Perfect World Gamesは4月29日、『NTE: Neverness to Everness』(以下、NTE)をリリースした。本作はPC/PS5/iOS/Android向けに配信中の、基本プレイ無料・超自然都市オープンワールドRPGだ。プレイヤーは骨董品屋エイボンに所属する“異象ハンター”として、大都市「ヘテロシティ」を巡り、街に潜む異象を収容・解決していく。

弊誌はPC版『NTE』を先行プレイする機会を得た。本連載では、異象が潜む大都市・ヘテロシティの気になるポイントを全10回にわたって掘り下げていく。今回は第5回であり、第4回はこちら。なお先行プレイのため、一部仕様が製品版とは異なる場合がある点には留意してほしい。

今回取り上げるのは、刑務所と脱獄要素だ。以前弊誌では、正式リリース前の「共存テスト」にて、本作の犯罪システムと刑務所生活について紹介した。街で犯罪行為を重ねれば警察に追われ、捕まれば孤島の刑務所へ送られる。刑務所内では実時間の経過を待ち、刑務作業をこなし、限られた行動範囲の中で過ごすことになる。

ただ、正式リリース版であらためて刑務所に入ってみると、この場所はさらに妙な方向へ広がっていた。刑務所生活そのものにも小ネタは多いが、とくに印象的だったのは脱獄方法の幅広さである。スプーンで壁を掘るような王道の脱獄から、死んだふり、さらには有刺鉄線の上を歩いて無理やり塀の外へ出る隠しルートめいた方法まである。罰として送られる場所のはずなのに、実際は短時間で複数の脱獄ルートを巡れる“脱獄テーマパーク”のようになっていた。

本稿では、『NTE』の刑務所における脱獄ルートをいくつか取り上げ、その奇妙な作り込みを紹介していく。

わざわざ死んだふりをする

まず印象に残るのは、「生と死の狭間で」というルートだ。やることは名前の通り、死んだふりである。

刑務所は4つの時間に区切られており、夜間の自由時間には囚人たちと触れ合うことができる。刑務所内で見つけたアイテムの物々交換をもちかけられたり、落ちているアイテムを集めたりできる時間だ。そんな自由時間に囚人たちと話していると、困っている人物に出会う。

どうやらその囚人は、「エリ」というキャラクターを崇拝しているらしい。エリのぬいぐるみを手に入れてほしいと頼まれるのだが、当然ながら刑務所内でそんなものが簡単に見つかるはずもない。そこで調達屋を通じてなんとかぬいぐるみを入手し渡してみる。するとお礼として、なぜか特製の「麻痺薬」を受け取ることになる。1滴注射するだけで、しばらくの間、多臓器不全を偽装できるという劇薬だ。

その後は医務室へ向かい、看守や医者の目を盗んで注射器を使い、自分に麻痺薬を打つ。すると主人公は仮死状態になり、死体として外へ運び出される。最後は運搬中のボートから海へ飛び込み、そのまま逃げることになる。

ルート自体に、アクション的な難しさはあまりない。注射器を盗む際に見つからないようタイミングを見る必要はあるが、ステルスゲームとして緊張するというよりは、手順の奇妙さを楽しむタイプの脱獄である。そもそも本作の刑務所は、真面目に服役しても数日で出られる。それなのに、わざわざぬいぐるみを調達し、薬を用意し、自分に注射して死んだふりをする。労力のかけ方が間違っている気もするが、「できてしまうのだから仕方ない」と言わんばかりの、何でもありな感覚を象徴するルートだ。

外へ運ばれる場面にも妙な味わいがある。死体だと思われている主人公を乗せたボートで、看守たちは「急に気を失うことがあるのか」といった調子で、どこかのんきに会話している。その横で主人公はタイミングを見計らい、ずるりと海へ落ちるように脱出する。大げさな脱出劇ではなく、淡々と運ばれてあっさり逃げる。その温度差が、本作らしいおかしさになっている。

“脱獄している感”があるステルスルート

一方で、「闇に溶け込む」は、今回確認できたルートの中でもっとも脱獄らしい脱獄だった。きっかけになるのは、昼間の運動時間だ。バスケットコートをのぞくと、いじめられている「ヤドカリ」という囚人に出会う。最初は刑務所内の小さなイベントに見えるが、彼女を助けたことが、のちに脱獄の導線へとつながっていく。

主人公が懲罰房に入れられたあと、ヤドカリは主人公を訪ねてくる。そして彼女は、物体を移動させる自身の異能を使い、脱獄のきっかけを作ってくれる。このルートでは、ヤドカリの異能を利用してスプーンをダクトに送り、電気系統を壊してロビーへ侵入。そこから裏口を通って脱出を目指すことになる。

ロビーでは蛇口の水を流して看守の注意をそらし、ロッカーに隠れてやり過ごす。主観視点で目の前を看守が通る場面はシンプルだが、ほどよい緊張感がある。裏口の鍵を手に入れたあとは屋外へ出て、暗い刑務所の敷地内を進んでいく。

とくに印象的だったのは、屋外へ出たあとだ。ライトの動きを見ながら遮蔽物に隠れ、見つからないよう出口へ向かう。ライトや看守の判定は極端に厳しいわけではないが、雑に進めばちゃんと見つかるくらいの緊張感はある。捕まれば拘留期間が延び、翌日にやり直しとなるため、ある程度は慎重に動く必要がある。

派手な大捕物が展開されるわけではない。それでも、闇夜に紛れて動き、塀の外が近づいていく高揚感はしっかりある。死んだふりのような奇策とは違い、「闇に溶け込む」ルートはかなり素直に脱獄をしている。複数あるルートの中にこうした正統派が混ざっていることで、刑務所の遊び場としての幅も広がっている印象だ。

無茶な抜け道も認めてくれる

そして、もっとも遊び心を感じたのが、ジャンプを駆使して直接塀の外へ出る、隠しルートめいた脱獄だ。

運動時間には、フェンスで囲われた運動場に出ることができる。ただし運動場とはいえ、そこは高い塀に囲まれた刑務所の内側である。普通に過ごしていれば、外へ出られる場所には見えない。だが、この刑務所には脱獄のために入ったようなものだ。壁があるなら越えてみたくなるのが、囚人の性というものである。

しばらく試行錯誤していると、コンクリートブロックや開いた扉を駆使することで、フェンスの上にある有刺鉄線へ登れることに気づいた。さらにそこから有刺鉄線の上を歩き、外周の壁に設置されたライトへ飛び移ると、そのまま塀の外へ出られてしまった。

一度出てしまえば、特に見つかることも引き戻されることもない。そのままヘテロシティの生活へと戻ることが可能だ。白昼堂々、己の身体能力だけを駆使して外へ出る。ある意味では、もっとも純粋な脱獄方法といえるかもしれない。

やっていることは派手だが、成功には少しコツがいる。フェンスの上は、ゲーム的にいかにも“登れそう”な見た目ではない。角度をつけた2段ジャンプを駆使して、無理に登る必要がある。有刺鉄線の上も、まっすぐ進めばよさそうに見えるが、実際には足場の判定がわかりづらく、走ると少しのズレで落ちやすい。なぜか看守に気づかれることはないため、慎重に視線を合わせつつ、ゆっくり歩いて進むくらいがちょうどいい。

成功しても、脱獄に成功したような大げさな演出はない。そのため、最初はゲームの隙を突いたような気分になる。このルートは手順だけ聞くと、バグやグリッチの類にも思える。実際、この方法はSNSなどでも、無理やり出られてしまう脱獄方法として話題になっていた。

ただ面白いのは、このルートで脱出すると、その瞬間に「通行可能エリア」という実績が解除されることだ。つまり、正規か非正規かはともかく、ゲーム側はこのルートを脱獄方法のひとつとしてきちんと認めているということになる。最初から意図されていたのか、偶然の発見をあえて残しているのかはわからない。いずれにせよ、無茶に見える行動に対して、「それも“通行可能エリア”である」と返してくる。その懐の深さに、思わずニヤリとさせられた。

刑務所内を歩くほど、脱獄の入口が見つかる

もちろん、刑務所にはもっと王道の脱獄方法も用意されている。食堂でスプーンを盗み、自室のポスター裏にあるレンガを削って下水道へ逃れるルート。刑務所内でシーツや古い囚人服を集め、監視塔から手作りのロープを使って脱出するルートなどもある。

こうした複数のルートの面白さは、刑務所での生活導線と結びついている点にもある。食堂へ行けばスプーンが目に入り、自室に戻ればポスター裏の違和感に気づく。夜の自由時間に囚人と話せば、物々交換や調達の糸口が見つかる。刑務所内を歩き回り、手に入るものを少しずつ集めているうちに、脱獄の準備が整っていく。

あらためて複数ルートを巡ってみると、刑務所全体の見え方が少し変わる。穴掘り、ロープ、死んだふり、裏口、塀ジャンプ。ひとつひとつは短めの寄り道だが、並べてみるとやけにバリエーション豊富だ。一方で、全ルートを遊ぶのにそこまで長い時間はかからない。筆者の場合、2時間ほどで一通りの脱獄方法を試すことができた。刑務所での過酷な生活を体験するというより、短時間で複数のアトラクションを巡る感覚に近い。

ちなみに犯罪行為をして警官に徹底抗戦しなくとも、無抵抗で降伏する、交番に自首するなどすれば、すぐに刑務所へ入ることができる。捕まるまでの導線も妙に気軽で、いざ入ってみれば、塀の中には囚人とのイベントやアイテム集め、複数の脱獄ルートが待っている。新ルートを開拓するごとに、刑務所内で交換できるアイテムやファンスなどの報酬も貯まっていく。

罰のはずなのに、いつの間にか次はどの方法で逃げようかと考えている。真面目に服役するよりも、刑務所内を散策し、気になる導線をたどり、別の脱獄方法を試したくなる。そうした気軽さも含めて、この刑務所は日帰り感覚の愉快な遊び場になっている。

行かなくてもいい場所まで、遊び場になっている

『NTE』の刑務所は、本格的な刑務所シムではない。厳密な生活管理や重いペナルティを期待すると、むしろ肩透かしを食らうかもしれない。刑務作業は簡単で、脱獄も短めのイベントとしてまとまっている。全体の手触りはかなり気軽だ。

だが、ヘテロシティの中にある“刑務所をテーマにした遊び場”として見ると、この場所はかなり楽しい。死んだふりで外へ運ばれる。裏口から慎重に逃げる。有刺鉄線の上を歩き、塀を飛び越える。ひとつひとつのルートにド派手な演出があるわけではないが、刑務所内を散策していれば新たなルートが見つかり、試すたびに別の味がある。

そもそも、ゲーム内とはいえ犯罪をしたくないプレイヤーであれば、刑務所に一度も行かない可能性もある。そんな場所に、複数の脱獄ルートや小さなイベント、囚人服といった限定の報酬まで用意されているのは、良い意味で本作らしい。メインコンテンツから外れた場所にも、街の一部としての遊びを置いておく。そこに、『NTE』がヘテロシティを単なる広いマップではなく、寄り道の積み重なった都市として作ろうとしている気概が見える。

犯罪は褒められたことではない。だが『NTE』では、捕まった先にまで妙な遊びが待っている。刑務所で服役し、囚人と話し、アイテムを集め、次はどの方法で逃げようかと考える。そうしているうちに、罪を償う場所だったはずの刑務所は、いつの間にか小さなテーマパークのようになっていく。ヘテロシティの寄り道は、塀の中にまで続いていた。

NTE: Neverness to Everness』はPC/PS5/iOS/Android向けに配信中。

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