『Arma 3』開発元が「フェイク戦争映像の見分け方」を公開。同作がフェイクニュースに使われすぎゆえ

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Bohemia Interactiveは11月28日、『Arma 3』を使った“フェイクニュース”に関する注意喚起の声明を公開した。本作のゲーム内映像はたびたび、現実の戦争の映像と偽られてSNS上などで拡散されてきた。今回同スタジオは、そうしたフェイクニュースの見分け方などを公式サイト上で説明している。


『Arma 3』はサンドボックス型のミリタリーFPS/TPSゲームだ。地中海の架空の島を舞台に、シングルプレイまたはマルチプレイで任務を遂行する。ゲーム内にはさまざまな銃器や、軍用車両・航空機が登場。プレイヤー自身で作戦を組み立てて目標を攻略する、本格的なミリタリー要素を楽しめる点が本作の持ち味だ。またミッションエディタも収録されており、プレイヤーが自由に任務を作ることが可能だ。そのほかユーザーによるMod制作も盛んで、Steamワークショップでは多岐にわたるModが公開されている。

開発元のBohemia Interactiveは11月28日、公式サイトにて本作を用いたフェイクニュースに関する注意喚起を発表した。同スタジオは、本作のゲーム内映像が現実の戦争の様子を収めた動画と偽られ、フェイクニュースに用いられていると指摘。場合によっては主要メディアや公的機関でさえ、そうした映像を誤用してしまうと述べている。

同スタジオは、『Arma 3』向けには2万個以上のユーザー制作Modが公開されており、戦場の様子を時代を問わず詳細に再現可能であるとしている。本作に向けたModとしては、実在の兵器のほか、マップを導入するものなど、さまざまな種類が公開されている。そうしたModを組み合わせて、実在国家間の戦争をゲーム内でシミュレートし撮影することもできるわけだ。同スタジオは、Modによる拡張性や自由度は本作の根幹をなす特徴ながら、フェイクニュースの素材としての有効性をも高めてしまう要素であるとの旨を述べた。


実際、『Arma 3』の動画が現実の戦争の映像とされ、フェイクニュースとして拡散されることは度々あった。2018年9月には、ロシアの国営メディアが本作の動画を現実の映像と誤認し、報道に利用(BBC)。その後も本作のゲーム内映像は現実の動画と誤認され、あるいは故意に偽られて、SNS上などで拡散されたり報道されたりすることがしばしばあった。

そして今年2月には、ロシアのウクライナ侵攻における映像として、Facebookにて本作の動画が拡散。当該投稿は現在削除されているものの、Bloombergによると動画は11万回以上再生され、シェアは2万5000件を超えていたという。Kotakuによれば同じ映像はTwitterでも拡散され、多数のいいね・RTを集めていたとのこと。同誌では当時の動画を確認可能で、航空機に対し対空砲火がおこなわれる映像となっている。動画は夜間の映像であり解像度が低いため、たしかに現実の映像と誤認してしまう可能性はありそうだ。

ロシアのウクライナ侵攻に関しては今年10月にも、本作のゲーム動画が現実の映像との誤認を招くような形で拡散された(Reuters)。こちらも現在削除されたものの、Twitterにて「ウクライナは最先端の対戦車ミサイルでロシアの走行車両に大打撃を与えている」との文面と共に投稿されていたという。しかし動画の内容は、無関係の別ユーザーが投稿した『Arma 3』のYouTube動画から切り抜かれたものであった。元動画のYouTubeでのタイトルには「Arma 3 Game (Military Simultaion)(原文ママ)」と明記されており、ゲームの動画であることが分かりやすい。その一部が別のユーザーによって切り抜かれ、現実の映像と誤解を招くような文面と共に拡散されていたわけだ。

*当該Twitter投稿にて切り抜かれることになった元の動画


以上のように『Arma 3』は、幾度も現実の映像と誤解を招くような形で拡散されてきたわけだ。上のようにゲーム内映像と明記して投稿されたユーザー制作動画が、加工されて悪用される例も見られる。Bohemia InteractiveのPRマネージャーを務めるPavel Křižka氏によれば、こうしたフェイク目的の動画は削除を試みてもいたちごっこになってしまうという。そこで同氏は、主要メディアやファクトチェック機関への積極的な協力を、今後の対策として掲げている。

またKřižka氏は今回の投稿において、ゲームを元にしたフェイク動画の見分け方を解説している。同氏はフェイク動画におけるいくつかの共通点を指摘。フェイク動画ではゲームの映像であることを誤魔化すために、解像度が非常に低かったり、周囲が暗いシーンで録画されていたりという特徴が見受けられるそうだ。またフェイク動画では映像内に人が登場しない、ほとんど無音であるなどの特徴もあるそうで、これもゲームと現実との区別がつきやすい要素を誤魔化すためだという。


さらにフェイクの戦争動画では、映像内の兵器や武装にも目を向けてほしいとのこと。たとえば先述の今年2月に拡散された動画では、米国の防空システムC-RAMが同じく米国の航空機A-10 に向けて対空砲火をおこなっている。同動画はロシアのウクライナ侵攻の映像を謳って拡散されていたものの、登場する兵器の種類と振る舞いから、現実離れした映像となっていたわけだ。

今回の投稿においてBohemia Interactiveは最後に、本作のプレイヤーやコンテンツクリエイターに対し、責任をもってゲーム映像を使用するよう呼びかけている。動画タイトルには「clickbait(気になってクリックしてしまうような誇大タイトル)」を使用するのを控え、ゲームの映像である点を明確に説明してほしいとのことだ。

昨今ではゲームの動画が、現実で撮影された動画と誤認されて、あるいは偽って拡散される例は時おり見られる。近年ではゲームのグラフィックが格段に向上しており、現実の映像と見誤ってしまうユーザーも一定数いるのだろう。一方でKřižka氏が述べるように、ゲーム内映像では人の動きなどに不自然な部分も生じる。フェイク動画である可能性を念頭におき、違和感に気を配って視聴することは、Web上に流れるフェイク動画への対策として一定の効果があるだろう。

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