Epic Gamesのボス、『フォートナイト』のSteamなどでの配信について条件付きでOKと明言。開発者に良い条件を提示するストアならどこでも提供する


Epic GamesのCEO Tim Sweeney氏は12月12日、同社が開発・運営する人気ゲーム『フォートナイト』について、開発者に良い条件を提示するストアであればどこであれリリースするとし、例としてSteamで配信することも可能との立場を示した。

Tim Sweeney氏の今回の発言は、Epic GamesがGoogleを反トラスト法(独占禁止法)違反で訴えていた裁判において、Epic Games側が勝利したことが背景にあるようだ。Epic Gamesは、Google Playストア(およびAppleのApp Store)においてプラットフォーマーが自社の決済手段の利用を開発者に強制していることについて、市場を独占する地位の濫用であると主張。そしてモバイル版『フォートナイト』に独自の決済手段を実装し、Googleが同作をストアから削除したことで、裁判へと至った。この裁判は、先日12月12日に陪審員がGoogleの反トラスト法違反を認める評決を下している(関連記事)。

この評決を受けて、アプリ開発者で知的財産権について詳しいFlorian Mueller氏が、今後AndroidにGoogle Playストア以外のアプリストアが参入できるようになる可能性が出てきたと指摘。その場合、参入アプリストアがGoogleと協力関係を築くのか競争するのかは分からないと述べた。そこに、Sweeney氏がリプライによって「Epic Gamesは(Googleと)競争するだろう」とコメントした。

一方でSweeney氏は、(競合する)ストアへの『フォートナイト』の提供もおこなうだろうとし、ストアの例としてSteamやMicrosoft Store、One Storeなどを挙げた。Android版に限らず、PC版においてもオープンな立場ということのようだ。『フォートナイト』のPC版は現状Epic Games launcher(Epic Gamesストア)でしか配信されていないため、Steamでの配信に期待するファンは多いかもしれない。

ただし同氏は、あらゆる開発者に良い条件を提示するストアに提供するとし、前提条件があることを付け加えた。“馬鹿げた30%の手数料”の終焉は近いとも述べており、ストア手数料がその条件にあたる模様である。

SteamやGoogle Playストア、またコンソール各社のストアなどでは、基本的に30%の手数料が設定され、開発者はゲームなどを販売した収益からプラットフォーム側に支払う。一方で、Epic GamesのEpic Gamesストアでは12%に設定され、開発者の取り分を増やしたことで注目された。Tim Sweeney氏は自社ストアの開設当時、ストア運営費をまかないつつパートナーに非常に競争力のある提案をおこなうためとして、12%に設定したと説明している。

実はSweeney氏はこの当時にも、自社タイトルのSteamへの提供の可能性について言及していた。同氏は、もしSteamが条件なしで88%の収益配分(=12%の手数料)を採用するなら、Epic Gamesストアでの独占タイトル戦略を取りやめ、さらにEpic GamesタイトルのSteamへの配信を検討するだろうとした。

当時は具体的なタイトルには触れなかったが、今回は具体的に『フォートナイト』を挙げて、Steamなどへの提供に言及したかたちだ。また、今回は“検討(consider)”という言葉は使っておらず、より前向きな姿勢であることがうかがえる。もっともSteamを運営するValveが、一定の収益を上げたゲームに対して手数料を引き下げる施策を導入しているものの、無条件で手数料を引き下げるかどうかは未知数だ。


ちなみに余談であるが、Tim Sweeney氏は12月13日に、『フォートナイト』のSteam Deckへの対応についてもコメントしている。現時点で同作はSteam Deckで動作しない。Sweeney氏はSteam Deckのハードウェアが大好きだとし、Valveは素晴らしい仕事をしたと賞賛。ただ、『フォートナイト』を動作させるにあたってはLinuxに関する問題が存在し、対処するならばもっとプログラマーが必要だとした(The Verge)。

同氏がいう問題とは、チート対策のことのようだ。Epic Gamesが開発するチート対策システムEasy Anti-Cheat自体はSteam Deckをサポートしているものの、Sweeney氏は以前、Steam Deckが採用するLinuxベースのSteamOSにはカスタムカーネルを含む幅広いカーネル設定が存在し、そのうえで大規模なチート行為との戦いをおこなうことに不安を示していた。そうした不安が、今も払拭できていないということかもしれない。