Electronic Arts(以下、EA)公式Twitterアカウントによる発言が先日、多くのユーザーの批判を招いた。同アカウントが「1人プレイ向けゲーム好き」をバカにするような内容を投稿し、問題視されていたのだ。ユーザーたちがツッコミを投じるなか、EA社内でも同ツイートは問題視され、波紋を広げていたようだ。海外メディアFor The Winが伝えている。
EAはアメリカのゲーム企業だ。多数の傘下スタジオを擁し、パブリッシングを手がける人気作も多数。『Apex Legends』や『Battlefield』シリーズのほか、「EA Sports」ブランドでもお馴染み。そうした人気作品を抱えるかたわら、近年では『Anthem』や『Battlefield 2042』など、マルチプレイ作品のユーザー評価およびプレイ人口低迷も取り沙汰されている。
EAの公式Twitterアカウントは7月1日、多くのユーザーの批判の的となるツイートを投稿した。ネットミームになぞらえて、「1人プレイ向けゲームを好む」というゲーマーの嗜好を冷やかす投稿をしたのだ。同ツイートには、一般ユーザーや著名人からの批判やツッコミが瞬く間に殺到。上述のEAが展開するマルチプレイ作品の状況なども絡めて、皮肉のコメントも投じられた。さらにはEA傘下であるRespawn Entertainment幹部開発者からも、問題発言に対する落胆のツイートが寄せられた。EA側も後に弁解めいたツイートを投稿したものの、火に油を注ぐ結果となった(関連記事)。
海外メディアFor The Winは7月6日、EA社内スタッフ2名の証言として、問題ツイート直後のEA社内の状況や、その背景について伝えている。まず、上述のツイートは同社内でも物議を醸したという。EAのスタッフたちは、主にコミュニケーションツールSlackを通じて問題について話し合っていたとのこと。当初は問題発言のネガティブな反応が共有されるなどしていたようだ。
そして状況が悪化していくにつれて、とある“行き当たりばったりな計画”が立てられたとのこと。それは「EA傘下のスタジオ群に、問題のツイートやEAに批判的な返信をさせる」という手法だったそうだ。EAを悪者にすることで、傘下スタジオやシングルプレイヤー作品の宣伝に転換し、マーケティング的成功に転じさせる意図だろう。
しかし、この作戦は「EAの印象がさらに悪くなる」という懸念や、ソーシャルメディアマネージャーたちの反発などもあり、連携が取れず失敗したという。最終的には「素直に失敗を認めて謝罪する」との案が多くの支持を集めたとされている。ただ、問題勃発後にEA公式Twitterアカウントから弁解めいたツイートはなされているものの、謝罪とは解釈し難い内容だった。そしてEA内部では、問題のツイートを「侮辱である」と感じた傘下スタジオ重役陣などを対象に、ミーティングも実施されていたという。親会社による「1人プレイ向けゲーム否定」とも取れる発言は、そうした作品を手がける傘下スタジオにとっても見過ごせるものではないだろう。
そして、気になるのは「そもそもなぜ、不適切なツイートが投稿されたのか?」という点だ。スタッフとされる人物はこの点について「アカウントの運営体制のためである」と答えたという。この証言によれば、EA公式Twitterアカウントを運営しているのは、「EA社内のソーシャルブランドあるいはコミュニケーションチームではない」とのこと。
さらに証言者によれば、EA公式Twitterアカウントを運営する人々は「知る限り、ほとんどゲーム業界の人間ではない」とのこと。つまり、ゲーマー文化やコミュニティへの知見に乏しい担当者が、問題ツイートを投稿してしまった可能性が高いそうだ。こうした証言が事実であれば、不適切なチームにSNS運用を任せたEA側の責任もあるだろう。ユーザーや著名人など外部からだけでなく、傘下スタジオの面々にさえ問題視された今回のEA公式ツイート。同社のSNS運用は今後変化していくだろうか。