基本プレイ無料都市オープンワールドの『NTE』のキャラは「1キャラで1ゲームの軸にできる」ぐらい性能と仕様が突き抜けている。UE専門家に訊く、『NTE』の技術的な異常なこだわり

Unreal Engineの専門家である中村匡彦氏に『NTE』の技術的なこだわりのすごさを訊いてきた。

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Perfect World Gamesは『NTE: Neverness to Everness』(以下、NTE)を配信中だ。本作は、個性豊かなキャラクターを操作して「異象(アノマリー)」を収容するオープンワールドアクションRPGである。各キャラは見た目やステータスが異なるだけでなく、一部のキャラには「重力操作」や「コピー」といった特殊な能力も付与されており、戦い方や街の探索を大きく変えるポテンシャルを持っている。

加えて本作は、Unreal Engine 5のリッチな映像表現や、異象が現実を歪めるSCP的な演出もしばしば注目を集めてきた。では、そうした表現はどのような技術や工夫で成り立っているのか。普段見ているキャラや演出も、背景に使われている技術を知ることでより楽しめるかもしれない。

そこで弊誌は、Unreal Engineに詳しいIndie-us Games代表であり、テクニカルアーティストでもある中村匡彦氏に話を聞いた。本稿では識者である中村氏の視点から、『NTE』のキャラクターや演出に込められた技術的な工夫を紐解いていく。

なおIndie-us Gamesは現在、Unreal Engineを用いたアクションゲーム『UNDEFEATED: Genesis』を開発中。気になる方はチェックしてほしい。

――『NTE』はキャラクターごとの固有能力が特徴のひとつです。技術的に気になった部分はありますか。

中村氏:
ピックアップキャラクターに実装されている固有能力は、かなり気になりました。これまでに登場しているのは、ナナリの重力制御、潯の時間停止、レクイエムのコピー能力ですね。これらは、ほかのゲームならゲーム1本単体でキラーコンテンツと言われるような、柱になるシステムだと思います。それがいちキャラクターの能力として入っている。

しかも、どれも作るのが大変なだけでなく、デバッグコストが非常に高い機能です。たとえばナナリの重力制御は、Unreal Engineに「Custom Gravity」という機能があるので、機能自体が特別珍しいわけではありません。ただ、『NTE』の世界には大量のオブジェクトがあり、プレイヤーも自由に動き回れる。そこで重力の向きを変えると、何が起こるかわからないんです。

実際、重力の方向が乱れて吹っ飛ぶような不具合がアップデートで修正されていましたが、おそらくそうしたトラブルも想定済みなのだと思います。それでも「バグが出るかどうかより、面白いからやろう」という意気込みを感じる。問題が起こりやすい機能を、ゲームの売りとして動かしているのは本当にすごいことです。

――普通なら、不具合が怖いから避けようとなりそうです。

中村氏:
そうですね。想定はできても、デバッグしようとするととんでもないコストがかかります。『NTE』に関しては、そういう大変さをもう諦めている感じがします(笑) 潯の時間停止もかなり大変な機能です。Unreal Engine的には、CPUで動くものは比較的止めやすいのですが、GPUで動いているエフェクトはそのままでは止めにくい。実際『NTE』で時間を止めても、風や波などは動いています。一方で、雨や雪は一度エフェクトを消して、雨粒や雪が止まったような別のエフェクトを入れることで、時間が止まっているように見せている。工夫がうかがえる調整ですね。

――技術者として見たらより細かいところも別の見方できるわけですね。

中村氏:
普通に遊んでいるぶんには気にならないかもしれませんが、開発者目線だと、動いているところと止まっているところの差がハッキリしているなと。もしデバッグで「止まっていませんけど」と言われたら、「直したくないんだけど」と言ってしまうかもしれません。大変すぎて(笑)

レクイエムのコピー能力もとんでもない機能です。カービィのコピー能力と同じで、敵が増えれば増えるほど能力も増えていく。つまり新しい敵が出るたびに、新しい能力を実装し続けなければならない。“無限作業編”が始まるわけです。 さらに、能力を追加するたびに既存要素との組み合わせで不具合が起きないか確認する必要もあります。コピー能力そのものも物量が多く、特殊な能力を持った敵が増えればさらに大変になる。僕はやりたくないですね(笑)でも、だからこそ面白さ優先で入れているのだろうとも感じます。

――PC版ではパストレーシングなども導入されています。ライティング表現についてはどう見ましたか。

中村氏:
まず『NTE』では、Unreal Engineの「Lumen」というライティング機能のうち、ソフトウェアレイトレーシング型を使っているはずです。ハードウェアレイトレーシング型に比べると、高性能なGPUがなくても使いやすく、シンプルなぶん動作も速い。

そのうえで、PC版にはレイトレーシングやパストレーシングがありますが、Lumenのレイトレーシングとは実は別物なんです。Lumenのソフトウェアレイトレーシングでは正確な反射表現ができません。『NTE』でのLumenはグローバルイルミネーション(大域照明)としての機能と割り切っていると思います。改めて解説をすると、レイトレーシングは、画面上に見えるものに対して光線を飛ばし、どの方向に反射するかを計算するものです。ただ、すべてを計算すると非常に重くなるので、必要なものに絞って計算します。 パストレーシングは、光の線を飛ばして反射をできる限り多く計算するものです。反射するものが多いほどリッチに見えやすく、『NTE』でいえば雨の街中などは恩恵を受けやすいですね。ただし、かなり重い機能なので、リアルな表現を楽しみたい一部のプレイヤー向けの設定だと思います。

通常設定
パストレーシング設定

――天候の変化で雪が積もる表現も印象的です。

中村氏:
あれは「レンダーテクスチャ」という技術で、テクスチャに情報を描き込むことで表現しています。歩いた場所に足跡のテクスチャを描き込むような仕組みですね。雪の場合は、ポリゴンの頂点を動かして凹凸を出すこともできます。ずっと残しておくと重くなるので、時間が経つと消える一時的な表現として実装されているのだと思いますが、それを当たり前のように入れているのは素晴らしいですね。

――演出面で気になったところはありますか。

中村氏:
まず「異象空間」の演出ですね。ホラーチックな空間になったり、海の中のトンネルを走っていたら突然開けた荒野に出たりと、印象的な演出がたくさんあります。見せ方が本当に上手い。

作り方自体はUnreal Engineの技術で理解できますが、実際に作るとなると非常に手間がかかります。たとえばトンネルでのワープは、ポータルの移動中に空間を切り替えているはずです。ただ、その切り替えの瞬間をほとんど違和感なく見せている。異象空間にはそうしたユニークな演出が大量に詰まっていて、よくここまで作ったなと思います。

もうひとつはイベントシーンの映像です。『NTE』のカットシーンは演出のレベルがかなり高いのですが、シーンに入るとキャラクターの衣装がデフォルトに戻るんですよね。今のゲームではリアルタイムにスキンが反映されるものも多いですが、『NTE』はおそらくプリレンダリングの映像になっています。 逆に言えば、そこを割り切ることで映像のクオリティを大きく上げている。映像チームだけでも相当なコストがかかっていると思います。プリレンダでなければ難しいような演出が多いので、もしリアルタイムだったら「こんなものをどうやって作ったんですか」と目を疑いますね(笑)

――開発者として取り入れたい表現はありましたか。

中村氏:
表現がどれもアイデアに満ちているので、ひとつに絞るのは難しいですが、異象空間に入るときの演出は印象的でした。いきなり画面がぐるっと回って逆さまになったり、空間がガラッと変わったりする。作り方はわかりますが、事前準備がとても大変です。戦闘に入る予兆としてもわかりやすいですし、ロードを挟まず突然空間が変わったように見せる演出は、真似したい気持ちと大変さの両方を感じますね。

――ありがとうございました。

NTE: Neverness to Everness』は、PC/PS5/iOS/Android向けに基本プレイ無料で配信中だ。なお、Indie-us Gamesは現在、Unreal Engineを使ったアクションゲーム『UNDEFEATED: Genesis』を開発中。気になる方はチェックしてほしい。

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Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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