松野泰己氏がかつて原案を手がけたSRPG『Unsung Story』再始動。Steam早期アクセスタイトルとして7年越しのリリースなるか【UPDATE】

 

ゲームスタジオ Little Orbitは12月15日、『Unsung Story』をSteamにて近日中に早期アクセス配信すると発表した。現在の開発状況としては、チャプター1が完成間近。主要システムは実装されており、ストーリーやジョブといったコンテンツを増やしていく段階だという。早期アクセス期間は1年半ほどを予定しているとのこと。


『Unsung Story』は、シミュレーションRPGだ。『ファイナルファンタジータクティクス』『Vagrant Story』の精神的後継作と称し、さらにイノベーションを加えているという。舞台となるのは、歌と呪文による魔法が存在するファンタジー世界。人々は平和に暮らしていたが、77年戦争なる大規模な闘争が勃発。結果的に“悪”が勝利してしまったという。主人公は最終決戦から始め、時間を巻き戻しながら世界を救っていくのだという。

ゲームとしては、77年戦争の物語を追っていく流れになるようだ。クォータービューにて進軍や戦闘が展開され、歌を使った魔法で厳しい局面を切り開いていき、各ステージの目標を達成することでクリア。正式リリース時には6のチャプターが用意され、それぞれのキャラの視点から77年戦争が描かれる。ステージ数は45以上になる予定だという。


本作は、リスペクト元である『ファイナルファンタジータクティクス』『Vagrant Story』開発者の松野泰己氏を迎い入れ開発されていたゲームだ。同作においては、2014年にKickstarterにて開発資金を募るクラウドファンディングキャンペーンが実施された。1万5824人から66万ドル(約6800万円)を集め成功を収めていた。しかしながら、実装予定コンテンツを増やしすぎた開発チームは方向性を見失い、制作はシングルプレイモードではなくPvPへと集中。コンセプト変更を出資者などから批判され、またも方向転換を模索。開発主要メンバーの離脱などを経て、開発は無期延期。パブリッシャーであるPlaydeckは、開発規模縮小を宣言したのち、2017年にとうとうIPを売却。制作は混迷を極めていた。

『Unsung Story』IPを買収したLittle Orbitは、『ABP』や『Descent』など野心作の開発を支援してきた会社で、本作の再開発にも意欲を燃やしていた。そしてIP譲渡劇から2年半を経て、ついにリリースに向けて動き始めたのだ。


松野泰己氏が本作にどのように携わっているのかというと、Kickstarter開始当初からあくまで原案という立場だと宣言している。ゲーム原案と、世界観およびシナリオを提供したという。原案や提案のみの立場ということで、同氏が提供したものが最終的にどのようなものになるかはわからないとコメント。開発に携わるというより、アイデア提供であり、現場とは距離のあることを当時から主張していたわけだ。


『Unsung Story』Steamストアページでは、「マスターデザイナーの松野泰己氏が創り出した魔法世界を探索」との文言が確認できる。77年戦争というテーマも作品発表時から変更されておらず、原案者としての松野氏のアイデアはいくらか残されているのかもしれない。また本作の楽曲の一部は、ベイシスケイプの崎元仁氏が提供しているという。なおキャラクター/アートワークデザイナーとしては吉田明彦氏が参加すると発表されていたが、その話は立ち消えになったように見える。

2021年1月をもって発表から7年が経過する『Unsung Story』。Steam早期アクセス開始時期は近日とされている。長年の時を経て、出資した1万5824人の期待に、応えられるのだろうか。

【UPDATE 2020/12/16 17:30】
松野泰己氏は、吉田明彦氏と共に『Unsung Story』の開発から離脱していたことを明らかにした。開発における方向性の違いなどもあったようだ。顛末やLittle Orbitとのやりとりについて、自身のTwitterアカウントにて明らかにしている。