『スマブラSP』セフィロス参戦と「マリオ死す?」の衝撃シーンが話題に。大スターを貫いた悲劇、インターネットに絶望を与える


『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の衝撃映像が、早くもインターネットを席巻しているようだ。任天堂は12月11日、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』における83体目の新ファイターを発表した。The Game Awards 2020にて大々的に発表されたプレイアブルキャラクターは、『ファイナルファンタジーVII』(以下、FF7)からの刺客セフィロス。幾度となくクラウドと刃を交えてきた片翼の天使が、まさかの参戦とあいなった。トレイラーでは太刀「正宗」のリーチを活かした斬撃や、新ステージとなるであろう「セーファ・セフィロス」の姿も垣間見えた。セフィロス自身の戦いぶりも非常に気になるところではあるが、誰もが衝撃を受けたのが、映像後半の“あるシーンだ”。

戦場にて、虚を突かれたマリオにセフィロスの凶刃が迫る。次の瞬間大写しになるのは、何と正宗で串刺しにされたマリオが宙に浮かぶシルエットだ。マリオ、散る——かと思いきや、次のカットでマリオが目をパチクリ。あわや肩を貫いたかと思われた刃は、よく見るとオーバーオールの肩紐に引っ掛かっていた。すんでのところで我らが主役は命拾いしたのである。その直後、割って入ったクラウドに吹っ飛ばされマリオは戦場からフェードアウトする。種明かしで無事がわかったとはいえ、あたかもマリオが刺し貫かれたかのように思わせる演出はインパクト絶大だ。
 

 
ただでさえ強烈なこのシーンだが、10年以上の『FF7』ファンであればさらに唸らされる演出だろう。実は正宗で宙ぶらりんになるマリオの姿は、2005年に公開された映像作品「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」(以下、FF7AC)のオマージュ。作中ではセフィロスと戦闘していたクラウドが、同じく正宗に刺されて悶え苦しむ場面が存在する(しかも彼はガッツリ刺された)。同作を観た人であれば、まさに絶望を覚えざるを得ないトラウマシーンともいえるだろう。このほかにもクラウドの衣装など、「FF7AC」を意識した演出は今回の特別映像に多数存在。BGMもあえて原曲ではなく「FF7AC」版の「再臨: 片翼の天使」を用いるなど、コアなファンのツボを突く豪華な参戦ムービーとなったわけだ。
 

*マリオ危うし、のシーンは2分01秒ごろ。

 
とはいえこうした文脈を知らない人、あるいは知っているからこそ、「串刺しにされるマリオ」のシーンは人々に絶大なインパクトを与えた。その結果The Game Awards 2020の明けたインターネットでは、ノミネート作品の批評や感想に混じって“例のシーン”イジりが散発。さまざまな形で、「マリオ死す」のシーンが面白がられているのだ。代表的なものは該当シーンの切り抜きだけ貼り、「マリオは死んだ」と吹聴する釣りジョーク。事情を知らない人が見ればヒヤリとさせられる、ある意味では悪趣味な冗談ともいえるかもしれない。
 

 
その一方で、「刺されマリオ」は徐々に別の文脈でも用いられるようになっている。刺されたマリオを「今にも死にそうな人」、セフィロスを「致命傷を負わせた犯人」に見立てて、さまざまなシチュエーションに当てはめる遊びが流行し始めているのだ。

例をひとつ挙げると、The Game Awards 2020を絡めたタイムリーなコラージュが投稿された。こちらの画像では「それぞれのカテゴリで賞を得られそうだったゲーム」が、「TLOU2」に刺殺されている。本パロディは、今年のThe Game Awards 2020にて『The Last of Us Part II』がゲーム・オブ・ザ・イヤーをはじめ7部門と、最多受賞に輝いた件を茶化している(関連記事)。同作があまりに話題をさらったせいで、他のゲームが致命的に追いやられてしまった、と冗談めかしているわけだ。また別の例では「歯に挟まったほうれん草」を「俺」が殺害しているというものも。単に強烈な怒りを示すフォーマットとしても用いられているようだ。
 

 

 
また別のパターンとしては「刺されたと思ったが助かった」までの経緯を含んだ作例も。下記は、「俺」が「俺のゲームを全部消そうとしてるカーチャン」に刺されている絶望的な状況だ。しかし次のコマで投稿者はふと気が付く。命綱となった肩紐のキャプションには「カーチャンはデスクトップのアイコンを消しただけだった」とのひとこと。ゲーム慣れしない母親に苛まれる若者の絶体絶命と間一髪を、マリオ・セフィロスを用いてユーモラスに表現している。いずれの例でも共通しているのは、「酷い目に遭う人/遭わせる人」という構図を、「刺殺シーン」という誇張した状況に当てはめることで笑いを誘っている点だ。該当場面のインパクトが鮮烈すぎたゆえ、防御反応としてネタに落とし込んでいる面もあるのかもしれない。
 

 
これほどまでに「マリオ落命」が面白がられるのは、元のシーンのインパクトもさることながら、発表されたタイミングも大いに関係しているだろう。何せ2020年といえば、『スーパーマリオ』シリーズの35周年の記念イヤーだ。『スーパーマリオ 3Dコレクション』や『スーパーマリオブラザーズ 35』リリースなど、我らがヒーローのアニバーサリーを全面的に祝してきた任天堂。果たして1年の締めくくりには何が用意されているのか……と期待が高まっていた時期での、今回の仕打ちであった。年間を通して活躍してきたマリオが、この期に及んであんまりな目に遭うという悲壮感もまた、ユーザーの心を打ったようだ。
 

 
なお「マリオブラザーズ」の“訃報”が騒がれるのは今回が初めてのことではない(関連記事)。「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL Direct 2018.8.8」では『悪魔城ドラキュラ』シリーズよりシモン・リヒターの参戦が告知された。その際の 特別トレイラーでは、ドラキュラ城に迷いこんだルイージが死神の鎌に斬られ、魂となって抜け出てしまう演出があったのだ。コミカルな描かれ方とはいえ、こちらのシーンも衝撃度は十分。愛すべき弟君の死(?)を世界中が悲しみ、気の早い追悼文が連投される事態となった。そういえばよく考えると、マリオはリドリーの参戦ムービーでも刺されていた気がしないでもない。爆砕もされた。

ともあれ、節目の年の最後に思わぬ災難を受けることとなったマリオ。クラウドの助太刀もあって窮地を逃れたものの、裏を返せばマリオ自身のセフィロスとの決着はつけられていない。配管工が片翼の天使にリベンジを果たすことはできるのだろうか。その回答は年内にも出されるだろう。セフィロスは2020年中に配信予定。また12月18日午前7時には特別番組「セフィロスのつかいかた」も放送予定だ。