『FIFA 23』などのサッカーゲーム、「偽ワールドカップ中継」に悪用される。ただし一瞬でバレそうな姑息さ
『FIFA 23』などのサッカーゲームを悪用して、ワールドカップの“偽ライブ中継”がおこなわれている。「シンプルでセコい」やり口ながら、再生数が多い配信では20万回以上を記録。騙されたユーザーも多い様子だ。
*公式トレイラー
『FIFA 23』はElectronic Artsが9月30日に発売した人気サッカーゲームシリーズの最新作だ。対応プラットフォームはPC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S。1万9000人以上の選手と700以上のチーム、100のスタジアムと30以上のリーグを収録している。
本作次世代機版およびPC版にはモーションキャプチャー技術HyperMotion2が採用。試合映像からの機械学習を組み合わせ、ゲーム内の選手には自然なサッカーの動きがもたらされているという。またチーム全体がリアルな動きをすることも本作の特徴とされている。
そんな本作を含めたサッカーゲームの悪用が報告されている。現在開催中の「FIFAワールドカップ2022」にあやかって、実際の試合のライブ放送に見せかけた、サッカーゲーム配信がおこなわれているのだ。YouTube上では実際の試合の時間帯に放送された、『FIFA 23』や『eFootball ウイニングイレブン 2021』のプレイ配信が確認できる。同時刻の実際の試合と同じ対戦カードや、サムネイルや配信画面のLIVEの表記など、“誤認を招こうと必死”な作りとなっている。一方で、これがゲーム画面であることは、多くの人が数秒見れば気づくだろう。
いずれも放送内容としてはゲーム内の映像が流されるのみ。選手や客席が大きく表示されると、いくらリアルでもゲーム映像であることは明らかだ。一方で、リアルなグラフィックにより、俯瞰の映像は実際の試合と判別が難しい場面も。視聴者が気づくまで、あるいは視聴前広告表示などの、ごく短い時間での広告収入を狙ってワールドカップの偽ライブは放送されていると思われる。なかなかセコいやり口だ。とはいえ、上記の放送には、配信タイトルにゲームのタイトルも明記されている。姑息ながらも、ゲームプレイ実況としての体裁は保たれているわけだ。
ワールドカップ開催に際しては、主に英語圏で「world cup stream」というキーワードのGoogle検索回数が急上昇。公式、あるいは違法に配信されている試合のライブ放送を検索するユーザーが急増していたと見られる。そうしたユーザーを狙って上記の配信がおこなわれていた可能性が高いわけだ。動画の再生数は多いものでは約27万回を記録。一瞬なりとも騙されたユーザーも多いのだろう。
昨今では、ゲームのグラフィックはますますリアルになりつつある。テクスチャや3Dモデルだけでなく、モーションキャプチャーの技術も向上。細部では見分けがつくものの、見せられ方次第では現実との誤認を招きかねず、悪用される動きもあるわけだ(関連記事)。ただ、今回の「偽ワールドカップ中継」は、いずれもかなり投げやりな偽装に留まっており、ゲームプレイ映像なのはある程度明らか。そして、ワールドカップなどのスポーツ配信においては、公式配信を利用することでそうした悪用者につけこまれる心配はないだろう。せっかくのワールドカップは実際の試合映像で盛り上がりたいところだ。