並みに込められた技術的な工夫を紐解いていく。
なおIndie-us Gamesは現在、Unreal Engineを用いたアクションゲーム『UNDEFEATED: Genesis』を開発中。気になる方はチェックしてほしい。
――中村さんと『NTE』というと、先日Xで投稿されていた、PC版とモバイル版の景色を比較したポストも話題になっていました。
中村匡彦氏(以下、中村氏):
比較すると面白いかなと思ってXにアップしたら、想像以上にバズってしまって(笑)ただ、『NTE』のモバイルでの描画は本当にすごいんですよ。2枚の画像は同じことをやっているようで、実際にはまったく違うことをやっているんです。
『NTE』の街には、とてつもなく膨大な量のコンテンツが入っています。NPCも車もオブジェクトも、全部が生きているかのように動いている。それがPCとモバイルで、ほとんど同じ体験として遊べることが本当にすごい。ほかのゲームだと、プラットフォームによって見た目や草木の量、車の量が変わり、体験も違って見えることがありますよね。『NTE』はその差がかなり小さい。それぞれのプラットフォームに対応しながら、ちゃんと街が動いていることに驚きました。
――中村さんでも、モバイルにおけるこれぐらいの描写は珍しいのでしょうか?
中村氏:
珍しいというか、ほぼほぼ事例がないですね。Unreal公式で『NTE』の事例が取り上げられているので、どういった機能を使っているかはある程度わかります。
たとえばオープンワールドで重要な機能としては、Unreal Engineの「World Partition」が使われています。広大な空間を自動的に分割して、必要な範囲だけをメモリにロードする仕組みですね。口で言うと簡単に聞こえますが、非常に扱いが難しい機能でもあります。私たちの『UNDEFEATED: Genesis』でも使っていますが、『NTE』はそれを使いこなすだけでなく、街に出てくるNPCや車にもきちんと存在感があるんですよね。
個人的に一番驚いたのは、車のタイヤを破壊できることです。たとえば坂道でタイヤを破壊すると、ブレーキがかからずに車が下っていくようなことが起こる。ああいうものは、ちゃんと作ろうと思うとめちゃくちゃ手間がかかるんですよ。普通はひとつのNPCや車にそこまで工数を割かないんです。
でも『NTE』では、NPCも車もさまざまな反応をします。車の上に乗ると文句を言われたり、車同士がぶつかるとそれぞれが反発して動いたりする。見た目以上のリアクションが返ってくるので、オープンワールドの中でキャラクターたちが生きているように感じられる。そこは本当にすごいところだと思います。
Unreal Engineには、そうした大量のキャラクターや車などを管理するための「Mass Gameplay」というシステムがあります。ただ、これも扱いが難しい機能です。一般的には、シンプルな動きをするNPCや車を大量に配置したいときに使うものですが、『NTE』のように生き生きと動かそうとすると、かなりの調整が必要になります。予算が潤沢なプロジェクトでない限り、ここまでやるゲームはほとんどないと思いますね。
――高いビルが並ぶ街を描くのは、どれくらい難しいのでしょうか。
中村氏:
メモリ上にたくさんのものを読み込む必要があるので、かなりハードルは高いです。特にモバイルは難しいですね。実際、モバイル版とPC版では差はあると思いますが、それでもリアルな街並みとして必要なものはちゃんと残っている印象です。
よりリッチなPC版では、Unreal Engine 5の「Nanite」という技術が効いているのだと思います。これは、オブジェクトのポリゴン数をあまり意識せずに細かいものまで描画できる機能です。一方で、昔からゲームには距離に応じてモデルの細かさを切り替えるLOD(レベルオブディテール)という仕組みがあります。『NTE』ではそれをさらに発展させた、階層付きのLODである「HLOD」を使っているようです。
たとえばビルの中に椅子や小物がたくさん入っていたとして、それを全部個別に描画すると非常にコストがかかります。HLODでは、それらを一定のまとまりとして扱い、遠くにあるものはシンプルに描きながら、見た目の違和感を抑えられる。『NTE』でも、建物を一定の単位で区切って描画しているのが見て取れます。

――「アッパレタワー」の展望台エレベーターでは、壁が透明になって外の景色が見えます。“エレベーター=ロード中”というイメージもありますが、こうしたシームレスな見せ方にも工夫があるのでしょうか。
中村氏:
そうですね。アッパレタワーでもエレベーターの中は最初、暗くて外が見えませんが、おそらくその間にロードしているのだと思います。「見えない状態」は、ゲームにとって非常に都合がいいんです。準備が整うまで外を見せないことで、裏ではいろいろな処理を進められる。ただ、ロード中にカクついてしまうと気づかれてしまうので、できるだけそれを感じさせない工夫もされているはずです。
――タワーの頂上からそのまま飛び降りることもできます。この場合、地上の街はどう処理されているのでしょうか。
中村氏:
一度読み込んでしまえば、次に表示するのは早いんです。Unreal Engineの仕組みで考えるなら、一定範囲は常に読み込んでいて、タワーから地上に落ちるまでの時間で必要なものを再度読み込んでいるのだと思います。
もうひとつ、「オブジェクトプーリング」という考え方もあります。オブジェクトやNPCを内部的に一度作ってメモリ上に確保しておき、画面外に置いたり非表示にしたりしておく。そしてプレイヤーが近づいてきたら、すぐに表示できるようにする。オープンワールドではよく使われる技術なので、『NTE』にもこうした“マジック”は間違いなくあると思います。
――グラフィックにおいて印象的な表現はありましたか。
中村氏:
グラフィック全体としては、中国系のゲームに多いリッチなアニメ調のセルシェーダー表現になっています。そのうえで、背景ひとつひとつの質が非常に高い。たとえばビルを登ると、部屋の中が見えますよね。
あれ自体は昔からある「インテリアマッピング」という技術です。通常はほぼ平面の見せ方で済ませることも多いのですが、『NTE』ではビルの中に奥行きを感じさせる構造が作られている。同じインテリアマッピングでも、かなり複雑に立体感を出しているのだと思います。

部屋の中の景色も、同じものばかりに見えないよう工夫されています。Unreal Engineには「PCG(プロシージャルコンテンツジェネレーター)」という機能があります。AIとはまた違う、一定のルールに沿って地形や建物などを自動生成する機能です。『NTE』はそうしたPCGを活用しながら、それだけに頼っていない。日本の作品を中心に、ユニークなパロディネタも大量に手作業で仕込まれています。基本的には全部手で作っているとのことで、背景に対するこだわりは見たことがないレベルですね。開発者のエンタメへの愛を感じます。

――開発者として参考になった部分はありますか。
中村氏:
改めて言っておきたいのは、PC版とモバイル版を同じタイミングでリリースしていることのとんでもなさです。モバイル版ではUE5の目玉機能であるNaniteなどが使えないため、昔ながらのLODを入れるなど、最適化の仕組みがPC版とは大きく違います。単純に手間が2倍以上かかっているはずです。
ほかのゲームでは、プラットフォームごとにリリース時期がずれることも珍しくありません。それを全部同じタイミングで出して、同じように動かしている。僕だったら、まずモバイル版だけを作らせてもらって、そこから数か月後に別のプラットフォームへ移植するぐらい時間をかけないと対応できないと思います。


さらに、違うハード同士で友達と一緒に遊べるクロスプレイもさらっと入っています。これも恐ろしいほどの労力がかかる部分です。そうした機能が当たり前のように入っていること自体が、『NTE』のすごさだと思います。
――ありがとうございました。
『NTE: Neverness to Everness』は、PC/PS5/iOS/Android向けに基本プレイ無料で配信中だ。なお、Indie-us Gamesは現在、Unreal Engineを使ったアクションゲーム『UNDEFEATED: Genesis』を開発中。気になる方はチェックしてほしい。
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