『原神』のウェンティ、ガチャから去るのが惜しまれすぎて『ペルソナ4』の“番長ダンス”をさせられる。奇妙すぎるカルチャーの融合

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miHoYoは10月20日、『原神』にてイベント祈願「フレアの止まり」を開始した。いわゆるガチャラインナップの交換となる今回のイベントでは、星5キャラとして炎キャラのクレーが実装。クレーと共に行秋にノエル、スクロースの出現確率が期間限定で上昇している。新キャラの登場はすなわち、これまでのピックアップキャラが去ることを意味する。そう、ウェンティが去ってしまったのだ。ウェンティが去ることに悲しむユーザーやウェンティ獲得に泣かされた人々が奇妙な映像を作成している。それはウェンティに“番長ダンス”を踊らせる動画だ。


ウェンティは、リリース開始当初から実施されていた祈願「杯に注がれた詩」にて排出された星5キャラ。序盤にて風魔龍を手懐けていたり、怪しげな雰囲気をまとわせプレイヤーに竪琴盗みを要請したりするなど、つかみどころのない詩人としてストーリーにも絡んでくる。弓を武器としているが、ウェンティの真髄は風の力を使ったサポートだ。高天の歌を使った敵の拘束だけでなく、風神の詩を用いた暴風発生で、戦場を派手に荒らし散らせる。派手で爽快なバトルを楽しめるのだ。さらに元素スキルにていつでも風を起こすことができるので、フィールドの高所探索にも非常に役に立つ。戦闘においても探索においても、唯一無二の役割を持てるウェンティは、リリースから重宝されており、キャラランクにおいても常にTop Tier入り。トップキャラとして脚光を浴びてきた。

しかしそれほど存在価値が高ければ、辛酸をなめるユーザーも多いということ。というのも、本作における星5キャラの排出率は0.6%に留まるからだ。90連で星5キャラクター排出が確定し、180連でピックアップ対象キャラ排出が確定するといった措置は存在するものの、ほかのゲームと比較してもかなり低めの数字設定となっている。さらにピックアップガチャの「杯に注がれた詩」はキャラと武器が混ざる“闇鍋”仕様でもある。PC/モバイル版では、創世結晶1980個が3680円で売られている。創世結晶を1600個消費し10連をまわすには、ざっくりといって2900円ほどが必要。つまり、天井である180連目までウェンティが出なかった場合、概算で5万2000円ほどかかる。

とてもではないがそこまでコストをかけられず、少しずつ結晶を溜めながら、獲得するチャンスを伺っていたユーザーが多数いるわけだ。しかしウェンティは限定キャラである。排出チャンスは期間限定。そうなれば、人々の焦りと嘆き声がSNSに響き渡る。そうした怨念が、番長ダンスといういびつな形で表現されたのだ。

このダンスの発端は、Discourse氏が投稿した動画である。サングラスをしたウェンティが、軽妙な音楽にノりながら、爽やかにダンスをキメている。しかし放たれるメッセージは、なかなかに皮肉がこもっている。まずは、『原神』が多大な利益を得ていると報じる海外メディアの記事の切り抜きを放出。次には、「杯に注がれた詩」のアイコンを見せつつ、自身のスキルを自画自賛。0.6%という排出率の低さを掲げながら、武器ばかり出るという“悲しきガチャあるある”を披露。そのほか、miHoYoにいいようにお金を使わされ弄ばれていると言わんばかりに、皮肉を撒き散らすダンスをウェンティがキメる。ウェンティの踊りを介して、『原神』のガチャを中心としたシステムのほろ苦さを示唆する動画なのだ。

実はこのダンス、元ネタが存在する。もともとは『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト』にて主人公の鳴上悠(あくまでアニメでの名前)が踊り狂うというネットミームである。とびっきりの青春を過ごしてきた、爽やかの伝道師である鳴上悠が、『ペルソナ4』の清涼サウンド「specialist」アレンジソングにあわせてダンス。と、ここまではただの好青年の踊りであるが、ここに“悪口”をかけあわせるというのがこのミームの真髄。サングラスをつけた鳴上悠が爽やかにダンスをし、その字幕にて口汚い言葉が表示される。爽やかダンスで字幕の粗暴さが中和されるプロセスを楽しむという、謎のネットミームが浸透していた(関連記事)。ウェンティのダンスもまた、考案された当初は暴言の字幕をかけあわせるものだった。
【UPDATE 2020/10/21 22:20】
鳴上悠の名前が、あくまでアニメでの名前であることを追記


『原神』においてはbilibiliにて14体のキャラの3Dモデルが無料配布されている(3D人)。MMDファイルとなっており、二次配布や商業利用は不可なものの改造はOK。踊らせるのにも最適。そしてそのモデルには、ウェンティも当然含まれている。今回のウェンティの踊り狂いミームは、『原神』のガチャシステムへの人々の怨念、公式に配布されたMMD素材、そして『ペルソナ4』のネットミームが、奇妙にも巧みに融合されたものなのだ。

このウェンティダンスは、YouTubeやTwitterなどで徐々に増加しており、ガチャラインナップの更新に際しても改めて注目を集めている。ウェンティはもう行ってしまった。どれだけお金を費やそうとも、もうしばらくは手に入らない。そんな風に考えることで生まれるファンの怨念を成仏させるには、うってつけの動画だろう。

ウェンティは去ったものの、今はクレーが期間限定で登場している。キュートなキャラPVと共に登場した少女は、早速その爆弾を用いた能力が脚光を浴びている。単なるガチャラインナップ更新においても、ひとつの物語や文化が生まれる。『原神』のユーザーの濃さと、コミュニティの分厚さが如実に出た事例だと言えそうだ。なおウェンティに限らず、モデルが配布されたキャラは、何かと踊らされまくっている。SNSなどでお気に入りキャラを検索して、踊り狂う姿を見てみてもいいだろう。

『原神』は、PC/PS4/iOS/Android向けに基本プレイ無料ゲームとして配信中である。

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