ITサポート地獄ゲーム『I.T. Never Ends』に「本職エンジニアさながらのバグ報告」が来て開発者たまげる。原因不明バグの特定から修正コードまで、プレイヤーがITに詳しすぎる

ITサポート業務とクトゥルフ神話をテーマとするゲーム『I.T. Never Ends』に、本職のエンジニアさながらのバグ報告が寄せられたという。

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個人ゲーム開発者のStefan(Dadbod Games)氏は8月14日、ホラーコメディアドベンチャーゲーム『I.T. Never Ends』をPC(Steam)向けにリリースした。そんな本作のリリース間もなく、ユーザーから送られてきたバグ報告が本職のITエンジニアさながらの本格的なものだったことに、Stefan氏がRedditならびに同バグの修正を行ったパッチノートにて感謝と喜びの声をあげている。

『I.T. Never Ends』は、ITサポート業務とクトゥルフ神話の2つの題材を掛け合わせたホラーコメディアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは2015年創業と思しき企業のシステム管理者となり、正気を疑うような問い合わせの数々に対処していく。

問い合わせは“チケット”として提出され、それに対してプレイヤーは「承認」か「拒否」をスワイプ操作で選んでいくかたちとなる。決断することによって「生産性」「士気」「予算」「エントロピー」の4つの評価指標が変動し、そのどれかひとつでもゼロになってしまうと、その時点でプレイヤーは即解雇、もしくは会社全体を巻き込む“破滅”を招くことになる。「エントロピー」のように指標が高くなることで、ストーリー展開に変化が生じる仕掛けも用意されている。

また、問い合わせのなかには、選択ではなく直接的な解決を図るタイプも存在。その種の問い合わせにおいてはミニゲームが発生し、経路を切り替えるパズル、動き続ける仕掛けの合間を狙って仮想キャラクターを進めていくといった通常業務とは異なる思考とテクニックが求められてくるようだ。

問い合わせの内容もバグへの対処、ログインできないユーザーのサポートといった現実的なものもあれば、インクを吐き続けるプリンターやエクトプラズムを巻き散らすキーボードへの対処、Wi-Fiネットワークに潜む名状しがたき生物の解明、そして社内文書に書かれた召喚術式への対応といった非現実的で宇宙的恐怖を誘うものもあり、プレイヤーの正気度を削ってくる。一連の業務を乗り越えた先に待つ結末も100以上が用意されていたりと、全体的にシンプルながらもおぞましい体験が味わえる作りを特色としている。

本作は2025年12月にPCゲーム配信プラットフォームitch.ioにブラウザ向けのデモ版を公開。初期ビルドということでシステムは未完成、ストーリーにも未実装の要素があったが、プレイヤーからは好意的な声が相次ぎ、最終的にitch.ioと後々に公開されたSteam向け体験版は数万人がプレイするほどの盛況を呼んだ。

製品版ではデモ版を通してプレイヤーから寄せられたフィードバックを反映しつつ、ゲームシステムの改善からストーリーの強化、ボイス演出の実装などの改良を実施。エンディングの総数も100以上となって大幅なボリュームアップも図られた。製品版発売後にはデモ版の頃から遊んでいるユーザーからの好意的なレビューが寄せられており、本稿執筆時点で42件のうち97%のユーザーが好評の「好評」ステータスを獲得している。

そんな本作は8月14日の発売以降も、バグの修正や機能の追加を図るアップデートを繰り返し行っている。そんなアップデートのなかで、8月18日に実施されたアップデートは、作者のStefan氏がパッチノート上にバグを報告してくれたユーザーへの感謝と喜びの声を載せてしまうほどのものだったようだ。実際にその報告内容は、本職のITエンジニアさながらのものとなっていた。

問題のバグは一部のWindowsユーザーにおいて、ゲーム起動時にロード画面が無限ループに陥ってしまうというもの。このバグはSteamコミュニティの総合掲示板にスレッドが作成されるかたちで報告された。しかし、報告はそれだけで終わらず、報告したユーザーは無限ループがなぜ発生するかの仕組みを詳細に解説すると同時に、その原因となる部分を修正するためのコードも記述。本職のITエンジニアさながらの修正提案を行ったのである。

このバグはStefan氏も特定ならびに再現もできなかったバグであったようで、ゲーム本編になぞらえて「すべてのチケットがこうだったらいいのに」のコメントと、報告してくれたユーザーの素晴らしい仕事ぶりに対する感謝を添えて返信。その日のうちに件のバグは修正されるかたちになった。同時にパッチノートにおいて報告してくれたユーザーへの感謝を綴ると同時に、該当スレッドへのリンクも記載。さらに「このゲームのターゲットユーザーは上級エンジニアリングチームになってしまったのかも」と喜びと困惑のコメントも綴った。この報告はStefan氏にとって非常に興奮するものだったためか、Redditにも一連の出来事をまとめたスレッドを投稿し、あらためてバグを教えてくれたユーザーへの感謝を伝えている。

なぜ原因の特定と、修正コードの提案も含んだバグ報告がユーザーから伝えられたのかに関しては、Redditのユーザーへの返信で作者がコメントしているところによれば、本作が「React」で設計されているのが大きいようだ。

React」公式WEBサイトトップページより

「React」とは、Webブラウザ上で複雑なUIを容易に生成するためのフリーかつオープンソースのJavaScriptライブラリで、Meta(旧Facebook)が2011年から社内向けに開発していたライブラリを一般公開したものとなる。UI管理のしやすさとWeb技術ゆえの手軽さからゲーム開発の分野でも活用されており、コマンド選択式のRPGにアドベンチャーゲーム、パズルゲームといったジャンルの制作に用いられる例もみられる。また、プログラミング言語がJavaScriptであることから、ゲーム開発以外で同言語に触れた経験のあるユーザーが理解しやすいというメリットも持っている。

今回のバグ報告を行ったユーザーが実際にエンジニアであるのかは不明ながら、原因の特定に修正コードの提案を行ったことからも経験者であるのは確かなようで、結果的に開発者でも気づかなかったバグが速やかに直されるかたちとなった。また、React自体が広く利用されているライブラリであり、関連知識をもつユーザーが多いことも、“詳しすぎる報告者”との巡り合いを後押ししたのかもしれない。

とは言え、作者がまったく気づかなかったバグを報告するだけで終わらず、そのバグが発生する仕組みから原因まで解説し、修正コードの提案まで行ってくれるユーザーは個人でゲームを作っている人間から見ればまさに救世主に等しい存在だ。そのようなユーザーが現れてくれた作者の喜びは想像にかたくなく、パッチノートやRedditで共有のために報告する流れも納得してしまうところである。ITサポート業務の地獄の日々を描くことも題材にしている本作において、光明が差す出来事と言えるかもしれない。

『I.T. Never Ends』はPC(Steam)向けに発売中。8月22日午前2時まではリリース記念セールで10%オフの税込1530円で販売される。また、ゲーム内表示は英語のみ対応となっている。

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シェループ
シェループ

2D&3Dアクションと手ごわいストラテジーが大好物の人。積みゲーが一向に減っていかない呪いに悩まされています。

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