PS4『P.T.』がアップデートにより、突如プレイできなくなったとの怪しげな噂が出回る。ゲームの人気を利用したデマか

コナミデジタルエンタテインメント(以下、コナミ)よりPlayStation 4向けに無料配信されたのち、2015年4月に配信停止された『P.T.』。2015年4月までに本作をダウンロード済みの方であれば問題なくプレイできるわけだが、最近になって本作をプレイできなくなったという噂が流れ始めた。発端となったのは、10月27日にsubredditのr/silenthillにて投じられたRedditユーザーの投稿だ。「購入済みで、ダウンロードもしているのに『P.T.』が遊べなくなった。同じような人いる?」という文言と共に投稿された画像には、ロックされたアイコン、アップデート日10月22日とバージョン1.01の情報、そしてineligible(資格なし)というアプリケーションのステータス表記が並ぶ。いかにも“遊べなくなった”状態であることを指し示す情報が、表示されている。

Image Credit : PopulusTrichocarpa

「『P.T.』がプレイすら不可能になった」とこの画像はたちまちSNSなどで拡散され、10月31日になりIGNPolygonといった海外メディアなども取り上げ始めた。Gamerevolutionにように「コナミがインストール済みの『P.T.』を殺そうとする」という過激なタイトルの記事さえも並ぶ。『P.T.』は、小島秀夫監督率いる小島プロダクションが当時開発を進めていたシリーズ新作『Silent Hills』のインタラクティブ・ティザーとして無料公開されていた。しかしながら『Silent Hills』の開発中止に伴い、2015年4月にPlayStationストアから削除された。ストアから削除されたことから、すでに幻のゲームとなりつつあり、だからこそ今回の「プレイ不可」という噂は、プレイヤーの「いよいよか」という気持ちをくすぐったのかもしれない。Redditの当該スレッドではコナミを批判する声が寄せられ、ResetEraでは「『P.T.』はデジタルな未来がユートピアではないことを警告したのだろう」というスレッドを見せるなど、さまざまな場所で反響を呼ぶ。「『P.T.』が配信停止された」ことを前提とする議論が盛り上がり始めたが、その前提は事実とするには極めて怪しかった。

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ポイントとして抑えておきたいのは、この画像を投稿したRedditユーザーPopulusTrichocarpa氏以外、『P.T.』が起動できないと報告する声が存在しない点。Redditユーザーや数々のメディアは同作の起動に成功しており、バージョンは1.00のままであると報告している。PopulusTrichocarpa氏の画像はインターネットのさまざまな場所を転々としているが、同じような現象を確認したと語るユーザーはいない。Twitchでも『P.T.』を配信するユーザーは依然として多く存在する。

さらに踏み込めば、PopulusTrichocarpa氏はもともとRedditでは、過去に3度しか投稿をしていない。謎の文字列などを書き込んでおり、Base64でエンコードすれば『P.T.』のセリフの一部や『メタルギアソリッド』の画像、そしてとある土地の住所などが示されるという、不気味な言動を見せている。重要なのは、氏のアカウントはアクティブではないこと、そして、これまでの投稿がいわゆる“釣りアカウント”に近い履歴であることだ。

前述したように、すでに多くのユーザーが『P.T.』の起動確認(バージョン1.00)を行っている。その後Redditでは「コナミは、『P.T.』のプレイの制限はしていない。」とスレッドが立ち、本格的な真偽の検証が始まった。10月22日にアップデートされたにもかかわらず、“カルト的な人気”を誇ったゲームの起動不可を1週間近く誰も気付いていなかったことを怪しむ声が寄せられる。ロックされたアイコンは、そもそも「メーカーがゲームを起動不可にした」ことを示すものではないと指摘。アプリケーションスターティングineligible(資格なし)というステータスも、ユーザー権限の問題だろう。リージョンの違いや、再ダウンロードによる不具合の可能性もあるが、あくまで報告をしたRedditユーザーのみに出た限定的な事象ではないだろうか。

この話が出た際には、「コナミが起動不可措置を施し、その後反発を受けて起動できるようにした」という説が出回ったが、そもそも最初からコナミは起動不可になどしておらず、たったひとりの画像に振り回されていたことが濃厚。前出のRedditにて徹底した検証をおこなったMidnightapalooza氏は、「(コナミが嫌いだからといって)感情的な反応から導かれた結論に飛びつかず、冷静になろう」と呼びかけている。小島監督退社騒動以来、コナミについて複雑な感情を持つユーザーは少なくないが、負の感情を引き起こす“怪しげなストーリー”に流されるなという警告は、決して的外れではないだろう。

『P.T.』に関しては、今年7月にQimsar氏として知られる17歳の少年がUnreal Engine 4でファンメイド作品を作り上げたことが話題となった(関連記事)。その後コナミが公開停止を要請した一方で、将来有望な少年にインターンシップのオファーを出していた。コナミ社内でQimsar氏の作品が高く評価されたことが、オファーのきっかけのひとつだったという。『P.T.』は依然として配信停止されたままで、行方がどうなるかは不明であるが、コナミは自社IPのひとつであるとは認識しているようだ。『P.T.』が、多くのユーザーに愛されている作品であるからこそ、こうしたひとつの画像でも大きな注目が集まるのだろう。配信停止されてから3年以上が経過しても、いまだ『P.T.』の人気が衰えていないことを再認識できる事件かもしれない。

【UPDATE 2018/11/2 19:10】
弊誌がコナミデジタルエンタテインメントに問い合わせたところ、企業広報担当者より「『P.T.』バージョン1.01へのアップデートに関しまして、事実確認の結果、弊社側もPlayStation™Network(PSN)側も本作のアクセスに影響を及ぼすようなアップデートを実施していない事実を確認しております。」との回答をいただいた。アップデートが配信され起動不可になるという噂は、やはり誤っていたようだ。

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