iOS版『フォートナイト』に関しEpic Gamesが今後規約を守ることを約束するも、Appleから“ブラックリスト”に入れられる。今後5年は再配信できない可能性

 

Epic GamesのCEO Tim Sweeny氏は9月23日、AppleによってApp Storeから削除された状態にある『フォートナイト』に関して、Appleのガイドラインを遵守するとして開発者アカウントの回復を求めたが、Appleは当面はこれを認めないと回答していたことを明らかにした。

Epic Gamesは2020年、モバイル版『フォートナイト』に独自の決済手段を実装した。しかし、Apple(およびGoogle)はアプリ開発者向けガイドラインにてこれを禁じており、同作をApp Storeから削除。開発者アカウントも停止している。これを受けてEpic Gamesは、反トラスト法(いわゆる独占禁止法)違反などとしてAppleを提訴し、今月初めに一審判決が出ていた。

まずは直近の動きを振り返っておこう。米国カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所での一審判決では、裁判所はAppleについて、反トラスト法が定める独占企業とは認められないと結論。Epic Gamesに対して、独自の決済手段を利用しAppleへの30%の手数料を迂回して得た収益の一部を、契約違反の損害賠償金としてAppleに支払うことを命じた。

一方でAppleに対しても、同社によるメーカーへの規制は反競争的であり、消費者の選択を違法に妨げていると指摘。外部の決済手段への誘導を禁じるガイドラインを撤廃するよう、Appleに永久的差止命令を出している。Appleは、判決が出された9月10日から90日以内に、少なくとも米国向けのApp Storeのアプリ開発者向けガイドラインを改訂しなければならない。

この判決についてAppleは、反トラスト法違反が認められなかったことで、同社の主張どおりであると評価。一方のEpic Gamesは、永久的差止命令を得たものの、開発者や消費者の勝利とはいえない内容だとして判決から2日後に控訴している(関連記事)。

この裁判を経てEpic GamesのCEO Tim Sweeny氏は、App Storeを統括するAppleフェローPhilip Schiller氏に、9月16日にメールを送っていたことを明らかにした。内容はというと、Appleのアプリ開発者向けガイドラインを遵守することを約束し、開発者アカウントの回復を求めるものだった。すでに損害賠償金600万ドル(約6億6000万円)をAppleに支払い、独自決済システムのサーバーも停止したという。

Sweeny氏が遵守するとしたガイドラインは、裁判所の命令どおりに、外部の決済手段への誘導を認めるよう改訂されることが前提。そして開発者アカウントが回復し次第、『フォートナイト』をiOSおよびMac向けに再配信する考えを示している。また同時に、iOS版『フォートナイト』をUnreal Engineの開発・テストプロセスにふたたび組み込むとし、これはUEを利用するほかの開発者の利益になるだろうとした。

この要請に対しAppleは、9月21日に弁護士を通じて回答したという。そのなかで同社は、Epic Gamesは故意に契約違反および背信行為をおこなったとあらためて指摘。開発者アカウントの停止などは、Appleがもつ契約上の権利を行使したまでであり、合法かつ有効だとする裁判所の言葉を引用している。また、iOS版『フォートナイト』の再配信にあたって独自の決済手段導入を諦めることはないとTim Sweeny氏が過去に発言していたとし、これまでのEpic Gamesの二枚舌的な行為も考慮したうえで、AppleはEpic Gamesの開発者アカウントの回復は現時点では認めないと回答した。連邦地方裁判所の判決が確定するまでは、今後ふたたび要請があっても検討もしないとのこと。

Appleからの回答を受けてTim Sweeny氏は、iOS版『フォートナイト』はAppleの“ブラックリスト”に入れられるとコメント。判決が確定するまでには5年はかかる可能性があるとし、その間はブラックリスト入りが続き、同作の再配信は見込めないという考えを示した。

また同氏は、これまでAppleが「皆と同じルールを守るなら、Epic GamesのApp Storeへの復帰を歓迎する」と各所に声明を出していたことに触れ、これは嘘だったと指摘。ふたたび市場独占による力を乱用し、約束を反故にしたと述べている。さらに、Appleが却下理由のひとつに挙げたSweeny氏の過去の発言についても、実際には独自決済手段への具体的な言及はしていないと語り、同氏は何のことを言っているのかわからないと困惑している。

Epic Gamesは、今回の一審判決については敗訴であると受け止めているそうで、公正な競争環境を勝ち取るまで戦いを続けるとして控訴している。Appleはこうした状況を考慮して、Epic Gamesの開発者アカウントの回復を当面認めない判断を下したのかもしれない。ただSweeny氏は、一審判決ではAppleのガイドラインの違法性を認めているとし、その条項に異議を唱えたからといってブラックリストに入れるということは許されないとコメント。規制・立法措置の必要性がより明確になったとして、裁判を続ける姿勢を改めて強調している。

Tim Sweeny氏の見込みどおりであれば、iOS版『フォートナイト』がApp Storeにて再配信されるまでには、さらに5年はかかることになる。とはいえ、Appleは今年12月初旬までに、開発者向けガイドラインを改訂することを裁判所から求められている。Epic Gamesはそれを遵守するとしており、実際に改訂された際に、AppleとEpic Gamesはお互いにどのような対応を取るのか注目されそうだ。