「平均的なゲーマーなどもはや存在しない」との大規模分析。好みはどんどん細分化、“万人ウケ狙い”は厳しい時代に

ゲーム業界向けの分析レポートである「Gaming Report」の2026年版にて、ゲーム嗜好の多様化に伴う“平均的ゲーマー像”の消失が語られている。

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経営コンサルティング会社Bain & Companyは8月18日、ゲーム業界向けの分析レポートである「Gaming Report」の2026年版を発表した。同報告書では主に、ゲーム嗜好の多様化に伴う“平均的ゲーマー像”の消失が語られている。近年では、さまざまなジャンルにゲーマーの興味が分散しており、ターゲットとなるプレイヤー層を明確にしないゲーム開発にはリスクが存在すると指摘。また、慣れ親しんだゲームとは大きく異なる新作を積極的に求めるゲーマーも少ないことから、ゲームを届けたいプレイヤーを絞った積極的なアプローチが重要になるとしている。

Bain & Companyは米国ボストンに本社を置く世界最大級のコンサルティング会社だ。設立は1973年。「MBB」と呼ばれる戦略コンサルティング業界のトップ3(McKinsey、BCG、Bain)に名を連ねる大手企業で、ゲーム業界に関しても2024年以降、毎年「Gaming Report」を発表している。今回の2026年版はその3回目だ。


ゲーマーそれぞれにこだわりのジャンル、プレイ時間と支出は上位層に偏り気味

調査は世界中の5300人以上のプレイヤーを対象に行われ、好きなジャンルやプレイ時間、ゲームへの支出にくわえ、AIに関する意見や開発元ストアの利用状況など、さまざまな項目に関する回答が集計・分析されている。中でも強く主張されているのが、“平均的なゲーマー”という概念がもはや存在しないという点だ。

どんなジャンルなら時間を惜しまず使うかという問いに関する回答

上のグラフは回答者が好むジャンルの割合を表したものだ。「プロによる物語重視」のゲームを好む割合が最も高いが、それでも26%にとどまっている。「どのジャンルも概ね同じで雰囲気による(They’re roughly equal / mood-dependent)」との回答も20%ほどであり、必ずしもストーリー重視のゲームが一強というわけではないことが見て取れる。つまり、ひと口にゲーマーと言っても、特定のジャンルに人気が集中しているわけではなく、好みは幅広く分かれているのだろう。

上部は世代ごと、下部は国ごとの「オープンサンドボックス・ユーザー生成コンテンツ」を好む割合を表すグラフ

また、世代別や国別の「オープンサンドボックス・ユーザー作成コンテンツ」に対する反応も分かれている。これは主に『Roblox』や『マインクラフト』のようなゲームを指していると思われるが、29歳までの若年層ではそれぞれ約3人に1人がそうしたゲームを好ましく思うとした一方、年齢を重ねるにつれ割合は如実に減少している。国別では、日本でこうしたゲームを好む割合は約10人に1人と、他国に比べても低い。今回の調査のみでは日本におけるユーザーの好みを断定はできないものの、ほかの地域と比べると、そうしたジャンルのゲームの人気が控えめな傾向もうかがえる。

こうしてユーザーの好みが分化していることが垣間見える一方で、調査における全回答者の総プレイ時間と総支出には偏りが見られたという。プレイ時間においては、上位20%のプレイヤーが総プレイ時間の約60%を占め、ゲームへの支出に関しても、上位20%の高支出プレイヤーが総支出の70%以上を支えていると報告されている。つまり、ゲームのプレイ時間や、費やす金額に関して、トップ層とそれ以外との間に偏りが生じており、均等に分布しているわけではないということが垣間見えるかたちだ(関連記事)。さらに月ごとの「ゲーム関連の支出」という観点では、若年層のほうが意欲的な一方、50代以降では新作の購入や課金コンテンツ・サブスクリプションなどに消極的な傾向が現れたという。

報告書では、こうした傾向から「平均的なゲーマー」というものはもはや存在しないと指摘。ゲームそのものの多様化と一般化から、ユーザーの好みやプレイスタイルがさまざまに分散していると説明している。また、ゲームの供給自体も拡大の一途をたどっており、ユーザーは“無限に思えるカタログ”の中から新しいゲームを探すよりも、慣れ親しんだシリーズやお気に入りのタイトルによく似たゲームをプレイする傾向にあるとも分析されている(関連記事)。

「次の1年の見通しとして、どのような新作ゲームをプレイしていると思うか」という問いに関する回答

上のグラフは、全体の3分の2のプレイヤーが今遊んでいるゲームをそのまま遊ぶか、あるいはお気に入りの作品に近いゲームや、シリーズの続編を引き続き選ぶ傾向を示している。一方で、今遊んでいるゲームとは異なる新作を求めるプレイヤーはおよそ5人に1人だ。つまり、多くのユーザーは自分の嗜好にこだわりを持ち、その中からプレイするタイトルを選び取っていると言える。


ニッチに的を絞ったタイトルこそヒットするかも?

今回のレポートでは、上述したような“ゲーマー像の多様化”により、従来のような幅広い層にアプローチする戦略では失敗するリスクが生じると指摘している。同報告書では2023年以降にリリースされた100タイトルに関する公開データを分析。その結果として、レポートにおいてターゲットとするプレイヤー層が明確だと分類されたゲームでは、83%が商業的に成功を収めたのに対し、そうでないゲームでは50%にとどまったという。具体例として『Baldur’s Gate 3』と『Concord』が挙げられ、ほぼ同時期に進められた同程度の規模の“賭け”として両作が比較されている。

『Baldur’s Gate 3』と言えば、名作TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の世界観をベースとした「Baldur’s Gate」シリーズの3作目で、2023年に発売し大ヒットを記録したRPGゲームだ。同年の主要なゲーム・オブ・ザ・イヤーを総なめにし、約2000万本をその年で売り上げたとも報じられている。『Baldur’s Gate 3』自体は、難解なゲーム内の専門用語や重厚な設定で形作られた世界観を持ち、それらの要素は決して万人向けと言えるものではない。それでも同シリーズを待ち望んでいた層や、コアなRPGファンの期待に見事答え、新規層を巻き込みつつ成功した例といえる(関連記事)。

『Baldur’s Gate 3』

一方『Concord』は、ヒーローシューター系のFPSゲームとして既に飽和気味の市場に投入された上、基本プレイ無料ではなく買い切り型のタイトルであった。2024年8月の発売から僅か約2週間でサービスが一時停止され販売も終了。そのままサービスは再開されることなく、同年10月には正式に終了が決定された。同作の失敗については各所でさまざまに分析がなされてはいるが、本報告書では、ターゲットとするユーザー層を明確にしなかったことの例として触れられている。

報告書では、こうした傾向から今後はより的を絞ったゲーム開発が重要になると指摘。その上で、開発側がアピールしたいユーザー層に関与するための方法として、プラットフォーム事業者だけに依存しない広報・販売戦略を提案している。レポートではこの一例として特にモバイルゲームの販売戦略を挙げており、ゲーマーの約半数は少なくとも年に1回、ゲームの公式ストアから直接課金コンテンツを購入するほか、うち27%は繰り返し利用しているという。基本的な買い切り型ゲームとは異なる販売形態ではあるが、重要なのは、開発側がユーザー側と強固な関係を構築・維持できる仕組み作りだという。市場全体でゲームの供給が過剰気味となるなか、特定のプレイヤー層に狙いを定め、そのユーザーとの関係性を築くことが、今後の業界において重要になるという考えだろう。

今回の「Gaming Report」ではこのほか、AI利用に関するユーザーの反応や、ゲーム開発における利便性についても論じられている。ゲームにおけるAIの利用に対しては、「1年前と比べて意識的な変化はあったか」という問いが設けられ、全体として42%のユーザーが抵抗感は減ったと回答し、44%が変わらないと答えている。一方で抵抗感が増したと回答したのは14%となった。この受容の傾向は特に13歳から17歳のプレイヤーで顕著にみられ、同グループでは60%近いプレイヤーがAIの利用に対してより受け入れやすくなったと回答している。

「過去12カ月間でAI利用に関する受容度はどのように変化したか」という問いに対する回答を表したグラフ。本記事では、受容度が増したとの回答は、抵抗感が減ったと解釈している

なおレポートでは、AIを使ったゲーム開発について、ターゲットとするプレイヤー層が曖昧な場合には、むしろ逆効果になり得ると警鐘を鳴らしている。というのも、AIの利用によって開発が高速化された場合、誰に向けたゲームなのかが明確でなければ、誤った方向性のプロジェクトをより速く拡大してしまう可能性があるためだ。AIによって開発を効率化する場合でも、まずはターゲットとなるプレイヤーの見極めは重要になるのだろう。 今回のBain & Companyの分析レポートでは、5300人を超えるゲーマーを対象とした調査や公開データなどをもとに、さまざまなトピックについて分析が行われた。画一的な“ゲーマー像”をもとにゲームを開発するのは現在ではリスクが高く、さまざまな嗜好やプレイスタイルを持って分化しているユーザーの存在を適切に認識し、その層と長期的な関係を構築していくことが重要になるというのは興味深い説明だ。しかしながら、今回の報告書はあくまでも一企業による分析の結果であるという点は留意されたい。調査対象となった5300人を超えるゲーマーの国・地域ごとの構成比や性別の内訳にくわえ、独自分析の対象とした「100タイトル」の選定基準など、詳細に関しては公開されていない部分が多い。今回の報告書は、業界動向を掴むための参考資料の一つとして捉えるのがよいだろう。

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Kei Kano
Kei Kano

キャラクリが出来て没入感のあるゲームが好きです。ゆっくり歩いて世界観を味わったり、自分なりに脳内設定を組み上げたりして遊んでます。

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