カルト的人気ゲーム『LSD』をファンが勝手にリメイク。個人開発で12年を捧げた愛と執念のファンメイド再現


個人デベロッパーのFigglewatts氏は11月14日、『LSD: Revamped』のバージョン0.2.0を配信開始した。同作は現在itch.ioにて無料で配信中の作品。1998年発売の『LSD』のファンメイド・リメイク作品だ。Figglewatts氏はアップデートの報告とあわせ、2011年より継続してきた同作の開発を振り返るポストを投稿している。


『LSD(エルエスディー)』は、1998年10月22日にアスミック・エース エンタテイメントからPlayStation向けに発売された3Dアドベンチャーゲームだ。同作のゲームプレイはシンプルで、現代で言うところの“ローポリゴン”で表現された3Dフィールド内を自由に歩き回るのみ。なお、プレイヤーが歩き回ることとなる世界には、触れることで別の地点へとワープする「リンク」と呼ばれるポイントが至るところに存在している。ゲームは「明月荘」と呼ばれる4階建てのアパートからはじまり、リンクに触れたプレイヤーはそこからさまざまなフィールドを渡り歩いていく。

登場するフィールドは、辺り一面がヴィヴィットに彩られた「HAPPY TOWN」、草原や砂漠が広がる「自然界」、「京都」など。それぞれがまったく異なる雰囲気・景観をもっており、プレイヤーはまるで夢の中にいるかのような支離滅裂で目まぐるしい体験をすることとなる。また、本作には経過日数の概念が存在し、一定時間の経過かイベントの発生により次の日へと移行する。なかには日によって現れるキャラクターなども存在し、日ごとにゲーム内のテクスチャーが変化していくなど、プレイヤーごとに千差万別な展開を目の当たりにするだろう。発売当時のソフトケースに付属した帯には「どんなにキメても捕まらない 夢を散歩するドリーム・エミュレータ」とアピールされ、「こんなのゲームじゃない」とのキャッチフレーズが記されていた。


『LSD』の特徴であるグラフィックや現実離れした世界観は、プロデューサーである佐藤理氏がデザインしたもの。スタッフの西川公子氏が1988年1月1日から10年間書き留めた夢日記がベースになっているという。本作は摩訶不思議なゲームフィールドや、独特な体験・音楽を持ち味としており、魅せられた一部のユーザーらの間で今なおカルト的な人気を博している。そのため同作のPS用ソフト(CD-ROM)は、オークションサイトなどで数万円の価格で取引され、新品未開封の美品は数十万円というプレミア価格で落札されている。今回バージョンアップが報告された『LSD: Revamp』の開発者Figglewatts氏も、そんな『LSD』に魅せられたユーザーの一人だ。

Figglewatts氏が個人開発で手がける『LSD:Revamped』は、『LSD』のファンメイド・リメイク作品だ。同作では、オリジナル作品の設計の忠実な再現を試みつつ、HD対応のほかさまざまな調整が施されている。現在公開されているバージョンでは、ゲームエンジンとしてUnityが採用されており、FOVや描画深度の変更といった各種オプション設定も加わっている。今回のバージョンアップに伴い、同氏はXアカウントに告知ポストを投稿。これにあわせて、同氏は本作の開発に捧げた12年間を振り返るポストも投稿している。


『LSD: Revamped』のWebサイトのAboutページの記述によれば、同作は2011年10月から開発が開始されたそうだ。同氏は、YouTubeチャンネルazuritereactionにて『LSD』のプレイ動画を視聴したことをきっかけに開発着手を決定したという。その当時、同氏の年齢は14歳であり、Unityでのゲーム開発経験やプログラミング知識はまったくない状態から開発に取りかかったそうだ。それ以来、同氏は個人で『LSD: Revamped』の開発を継続。途中、開発言語をJavaScriptからC#に変更し、コードを書き直すなどの紆余曲折を経て、2014年12月21日にゲームが一部プレイ可能な状態で一般に公開したとのこと。

同ページ内では、初公開から1週間が過ぎた頃、原作プロデューサーである佐藤理氏のFacebookページにて『LSD: Revamped』が紹介されたことも明かされている。当時の同氏は、佐藤氏がリンクを投稿していたことにすぐ気付くことができず、2年後の2016年になってからこのことを発見。当時はその状況が信じられず、大いに興奮したと記されている。その後も同氏は、大学への入学や卒業、複数回の転職など、実生活におけるさまざまなイベントの傍らで開発を続け、今回のバージョンアップに至ったようだ。今回のアップデートは2020年5月からおよそ3年振りであり、Figglewatts氏のポストによれば、本バージョンではゲーム内のインタラクト可能なオブジェクトが、原作に非常に忠実な状態で再現されているとのこと。


なお、原作プロデューサーをつとめた佐藤理氏は、グラフィックや音楽など幅広い分野のクリエイターとして活動中。音楽と映像とを織り交ぜたライブ公演のほか、音楽専門のNFTマーケットプレイス「The NFT Records」にて『LSD』をテーマとする新曲展開などもおこなっている。詳細については、同氏の公式WebサイトおよびXアカウントの情報を参照されたい。